新婦人しんぶん2008522日号(第2746号)家族・家庭のページ(2面)

派遣で3年、直接雇用されたのに、

3年後に突然“雇い止め”なんて!!

立教女学院嘱託職員事件で裁判に訴えた清野(せいの)三恵子さん

 


<写真=略>「どうしても裁判で勝ちたい。いつ雇い止めされるかわからない不安や正規労働者との格差に悩む多くの非正規の人たちの思いを背負っていると思っているから」と清野さん

 

 

 “次の契約更新はありません”と、突然の雇い止め――。企業だけでなく、学校法人にまで、正規職員が派遣や有期契約にされる動きが広がっています。派遣法に基づく直接雇用のあり方が問われる典型的なケースとして注目を集めている“学校法人立教女学院嘱託職員事件”原告の清野三恵子さんに、裁判に踏み切った思いを聞きました。

 

 

突然、解雇と言われて…

 

 私が雇い止めを言われたのは、2007213日。「来年の契約について」と事務局長から呼び出されました。契約更新は毎年繰り返してきたことでしたので、メモとえんぴつ一本だけを持って軽い気持ちで面談へ向かうと、「来年の契約はありません」と言われ、心臓が震える思いでした。

 ようやく聞き出した理由は「あなたのポジションには専任職員を入れることにした」というものです。

 

“格差”に悩まない日はなかった

 

 短大を卒業して、商社に正社員として9年半勤めた後、結婚を機に退職。一年半のブランクをへて、初めて派遣社員として働いたのが立教女学院でした。

 016月から、短期大学の総務課での仕事が始まりました。総務課では、事務全般から備品の管理、経理・予算に関する業務、補助金に関する業務、公開講座に関する業務、窓口業務、電話対応など幅広い業務をこなしてきました。ほかの課へ異動した正規職員の仕事を引き継ぎ、仕事内容も正規と同じでした。仕事は年々忙しくなり、人事異動のたびに、新しく異動してきた正規職員に総務課の業務を教えるなどの役割もつけ加わりました。

 059月からは、私が総務課在籍でもっとも長い職員になり、職員や教員から質問や相談を受けることが多くなりました。

 勤務日数も日時も、仕事内容も正規と変わらないのに、賃金は正規職員の65%。格差に悩まなかった日は一日もありませんでしたが、それでも契約を更新してきたのは、みんなから頼りにされるのがうれしかったからです。

 さらに月ごとの収入がなければ住宅ローンや税金を支払えないという現実もあります。ささいなことでも仕事上でほめられるとうれしく、仕事は私にとって社会とのつながりでした。

 賃金は安くても働きつづけることを選択し、人事課長から“末永くよろしくお願いします”と言われ、学長からも“これからもがんばってほしい”と言われていただけに、まさか雇い止めされるなどとは想像すらしていなかったのです。

 

どうしても許せなかった理由

 

 数日後、課長から「どんなに優秀でも、どんなに必要でも、嘱託職員は辞めていただくことになった」と言われ、そのときにやっと、「私だけじゃなくて、ほかの嘱託職員も使い捨てられるんだ」とわかりました。実際に、その後、嘱託職員4人の雇い止めも決定しました。

 4人のほとんどが、派遣から嘱託職員になり、長く働いてきた人たちです。20代後半、30代からの78年は、社会生活や家庭生活の基礎を築く大切な時期で、仕事の継続は生活設計そのものです。そうした各自の事情を学校側は十分に知っていながら、雇い止めすることは本当に許せないと、インターネットで労働相談を受けたり、一人で入れる労働組合を探し、東京公務公共一般労組に出合ったのです。

 

雇い止めの理由が二転、三転

 

 労働組合に加入したことで、「清野さん、いつからたたかう人になってしまったの?」と驚く人もいました。私自身、組合に出合ってからも1カ月、加入するかどうかを考えました。個人的に学校側と話し合うことで何とか解決できないかと考えたのです。しかし、それは無理だとわかり組合に加入。労働組合として23回団体交渉をしましたが、学校側は1回目から弁護士をつけ、雇い止めの理由を「人手が足りており、あなたがする仕事は見当たらない」と変え、「1年の有期契約だから、契約自由」を繰り返すばかりでした。労働組合がない職場で、組合敵視が強いなか、司法の場で判断をしてもらわなければ解決はみられないと、裁判に踏み切りました。誰かが声をあげなければ、こんなに悲しくくやしい思いをしている非正規労働者の存在を社会的に知ってもらうことができないと思ったのです。

 

不安定雇用の人たちの思いを…

 

 裁判は422日に、お互いの主張をして、次回62日に、私が初めての陳述を行います。

 被告である学校側は、嘱託職員には補助的な仕事しかさせていなかったと主張していますが、私は、正規とか非正規とかの違いではなく、私の仕事が本当に一時的、臨時的なものだったのか、しっかり見てほしいと思っています。

 今、派遣のあり方で問題になっているのは、一時的、臨時的な仕事ではなく、ずーっとつづく仕事に、多くの労働者が、いかに安く、細かい期限で未権利なまま雇われているか、ということだと思います。

 派遣や有期労働者の細切れ雇用を当然視する経営者に対し、司法の場から是正を求める判例を勝ちとり、非正規の雇用の不安定さに少しでも歯止めをかけられたら、そして派遣法抜本改正の世論を後押しできたらと思っています。

 

支援先

 

東京公務公共一般労組

電話 0353955255

FAX 0353955139

 

621330分〜東京地裁6619号法廷にて原告が初めて陳述。傍聴にご協力を


 

〈学校法人立教女学院嘱託職員事件〉

 清野さんは、学校法人立教女学院に01年から派遣職員として約3年、その後派遣法の『直接雇用申込義務』に基づき「嘱託職員」(非正規)になり、1年契約を3回繰り返した後、昨年5月に突然の雇い止めになった。

 4月に改正パート法が施行され、派遣法の抜本改正を求める声が高まるなか、法改正を見越して、非正規を正規化する動きが強まる一方、非正規労働者を雇い止めにする動きも広がっていた。

 立教女学院の事件は、改正労働者派遣法に基づく直接雇用のあり方が問われる典型的なケースとして、社会的な注目を集めている。

 

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