当組合が、民主・共産・社民・自由各党の衆参議員56人でつくる「パートタイム労働者等の均等処遇を実現する議員連盟」(会長=大脇雅子参院議員)主催のヒアリング(2002年6月5日水曜日16時から衆議院第2議員会館第3会議室で)において行った訴えの文書は以下の通りです。

 なお、参考のため付録として、関連する若干の新聞記事などのリストを追加します。

 

<訴えの文書>

 

「細切れパート」の大学非常勤講師に誇りを持って教えられる待遇を

 

 私たち「首都圏大学非常勤講師組合」は、結成7年目を迎える専業非常勤講師の組合です。組合員の圧倒的多数は、私大で教える非常勤講師です。本日は国立大学の非常勤講師について話すようにという要請ですが、まずはじめに、国公私立を問わず存在する「大学非常勤講師問題」について説明させていただきたいと思います。

 

専業非常勤講師とは

 

 非常勤講師は、兼任(兼務)教員、兼任講師などと呼ばれることもあるのですが、1年(または半年)契約で、授業のみを何コマか担当するパートの大学教員のことです。1コマは週1回行われる90分授業です。

 非常勤講師には、(1)大学の専任教員が本務校以外で非常勤講師をする場合、(2)弁護士や医者、マスコミ関係者などが大学で非常勤講師をする場合、(3)専任教員が定年退職後、非常勤講師をする場合、(4)大学院修了者で他に本務がなく、主として非常勤講師の仕事だけで生活している場合、があります。私たちは(4)を専業非常勤講師と呼び、その劣悪な待遇を改善するために活動を行っています。

 文部科学省によれば(2002年度4月2日、参院文教委員会、工藤智規高等教育局長の答弁、質問者林紀子議員)、平成10年現在で、国公私立大学を通じた非常勤講師の総数は13万3千8百69人。全教員に対する割合は、47.8%を占め、「もっぱら非常勤講師のみを仕事とする」専業非常勤講師の人数は国公私立で、4万5千67人にのぼり(複数大学掛け持ち勤務が多いので、実数は2万人前後と思われる。)、規模の大きい私立大学では授業の「24%あるいは34%」を非常勤講師が担当しています。実際、首都圏の私立大学では、非常勤講師の数は専任教員の数を大きく上回り、講義の50%以上を非常勤講師が担当している大学も少なくありません。そして、その約半数が本務校を持たない専業非常勤講師なのです。また、1975年から1995年までの20年間に、専任教員が29%しか増えていないのに、非常勤講師は95%増え、約2倍になったのです。

 このように、非常勤講師は大学教育の中で大きな比重を占め、その役割はますます大きくなっています。またその中で、専業非常勤講師という存在が層として形成されているのです。

 

専業非常勤講師の極端に劣悪な待遇

 

 非常勤講師の待遇は、信じがたいほど劣悪です。それは、歴史的に「兼任教員」として発生してきた経緯から、報酬が「超過勤務手当て」レベルで考えられ、それで生活するレベルで考えられていないからです。

 例えば賃金は、組合ができてから一部で改善されつつありますが(明治、法政など)、多くの私立大学では、1コマあたり月2万5千円、年30万円(文部科学省によれば時給4000千円・・・1コマ月2万円相当?)前後で、専任並みに5コマ働いても年150万円程度にしかなりません。専任教員の年収は900万円から1200万円ですから、賃金は控えめに見ても7分の1に過ぎません。さらに、退職金や雇用保険、社会保険を考慮すれば十数倍、研究費、図書費、学会出張費、研究室の使用、電話代なども計算に入れれば、私たち非常勤講師の雇用コストは専任教員の20分の1に過ぎないことになります。「公序良俗に反する」差別待遇といわざるを得ません。研究室を持たず、数校を掛け持ちして移動しなければならない専業非常勤講師は、学生の質問にゆっくり対応することが困難ですから、学生もまた被害者といえるでしょう。

 そのうえ、非常勤講師は1年単位、半年単位の有期雇用である為身分が極端に不安定です。最近では、第2外国語の廃止や縮小のため、多数の非常勤講師が解雇(雇い止め)され、仕事を失っています。また、定員割れの大学が急増する中で、短期大学の廃止や夜間部の廃止の場合にも、まず非常勤講師が犠牲となっています。

 

「細切れパート」の専業非常勤講師

 

 さらに付け加えなければならないのは、大学の専業非常勤講師には、他のパート労働者に保障されている共済組合加入などの権利すらない点です。

 大学の非常勤講師は、中学・高校での非常勤講師と違って、1校でたくさんのコマを担当することはありません。多くの大学が非常勤の担当を一人4コマ以下としています。専業非常勤講師は、1校につき1〜4コマ担当で、数校を掛け持ちするという、いわば「細切れパート」の働き方をしているのです。このため、パート労働法が改正されて、正規職員の2分の1以上働くパート労働者に様々な権利が保証されたとしても、異なる雇用主に「細切れ」に雇用されている専業非常勤講師は全く埒外に置かれたままということになります。いくら専任教員は授業以外の仕事が忙しいと言っても、専任教員の2倍の週12コマ働いても、3倍の18コマ働いても一般のパート労働者に保証された権利すら与えられないという現状をこのまま放置することは許されません。この点は個別大学が解決できることではありませんから、国として、何らかの措置を講ずることを期待したいとおもいます。

 

国公立大学の場合

 

 現状では、国立大学で教える専業非常勤講師は、「パート労働法」、「国家公務員法75条(公務員の身分保障規定)」、「労働関係調整法」の適用外で、このため非常勤講師組合は交渉に入ることができず、給与も雇い止めも一方的に決められています。例えば、2002年3月、横浜国立大学で非常勤講師が雇い止めになりましたが、当局はこの問題での組合との交渉を拒んでいます。

 また国公立大学では、一般に非常勤講師の給与が月給制ではなく「出来高払い」のため収入がつきによって変動し、年収が低く抑えられています。

 

都立短期大学の場合

 

 現在、都立四大学(都立大学・都立科学技術大学・都立保健科学大学・都立短期大学)の統合が行われようとしています。この四大学合計の教員数は、専任教員864人、非常勤668人ですが、都立保健科学大学と都立短期大学では専任教員より非常勤講師の方が多く、都立短大では専任教員68人に対して非常勤講師126人で、約3分の2が非常勤です。またその中の過半数が、専業非常勤講師だと思われます。

 四大学統合に伴う都立短期大学の廃止に伴い、この126人の非常勤講師は一方的な雇い止め通告により解雇されます。専任教員は4年制大学に吸収されることでこの成り行きを是とされているようですが、非常勤講師は、20年以上教えてきた方も含めて、一文の退職金もないまま放り出され様としているのです。

 都立短期大学で教えている組合員の中から、「多様な年齢層が混じる中で、他の大学と比べて自ら学ぼうとする姿勢が感じられ、最も教えやすく教えがいが有る」と言う声があがり、現在組合として存続を求める陳情を行っています。

 多様な年齢層が多様な理由から学ぶ場として選択できる、自己負担の少ない教育の受け皿として、首都圏で唯一の夜間部を持つ公立の短期大学の存在意義を強調したいと思います。私達は今後も、短大の存続と雇用の継続を求めながら、継続されない非常勤講師には相応の退職金を要求していきます。

 

 国政の場で次の3点を検討し、大学非常勤講師の待遇を改善してください。

 

1)大学の非常勤講師のように、職種上、やむを得ずいくつもの勤め先で少しずつ働いている「細切れパート」にも、年金などの社会保障、雇用保険、退職金が享受できる仕組みを検討していただきたい。

 なお、年金および健康保険については、現行法においても、複数大学に出講する専業非常勤講師の救済が可能であると考えられます。すなわち、厚生年金法第二十四条第二項に複数事業所勤務者の給与合算により標準報酬を算出することが、同施行令第四条に各事業主への保険料負担の案分が規定され、健康保険法第三条九項に複数事業所勤務者の給与合算により標準報酬を算出することが規定されています。これら規定の遵守が行われるよう検討していただきたい。

 

2)「パート労働法」を、均等待遇と就労転換(パートとフルタイム間の相互転換)を保障するものに改正し、国家公務員、地方公務員を含むすべての労働者に適応していただきたい。

 

3)ILO「パートタイム労働条約(175号条約)」を早期に批准し、ユネスコ勧告「高等教育の教育職員の地位に関する勧告」を早期に受託していただきたい。

 

   (以上/2002年6月5日/首都圏大学非常勤講師組合)

 

 

<付録:関連する若干の新聞記事などのリスト>

 

朝日20020323(Web版)

 ワークシェアに指針 導入に向け、政労使が合意へ 多様型と緊急型

読売20020205(Web版)

 正社員・パート格差是正目指す中間報告 厚労省研究会

厚生労働省ホームページ

 (http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/01/s0108-2.html)

 第12回パートタイム労働研究会議事概要

 議題:パート労働の課題と対応の方向性について

厚生労働省ホームページ

 (http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/02/h0205-2.html)

 パート労働の課題と対応の方向性

  −パートタイム労働研究会の中間とりまとめ報告−

赤旗20020221(Web版)

 派遣労働者に平等待遇 EU委指令案 賃金、年金、保険など

読売20020221(Web版)

 国立大学の法人化 教職員は「非公務員」

 兼職制限なし 外国人登用も 文科省委合意へ

朝日20020221(Web版)

 国立大教職員は「非公務員」 文科省が最終報告素案

朝日20020403(Web版)

 パートの待遇改善求め超党派の議員連盟設立

赤旗20020404(Web版)

 パート議連が設立総会 均等処遇求め衆参議員50人

読売20020405(Web版)

 カナダ人講師の雇用保険未加入で労組が関大を告発

朝日20020405(Web版)

 雇用保険に教授ら666人加入させず

 関西大学を刑事告発 大阪教育合同労組

読売20020424(Web版)

 配偶者控除の見直し提言へ 共同参画会議中間報告案

以上

 

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