首都圏大学非常勤講師組合「2004年度 春闘統一要求」

委員長   志田 昇(電話・FAX 03-5395-5255)

 

 

首都圏大学非常勤講師組合

2004年度 春闘統一要求

 

 

 

補助金50%アップを確実に非常勤講師給へ!

 

 2003年度は、大学非常勤講師にとって画期的な年となった。2004年度予算において、私立大学助成金のなかの非常勤講師補助単価(標準給与費)が50%アップした。人件費据え置きが大原則のなかで、非常勤講師給与費への補助金が13億7100万円増額されたのである。これは、全国の大学非常勤講師組合が2年間にわたって交渉を重ねる中で実現した画期的な成果である。2002年厚生労働省は、格差がある場合には、正社員の処遇を見直してでもパートの処遇を改善すべきとする『パート労働問題研究会最終報告』を出した。組合はその段階で、「大学は公的助成を受けているだけに、年内にも作成される厚生労働省の「パート処遇指針」にもとづき早急に改善することが求められます。」と要求してきた。今回の補助単価アップは、文部科学省が厚生労働省のこの新しい「指針」を踏まえて、「大学教員の均等待遇」の必要性を認めたものである。

 全国の私立大学は、補助単価50%アップを確実に非常勤講師給に反映させ、処遇改善に結びつけなければならない。首都圏大学非常勤講師組合は、すでに2003年度、多くの大学と予算アップを前提に交渉を行ってきた。2,3の例外を除いて、いずれも「概算要求が通って予算がつけば、大幅賃上げを検討する。」という回答であった。ある大学の学長は、交渉の席上で「概算要求が通ればいいと思う。その場合には、大学が補助金を流用してはいけない。」と発言している。今年度、すべての大学がこの約束を守って、非常勤講師給の大幅アップに誠意ある態度をとることを要求したい。

 

法人化に伴う雇い止め、賃下げは認めない

 

 現在、国立大学の独立法人に伴い、「ゼロ査定」のうわさに基づく非常勤講師の雇い止めや賃金の引き下げが、全国で多発している。3月15日に文部科学省人事課が出した通知は、「非常勤講師給はゼロ査定だから、当然賃金ダウン」のうわさにはまったく根拠がないことを明らかにした。われわれは、法人化に伴う雇い止めも大幅賃金引下げも認めることはできない。さらに、専任教職員の給与が人事院勧告によって1%引き下げられるからといって、非常勤講師給を同じく1%引き下げることも認めない。「パート処遇指針」の主旨は、正規職員の給与が下がる場合でもパートの給与を上げることによって「均衡」を実現することであり、同率に引き下げたのでは、いつまでたっても均衡は実現されない。

 

外注化でなく、非常勤講師の直接雇用による責任ある大学教育を

 

 現在、大学は大きな危機を迎えている。少子化の影響で多くの私立大学が経営危機に直面し、国立、公立大学は独立法人化に伴う混乱の中にある。その中で、大学と非常勤講師をめぐる情勢は新たな局面を迎えている。最近の傾向は次の3点にまとめられる。@専任教員の担当コマ数を増やす労働強化、A語学・情報分野に多い、教育の外注化=委託業者への丸投げ、Bセメスター制による非常勤講師の雇用の一層の不安定化である。この傾向は、専任教員の研究時間を奪うことによって大学の質の低下をもたらすとともに、外注化することによって教育に対する責任を放棄するものである。また、これまで研究者育成の場としても機能してきた非常勤職の存在を脅かしている。われわれは、教育の充実と研究者育成のために、専任教員の研究を保障し、大学が、非常勤講師を処遇を改善したうえで直接雇用し活用することを強く要求する。

 

非常勤講師に均等処遇の実現を・・・雇用コストは専任教員の20分の1

 

 文部科学省によれば、平成10年の国公私立大学の非常勤講師の総数は13万3869人、全教員に対する割合は47.8%を占め、「もっぱら非常勤講師のみを仕事とする」専業非常勤講師の人数は国公私で4万5067人(複数大学掛け持ち勤務の場合が多いので、実数は2万人前後と推定される)にのぼり、規模の大きな私立大学では授業の「24%あるいは34%」を非常勤講師が担当している。実際、首都圏の私立大学では、非常勤講師の数が専任教員の数を大きく上回り、講義の50%以上を非常勤講師が担当している大学さえ少なくない。そしてその約半数が本務校を持たない専業非常勤講師である。しかし、このように大学の教育研究の中で大きな役割を果たしている非常勤講師の待遇は、信じがたいほどに劣悪である。

 賃金は、組合結成後、一部の大学ではやや改善されつつあるが、多くの私立大学では1コマあたり月2万5000円、年30万円前後(文科省によれば時給4000円・・・1コマ2万円相当?)であり、専任教員並みに5コマ働いても年150万円にしかならない。専任教員の年収は900万円から1200万円であるから、賃金は控えめに見ても7分の1に過ぎない。退職金や雇用保険・社会保険を考慮すれば10数分の1、研究費、図書費、学会出張費、研究室、電話代などを計算に入れれば、われわれの雇用コストは20分の1に過ぎない。このような差別待遇は同一労働同一賃金の原則に反するだけでなく、「公序良俗に反する」(丸子警報機事件長野地裁判決)行為といわざるを得ない。2003年厚生労働省が出した、格差がある場合には正社員の待遇を見直してもパートの待遇を改善するという主旨の「パート処遇指針」に基づき、早急に改善するよう要求する。

 

大学教育の質の向上のためにも非常勤講師の待遇改善を

 

 大学教員は教育と研究を職務内容としており、非常勤講師も専任同様、一定の研究能力と業績が求められている。また、非常勤講師の中には研究の実績が高い社会的評価を得ている者も少なくない。にもかかわらず、非常勤講師には研究費も学会参加費用も支給されないし、大学紀要へ研究成果を発表する権利さえない。また、非常勤講師は1年単位の有期雇用であるため身分が極端に不安定である。最近では第2外国語の廃止や縮小で多数の非常勤講師が仕事を失っている。また、短期大学の廃止や夜間部の廃止の際、真っ先に犠牲となり解雇されているのは非常勤講師である。さらに、研究室がないため授業の準備をしたり学生の質問や相談に応じたりする空間も保障されていない。数校掛け持ちの多くの非常勤講師は、授業の後直ちに次の大学へ向かわなければならない。学生から見ればまったく同じ先生であるにもかかわらず、失業の不安を抱え、質問に応じる空間も時間も持たない非常勤講師が半数を占めているのが日本の大学教育なのである。こうした現状は、大学教育の質を低下させ、学生を失望させ、オーバー・ドクターなど若手の研究能力を高める機会を奪い、大学の社会的責任を放棄することにもつながっている。いまや、大学の教育研究の改善のためには非常勤講師の待遇改善の問題は避けて通れないのではないだろうか。

 首都圏大学非常勤講師組合は2004年度の統一要求として、以下の点を掲げる。

 

1)社会的位置づけの明確化と実態調査

 

・ 「大学教育」が語られるとき、非常勤講師の存在はほとんど無視されてきた。大学教育における私たちの果たしている役割と、抱えている問題を明確にするために各大学(国立・公立・私立全般)および文部科学省に大学非常勤講師実態調査を求め、待遇改善を行うよう要求する。調査の内容は以下のとおり。

 

@ 非常勤講師(本務校のある者とない者を区別して)への依存(人数、コマ数)の実態

A 労働条件(賃金など)の実態

B 研究・教育条件(研究室、研究費、コピー費、図書館利用など)の実態

C 専業非常勤講師の生活実態

 

2) 雇用の安定化のために

 

・ 独立行政法人の大学は、法人化の移行に伴い、非常勤講師の雇い止めや賃下げをしないこと。

・ 正当な理由のない契約更新拒否や、科目名の変更による一方的なコマ数減を行わないこと。

学生からクレームがあったり、学生アンケートによる授業評価が低かったりしても、専任の場合と同等に扱い、一方的に解雇の理由としないこと。

専任教員より低い年齢制限を非常勤講師に設けないこと。

・ 契約後、学生の履修者数が少ないなどの理由で授業を行わない場合も賃金は全額支払うこと。

・ 次年度の更新の連絡は、10月ごろ行うこと。

・ 非常勤講師の講義コマ数を減らす場合、本務校のあるものから減らすこと。

・ 産前産後の休暇や育児休暇を保障すること。

・ 留学、入院、出産、育児休暇後の雇用を保証すること。

・ 各大学における、専任教員枠の拡大。

・ 専任教員採用の際には、その大学で勤務している非常勤講師に優先的に応募機会を与え、審査においてその大学での非常勤歴を評価すること。

・ 専任教員採用における女性差別や外国人差別を是正するために積極的措置をとること。

・ 本人の意思を尊重して旧姓の使用を認めること。

・ 大学教員全体の不安定雇用を拡大する「任期制」の導入には反対する。また、嘱託講師などの任期付き教員は専任教員にするよう求める。

・ 外国人教員に対する任期制という名の差別的雇用制度を廃止し、任期のない専任教員にすること。

 

3) 労働条件の改善

 

・ 賃金体系を明確化し、各号俸の支給額を公表すること。

私学助成金の非常勤講師給補助単価1.5倍化に連動し、賃金を直ちに1.5倍化すること。数年以内に、現在の2倍化(1コマ5万円前後)をはかり、生活を維持できる賃金を支払うこと。なお、当面の最低賃金の要求は、月3万円とする。

・ 将来は厚生労働省の「パート処遇指針」に基づき、専任教員の8割以上の賃金を時間に応じて支払うこと。

・ 授業準備の経費を含む研究費の支給。

・ 夏季・冬季の一時金支給(法政、駒沢、桜美林、東経大などで実施)。

・ 退職金の支給(立正、杉野などで実施)。とくに、大学の一方的な都合で雇い止めになえる場合は、規定の有無にかかわらず必ず支給すること。

・ 交通費の全額支給(大半の大学で実施)。

・ 労災保険制度(労働者の負担はゼロ)が非常勤講師にも適用されることを、非常勤講師全員に周知徹底すること(法政、明治、東洋などで実施)。

・ 健康診断など福利厚生制度への参加を認め、全員に通知すること(明治、立正などで実施)。

・ 身分証明書の発行(早稲田、青山、東海大、明治などで実施)。

・ 私学共済に参加できるよう制度を改善すること。

・ これらを実現するために私学助成の増額に努力すること。

・ 私学助成の非常勤講師給の算定基準を改め、非常勤講師に対する費目を充実させ、大幅に増額すること。

社会保険(厚生年金、健康保険)制度の運用を改善し、みなし労働時間の導入や、複数校に勤務する非常勤講師の勤務時間数の合算を認めることによって加入資格を与えること。

雇用保険制度の運用を改善し、みなし労働時間の導入や複数校に勤務する非常勤講師の勤務時間の合算を認めることによって加入資格を与えること。

 

4) 研究・教育条件の拡充

 

・ 大学設置基準に基づき、1クラスの人数を適切な規模に制限すること。また、受講者数が標準より多い場合には、特別手当を支給すること。

・ コピー・印刷機の使用の拡充・簡便化、教材作成を含む研究費としてのコピー使用を認めること。

・ 大学紀要への執筆権を認めること(学習院、都留文科大などで実施)。

・ 専任教員と同様の条件で図書館の利用を認めること(拓大、東京女子大、和洋女子大、明治などで実施)。

・ 非常勤講師控室の設置、あるいは拡充整備。

・ メールボックスや個人用ロッカーを設置すること

・ カリキュラムや教育内容について発言の機会を与えること。

・ 返信を必要とする書類(成績表、シラバス等)の通信費・郵送費は大学が負担すること。

 

5) 専任教員の研究保障とアルバイト制限によるワークシェアリングを

 

専任教員の研究保障のために担当コマ数の制限を維持すること。同時に、専任教員による本務校以外でのアルバイト的な非常勤を制限すること。

 

6) 専任教員と同様に非常勤講師についても、奨学金(日本育英会等)の返済を免除すること。

 

(以上)

 

inserted by FC2 system