控室

首都圏大学非常 勤講師組合

東京公務公共一般労働組合 大学非 常勤講師組合

TEL 035-395-5255

2004年3月7日発行『控室』第50号

委員長 志田 昇

FAX 042-627-4420

郵便振替口座

0140-90157425

大学非常勤講師分会

 

−−本号の主な内 容−−

 

◆千葉大 学で非常勤講師の給与25%カット問題で団交−前年並みと回答/陳情直後に撤回− (4面)

◆名古屋 短大雇止め事件高裁判決の意義(6面)

◆TY大 学団交顛末記(10面)

◆大学ル ネサンス(15)「コンビニ式経営法」(12面)

◆新入組 合員の声「控室30年」(14面)

◆<連載 >東京都立4大学統合と非常勤講師の雇用(9)(15面)

◆クリッ プボード(16面)

◆編集後 記(16面)

 

 

2.23 対文部科学省・厚生労働省 陳情報告

 

 

文科省「助成金の非常勤講師補助単価を約1.5倍に大幅アップが確定」

   「千葉大の25%賃金ダウンは文科省の意向ではない」

厚労省「非常勤講師の実態調査については、今のところやる気な し」

 

<参加者>

文科省:高等教育 局大学課、私学部私学行政課・私学助成課、大臣官房人事課から7名

厚労省:雇用均等 ・児童家庭局職業家庭両立課・児童家庭局短時間在宅労働課、年金局年金課、 職業安定局雇用保険課、労働基準局監督課から9名

参加議員:民主党 から金田誠一衆議院議員、川橋幸子参議院議員、共産党から井上美代参議院議 員

組合側:首都圏 17名、京滋1名、阪神1名、UTU2名

 

 

文科 省:来年度助成金の非常勤講師給 補助単価が5100円と1.5倍にアップ

 

 今回の文部科学省への陳情の中心は、前回の陳情での回答のあ った私学助成金の非常勤講師給の算定基準引き上げが、予算として確定したか どうかの確認を第一の目標とした。そして助成金費目の充実、厚生年金加入条 件としての合算の算定方法の特例化、外国人教員の差別的待遇への各対策を聞 きつつ、雇用における専任との均衡処遇のいっそうの推進を要請するという趣 旨で臨んだ。また今回から介護・育児休業法の改正を視野に入れ、任期付き教 員・非常勤講師への同法の適用と周知徹底を要請した。

 さらに緊急の課題として、国立大学行政法人化が目前のこの時 期、来年度の非常勤講師給について文科省から減額の査定がされたとの噂があ り、千葉大で25%もの賃下げが一方的に通告された事例について、文科省の意 向を尋ねた。

 

*      *      *

 

 

(写真:陳情の一 コマ。写真左上:文部科学省側、中央上:同席国会議員、他は陳情側参加者)

 

均衡処遇の意向が文科省によって提示

 

 前々回の交渉以来、文科省と我々4組合との間で共通の認識事項が急速に深まったように思われま す。予算を組む段階で、私学助成金の非常勤講師給の補助単価が突如1.5倍も 増額されたところから、それはうかがえるのではないでしょうか。前回同様、 専任教員の年収570万円に対応する額として、国立大学の算定基準を参考に決 定したとの明確な回答がありました。再三確認をしましたが、これは当組合が 以前から主張してきた均衡処遇が、文科省によってはっきり提示されたという ことです。今後は、各大学との交渉によって単価5100円までの値上げ交渉が期 待できます。この展開は、待遇改善に向けての大きな進歩でした。ただし非常 勤講師の実態把握については、まだ前向きの回答をもらうことなく終わってし まったことが悔やまれます。前回同様、今後もこの方面への質問を引き続き行 う必要があります。

 助成金の費目の充実については、まず労災保険の加入が義務づ けられているのであるから、専任同様非常勤講師にもその費目が必要と主張し ました。また雇用保険については、加入資格のある非常勤講師や任期付き教員 もおり、そもそも専任教員に対してもその費目がないのは問題であり、違法行 為を許容する結果になっているのではないかと問いました。文科省側は、関連 部署と相談しながら検討すると回答しました。前向きに取り組んでいただきた いものです。

 

 

(写真:陳情に参加の国会3議員。左から、金田誠一議員、井上美代議員、川橋幸子議員)

 

法人化後も昨年度の実績を上回る専任教員給と非常勤講師給を積 算で渡す予定?

 

 さらに緊急の課題として、国公立大学の独立行政法人化が目前 のこの時期、あちこちの国立大学で一方的に5〜25%もの非常勤講師給の賃下げが通告されています。まず第 156回参議院・文教科学委員会(2003.6.5)での、神本美恵子委員の質問に対 する河村副大臣の答弁、「…非常勤講師についてはいわゆるパート労働法とい いますか、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律、この適用になって いくわけでございますから、…通常の労働者との均衡等を考慮して適正な労働 条件を確保する」や、第156回参議院・内閣委員会(2003.6.12)での川橋幸子 委員への答弁、「…これは、国立大学法人に今度なりますと、運営交付金が算 定して渡されるわけでございます。この枠の中でやるわけでございますが、法 人化になった途端にどんと下がるというようなことはあり得ないことでありま す。そんなことがあってはならぬわけでございまして…」を読み上げ、副大臣 が述べた方針に変更はないのかを問いました。そして千葉大の非常勤講師給 25%賃下げの一方的通告を紹介し、それが文科省の意向によるものかどうか、 そうでないとしたら文科省から指導はできないのか等を尋ねました。法人化の 担当者は、河村副大臣(当時)の方針に変更はなく、また非常勤講師給賃下げ は文科省の意向ではないし、そもそも来年度の運営費交付金は、前年度の専任 教員給と非常勤講師給を「上回る」人件費を積算として提示している、との回 答でした。また千葉大における賃下げの根拠として、「今まで120分計算だっ た講師給を実労時間の90分に変更する」という考え方は、「今までの勤務実態 を見直すことなく、単に法人化したというだけで90分に変更することはない」 との見解を示しました。

 これは、現在各国立大学で行われている一方的な非常勤講師給 の賃下げに対する、強力な反論の根拠となります。独立行政法人後もこの文科 省の回答を武器に、あまりにも無頓着な非常勤講師への差別是正を図っていか なければなりません。

 

 

厚労省:非常勤講師の実態調査については現在も検討中

 

 厚生労働省との交渉については、いわゆるパート労働法関連の 改正が後ろ向きに終わったこともあり、緊急の要請はなくなった。引き続き、 大学非常勤講師のような「細切れ・掛け持ち」パート労働の実態把握について の方針や、私大の多くが未加入の雇用保険についての、厚労省の対応を尋ね た。また今回は、外国人教員の差別是正について、より具体的な項目を立てて 回答を要請した。

 

*      *       *

 

2年たっても実態調査のめどなし

 

 2002年12月11日の衆議院・厚生労働委員会で岩田政府参考人は、 パート労働者に関わる社会保険諸制度の改正においては、専業非常勤講師を典 型とする「コマ切れ・掛け持ち」型パート労働者の救済が「検討課題である」 と答弁しています。そこで、現在どのような調査が検討されているのか、前回 に引き続き計画の公表を求めました。ところが、厚労省からは相も変わらず 「検討中」の回答だけでした。つまり答弁から丸一年以上たっているにも関わ らず、検討課題への対応が「無策である」と公表したわけです。これには組合 員全員があきれました。さすがに金田誠一議員が「もう少し具体的な対応をす るよう、早急に検討しなさい」との注文をつけるほどでした。文科省とは対照 的な厚労省の無策ぶりは、担当者に初対面のものが多く、交渉の経過を初めか ら説明しなければならないような状況であったことにも関係していたかもしれ ません。

 また私大における雇用保険の加入率が低いことへの対策につい ては、まず平成13年12月に全国の都道府県労働局に通達を出し、雇用保険法の改 正時における昨年5月の付帯決議を受けて、大学にもよく説明したとの回答で した。なお低い加入率のため、今後も促進していくそうです。

 しかしこちらから、実際に解雇の通知を出しているのに雇用保 険に入らない悪質な大学についてはどうするのかを問うと、それは最寄りの職 業安定所で確認請求を申し出て調査してもらい、2年まで遡って加入させることぐらいしか対策はないとのことでし た。

 厚生年金の合算への対応についても、そもそも「細切れ・掛け 持ち」パート労働である非常勤講師の実態を把握していないため、こちらから の提案に対し、「自営業者は厚生年金に入っていないのだから…」と無関係な 比較まで持ち出す始末。志田委員長が改めて、「厚労省としては、非常勤講師 はパート労働者であると認識していると考えていいのですね?」と念を押すは めになりました。

 

外国人教員の差別是正は?

 

 今回の厚労省との交渉は、全体として1時間半以上に及ぶ長丁場になりましたが、後半に応答が集中した のは、外国人教員の差別是正問題でした。まず日本人と異なる労働条件提示 (例えば外国人であるがゆえの有期雇用など)の是正を求めましたが、厚労省 は、「それが明らかに、単に国籍によるだけの差別であるかどうかは慎重に検 討しないとわからないので…」と即答を避けました。

 また外国人であっても国民年金が国民健康保険と同様に強制加 入であり、しかも25年間日本に居住して払い続けない限り支給されない(途中帰国 した場合は、最大でも半額しか戻らない)という現実について、該当者から強 く疑問の声が出ました。滞在の保障について不安定な外国人教員にとって、日 本人と同等の条件は明らかに不利です。少なくとも、永住権を持つ外国人以外 に、国民年金に強制加入させるべきではないという主張もありました。この問 題については、組合側も実情を深く認識しておらず、厚労省も認識不足のため 明確な回答はありませんでした。国民年金に限らず外国人教員の実態について は、こちらでも早急にアンケート調査を実施して、充分な把握の上で具体的数 値を上げて交渉しなければ、明確な回答はもらえないように思われました。    (HM)

 

 

千葉大学で非常勤講師の給与25%カット問題で団交

−−前年並みと回答/陳情直後に撤回−−

 

 

 昨年11月、千葉大学(事務当局)は、法人化に伴い財政面が厳しくな るという理由から非常勤講師の給与を25%カットする方針を決め、学内および 非常勤講師に通知しました。当組合は千葉大学に対し「非常勤講師給25%カッ ト撤回」などを求めて団体交渉を申し入れていましたが、2月23日、大学非常 勤講師4組合が、非常勤講師の処遇改善を求めて文部科学省・厚生労働省に陳 情を行った際も、千葉大学など国立大学の「非常勤講師給カット問題」を取り 上げ、政府の方針に反するのではないか、と訴えました。この陳情の直後、文 科省から連絡を受けた千葉大学(事務局)は、同日付けで「25%カット撤回 (2003年度の給与水準を維持)」の学内通知を作成・配布し、26日の首都圏大 学非常勤講師組合との団交では、すでに非常勤講師の給与25%カットの撤回を 学内通知した、と表明しました。 (編集部)

 

*      *       *

 

 2月26日(木)千葉大学にてはじめての団交が行われた。 非常勤講師組合側16大学 人事課4名、専任教職員組合より1名の参加。組合側は23日の文部科学 省、厚生労働省交渉の話し合いをもとに大学側との交渉を進めた。実りある、 今後にとって大事な交渉となった。

 

非常勤講師給25%引き下げ撤回について

 

 大学側 は、23日付けで、これまでの予定を変更し15年度給与水準 にすでに戻すことにしたが、人事院勧告の1.1%の専任教員給引き下げを非常 勤講師にも適用すると表明。

 これに 対し組合側は、均等処遇の立場から、専任賃金引下げを非常勤講師給に連動さ せるのは適切でないことを指摘。千葉大学10年勤続時給約5100円は専任年収570万相当との文部科学省計算 と、文科省は均等処遇に近づけるため16年度私学の非常勤補助単価を50%アッ プの5100円にしたことを紹介。千葉大学の均等処遇とはいえない現状におい て、1.1%賃下げの連動は文科省方針にも反するので撤回してほしいと要求。 組合員からは千葉大非常勤講師給は私大に比べると安いと意見。大学側は、即 答はできないが要求として承ると約束。

 大学側 は、25%カットを決定したのは昨年度予算案の段階で、非 常勤講師予算が大幅削減見込みだったため非常勤講師給の計算を変えたが、今 年に入り、財政的に厳しいのに変わりないものの、当初見込みではなくなった ため削減案を変更と説明。

 これに 対し、組合側は勤務実態の変更を伴わない時給計算変更を文部科学省は認めな かったことを報告し、非常勤講師給予算カットの見込みはどこから出た情報で あるかを問うた。23日の文部科学省交渉において、文科省は運営費として大枠で予 算配分はしたが賃金に関しては15年度を上回る常勤・非常勤給を計算・支給し ており、それに関しては大学事務当局が承知しており、非常勤講師手当という 費目は法人化後ないがあくまでも賃金のカットはしていない、との返答を得た ことを紹介し、非常勤講師手当の予算カットは具体的にどこからどういう形で 伝わり、それが変更になった経緯と、全体予算に占める非常勤講師削減給の割 合を問うた。これに関しても即答はできないので調べて組合に伝えることを約 束した。

 またこの件に関して、予算の減る見 込みのもとにまず一番弱いもともと低賃金の非常勤講師の給与のみをカットす るというのは、昨年6月12日の民主党川橋議員の質問に対する河村文科省副大臣(現大 臣)の「法人化になった途端にどんと下がるというようなことはあり得ないこ とであり、そんなことがあってはならない」という国会答弁とこれを認めた文 科省方針に反しているというだけでなく、モラルの上からも許されざる行為で あり、大学はこの件を真摯に受け止めるべきであり、賃金カット撤回報告とと もに謝罪文を全非常勤講師に事務局名で送るように要求。これに関しても要求 として承ると返答。

 

16年度法人化によ り、非常勤講師がパート労働法の適用を受ける件についての確認

 

 文部科学省方針に沿った形になることを大学側は認め、 有給、保健加入など適用枠に入る全教職員がその対象となる(育児休暇などに 関しては関係する法を調べた上で)ことを認めた。非常勤講師就業規則につい ては、案ができた段階で組合員も含めた人たちの意見を聞くと約束、3月末ではなく近い将来この件について組合に連絡すると約束し た。

 以上のように、25%給与カットは実質撤回。その他の事項については、この場で の即答はできないとのことであったが、組合要求に大学側は検討すると答え、 連絡を取り、組合側不服の場合交渉継続することを約束した。   (文責、 兎)

 

 

(写真:千葉大学 との団体交渉の後、同大学教職員組合と懇談の一コマ)

 

 団交 後、千葉大の教職員組合の方々と今後の協力などについて懇談しました。組合 事務所でお茶をご馳走になりながらの懇談でしたが、副委員長が「組合らしい 交渉で大変勉強になりました」と発言されたのが印象的でした。 (参加者)

 

 

名古屋短大雇止め事件 高裁判決の意義

渡辺  隆司

 

 

 これまで私立大学非常勤講師の雇止め裁判では、雇用継続をの ぞむ非常勤講師の側がほとんど敗訴している。その理由は「相当長期にわたっ て契約更新を繰り返したとしても、専任教員と比較して授業以外の校務を分担 せず、兼職も広範に認められていること」や採用・選任について大学に裁量が 認められることなどであって、雇止めを「安易に認める判例が圧倒的である」 と指摘されている。(日本私立大学教職員組合連合・同弁護団「大学教職員の ための判例・命令集」2002年)

 

1.民間企業における雇止め事件の裁判例

 

 一般民間企業においては、短期有期雇用の臨時社員(パ -ト・タイマ-など)であっても(1)契約更新がくりかえされ、しかもその契約更新が形式化し、ほ とんどの社員がそのまま長期間雇用継続する実態がある場合(2)契約締結時 など長期雇用の約束をするなど雇用継続が期待されていて、実際に更新が重ね られてきた場合、などでは雇い止めに一定の歯止め(解雇に関する法理を類推 適用することなど)をかけようとする判例もみられる(前者は東芝柳町工場事 件最高裁判決、1974年7月22日であり、後者は日立メディコ事件高裁判決 1980年12月16日である。)

 事実、最高裁がパ-ト・タイマ-の雇い止めにつ いて、期間の定めは一応のものであって、期間満了により、雇用契約を終了す るには「特段の事情」が必要であるとして、高裁判決(雇い止め無効)を支持 している例もある(前掲書)。

 また、「期間雇用の最初の更新拒否のケ-スについて も、期間満了後の継続雇用を合理的に期待させるような雇用であれば、更新拒 否が相当と認められるような特段の事情が必要である」とする判例(龍神タク シ-事件)もある(菅野和夫「労働法」)。

 

2.私立大学非常勤講師雇止め事件の裁判例

 

 前掲書「大学教職員のための判例・命令集」を参考として、こ れまでの判例を紹介する。

 

1)奈良芸術短大事件(奈良地裁、大阪高裁)

 

 染色コ-スの実技演習を担当する非常勤講師の雇止めに ついて、(1)専任教員との職務内容の違い、(2)兼職禁止されていたかど うか、(3)職務に応じた待遇の違い、(4)有期雇用契約の毎年更新、(5) 雇用継続の期待可能性がないこと、を理由として雇止めを有効とした。

 

2)亜細亜大学事件(東京地裁、高裁、最高裁)

 

 裁判所は、ヒンズ-語の非常勤講師が21年にわたる雇用期間にもかかわらず、雇用継続を期待できる事 例ではないとして雇止めを認めた。

 とくに地裁段階では以下のような理由が雇止めを認容する根拠 にあげられている。

 (1)非常勤講師は、大学から全面的拘束を受けないことを前提とし ている、(2)大学との結びつきの程度は専任教員と比べて著しく薄い、(3) 非常勤講師の嘱託については大学の裁量によることを予定している、(4)非 常勤講師の契約が反復更新されたからといって、期間の定めのない契約に転化 したとか、期間の定めのない契約と異ならない状態で存在したとは認められな い。したがって雇止めは有効である。

 

3)名古屋短大事件(名古屋地裁仮処分決定)

 

 この件は、この稿で検討する「名古屋短大雇止め事件」の最初 の裁判所の判断である。20年から25年間にわたり雇用継続されてきたピアノの実技指導を 担当する音楽の非常勤講師(3人)が以下の理由で雇止めされた事例である。 (1)非常勤講師を恒常的に雇用する必要から、長期にわたり有期労働契約を 継続的に更新してきた事実はある、(2)しかし、非常勤講師契約書は厳格な 手続きを経て締結されており、永続的な更新を期待させるような言動をした事 実はない、(3)したがって期間の定めのない契約に転化したものとは認めら れない、(4)非常勤講師の地位は、1年ごとに編成されるカリキュラムによる 当該年度の担当者として臨時に雇用される身分であることは、非常勤講師の側 も認識していた、(5)雇用継続の期待は主観的なのものにとどまる、(6)解 雇に関する法理を類推適用する余地はない、(7)雇止めは余剰人員がでたこ とから行われたものであり、合理的な理由となる、(8)雇止めする際3人を選 択したことには一応の合理的理由がある、(9)雇止めは通常の人事手続きに 基づいており、仮に解雇に関する法理が適用されるにしても、権利濫用にあた るとはいえない。

 

4)名古屋短大事件(名古屋地裁判決)

 

 全体としては、(3)の理由がベースになっている。しかし、非常勤講師の一般的地 位については、大きな問題(実態をみない、ないしは事実にあわない認識)を 含む内容になっている。とくに非常勤講師は、(1)専任教員の系列とは別個 のものであり、「両者の立場に互換性がないことを前提としているとみられる のであって、非常勤講師の地位は、たとえば、大学の助手が、将来、助教授、 教授へと昇任してゆく候補者段階の教育研究者であるのと同様に解することは できない、(2)したがって、その地位は「あくまで専任教員とは異なる、非 常勤の補助的教員たる立場にとどまるというのが相当であり」「常勤の専任教 員としての地位」に転化する余地はない、(3)したがって、解雇権濫用法理 が適用ないし類推適用されることはない、という理由で雇止めを認容する根拠 とした。つまり、専任教員と非常勤講師とを峻別し、相互にまったく別のもの としてとらえている。

 

 以上、これまでの私立大学非常勤講師雇止め事件の判例をふま えて、次に「名古屋短大事件」に対する高裁判決について考える。

 

3.名古屋高裁判判決の意義

 

1)非常勤講師の雇用実態を直視した高裁判決

 

 名古屋地裁の判決は、2の(4)節でみてきたように、非常勤講師の雇用実態からまった くかけ離れた「机上の作文」ともいえる観念論にみちたものであるといえる。 本事件の原告の一人はわが組合の組合員である。組合としては以上のような判 決に対して、非常勤講師の雇用実態を陳述書(志田委員長)の形で高裁での審 理の際に提出した(証人申請がみとめられなかった)。とくに、(1)非常勤 講師の労働者性について、(2)非常勤講師は専任教員に対して補助的存在と はいえないこと、(3)国会での河村大臣答弁やパ-ト労働法の指針に おける均衡処遇の考え方、(4)非常勤講師実態アンケ-ト調査結果な どを中心に論じた。

 

2)高裁判決のポイント

 

 A.「期間の定めのある労働契約でも、いずれかからの格別の意思表 示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと認め られる場合には、当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に 異ならない状態で存在していたものとして、いわゆる雇止めの効力を判断する のに解雇に関する法理を類推すべきものといえる。」

 B.長期雇用の非常勤講師が多く存在するのは、「専任教員で賄うこ とができないためであって、授業内容の点では、非常勤講師と委嘱期間の定め のない専任教員との間に特段の差異がないことからすれば、本件労働契約の雇 止めの効力を判断するのに解雇に関する法理を類推すべき素地が全くないとい うわけではない。」

 C.しかしながら本件短大における非常勤講師の委嘱は「1年毎に学 科会議で実質的に審議され、教務委員会や教授会の議を経て更新するという手 続きが履践されており」短大と非常勤講師の労働契約「が当事者双方の1学年 の間の授業の委嘱という共通認識の下に更新されていたことは明らかで」あ り、「本件労働契約がいずれかから格別の意思表示がなければ当然更新される べきものとして締結されていたものと解することは困難であり」期間の定めの ない契約としても解することはできない。

 D.「労働契約に労働者がある程度の継続を期待することに合理性が 認められる場合には、期間満了によって当然に終了するものとはせず、雇止め には相応の理由を要するものと考えるのが相当である」。

 E.職務内容や兼職などから考えると、「控訴人が雇用関係の継続を 期待することの合理性はあまり高くないといわざるを得ない」。

 F.「しかしながら、本件労働契約は更新が19回も繰り返されて20年 近くも存続してきており」他の非常勤講師の多くも長期間にわたって雇用が存 続されていることからすれば、「本件労働契約について、雇用継続の期待を保 護する必要性を全く否定して、期間満了によって契約が当然に終了するとまで 断ずることは躊躇されるのであって、本件の場合にも、雇止めには相応の理由 を要するものと考えるのが相当である。」

 G.「ただ、このように、本件労働契約における雇用継続の期待を保 護する必要性は、期間の定めのない契約に転化したり、期間の定めのない契約 と実質的に異ならない状態で存在している場合と比べ、薄いものといわざるを 得ないことからすれば、一応の相当性が認められれば足りるものというべきで ある。」

 H.本件非常勤講師の委嘱停止は、「高等教育の実施機関たる大学の 専権事項の範囲に属する」カリキュラム改革によって生じたものであり、その 手続きは適正なものであり、一応の相当性は認められる。

 I.「大学における非常勤講師は、大学側の必要性から採用される雇 用形態であり、大学の教育活動に重要な役割を果たしているものである」とし ても、それをもってただちに上記判断が左右されるものではない。

 

3)判決の意義

 

 非常勤講師と専任教員との差異については、仮処分判決や地裁 判決と同様な判断をしている部分もあるが、非常勤講師の雇用実態にそくして 具体的に検討しようとする立場にたっている。この点では、志田委員長の陳述 書やアンケ-トの重みが裁判所の判断をリアルなものしたことは確かで ある。

 非常勤講師の労働契約論についても、これまでの「雇止め判 決」の限界から一歩踏み出す判決であるといえる。

 また広く非正規型の雇用が拡大する現状において、その法理論 に一石を投じるものとなることは疑いない。

 

(以上の検討は、一応のラフデッサンである。今後さらに議論を 深め、非常勤講師の法的地位についての理論を構築していくつもりである。)

 

 

TY大学団交顛末記

 

 

 新学期 の緊張感からいくらか解放され、連休で一息入れようとしていた4月の終わりにTY大学薬学部のドイツ語非常勤講師の同僚のT氏 から電話があった。話の内容は、学部長が彼に会いたいと言ってきている。内 容についてはまったく予想できないが、終わったら報告するということだっ た。彼は学部長からどのような話があるのか、まったく予想できないと言った が、実はおそらく二人ともその話の内容についてはほぼ確信していた。だから こそ彼も前もって私にわざわざ電話をしてきたのであろう。

 TY大 学薬学部では数年前までドイツ語の専任教授が1人いて、1年生で文法と講読2コマが必修、2年生で中級1コマが選 択必修とされていた。それが、専任教授が定年で辞めた後も専任が補充される ことなく、非常勤だけで運営されてきていた。ところが、4年前に突然、1年生 の第二外国語の必修が1コマにされてしまった。そして次に必修から選択にす るということは十分に予想されることだった。そこで、それに対抗するため に、私たちはとにかく目に見える形での成果を求めて、ドイツ語検定試験で実 績をあげることを目指した。私たちの努力は実を結び、学会でも話題になるほ どの多くの受験者数と、2コマ履修者が平均的な受験者として想定されている 独検4級に、1コマの履修で前者に勝るとも劣らない合格率を上げていた。これ はTY大学の学内報にも写真入で大々的に取り上げられるほどだった。

 はたし てT氏のもたらした報告はやはり危惧したとおり、ドイツ語が選択制になると いうものだった。その後、出講日ごとに説明会がもたれ、大学当局から次のよ うな説明がなされた。

 

1)来年度からこれまでの1時限90分を70分にする。

2)第二外国語はドイツ語T、ドイツ語U、フランス語T、中国語 T、英検対策英語の内からの選択必修2単位とする。

3)これは昨年の秋に教授会で決定され、文部科学省にも受理され ている。

 

 私はど うしていいのかわからなかった。それがいかに不合理な杜撰なものであれ、カ リキュラムの改正という、いわば「錦の御旗」にどれだけ対抗できるだろう か。私は大学当局の説明の中で印象に残ったことを思い起こしていた。第二外 国語を減らして英語の時間をいくらか増やしたくらいで、学生の英語の力が実 際に役立つレベルにさせられると思うかという質問に対して、学部長補佐はこ ともなげに「そうは思わない」と答えた。さらに、このカリキュラムの改正に は少なくとも外国語に関して不合理なところがあるし、理念が見えてこない、 という私の質問に対して、「その不合理は認める。しかし修正はしない。ここ に理念などはない。これは文部科学省の方針であり、薬学部6年制に向けて大学が生き残るためである」と平然と答えたこと。 そして、前任者の怠慢で説明の時期が遅くなって申し訳なかったと繰り返し謝 罪したこと。

 抵抗の 手段とその展望が見えない中で、私はどうしてもこのまま解雇されることはで きないと思い悩んでいたが、この思いは他の6人の同僚も同じだった。連休明けの日曜日に私たちは新宿の談話 室滝沢に集まった。同僚とはいえ、それぞれの出講日も異なり、まったく初対 面の人、あるいはそれに近い人の方が多いという状況だった。その後この喫茶 店には日曜日に何度も集まることになった。いくら電子メールやファックスで 頻繁に連絡を取り合っても、やはり実際の会合は不可欠だった。

 この時 点で組合に加盟していたのはT氏だけだったが、T氏を通じて委員長の志田さ んに助言を求め、会合にも何度か出席していただいた。また、後に団交にも出 席していただいた副委員長の渡辺さんを講師に、非常勤講師の雇用と労働法に ついての勉強会も開いた。

 この最 初の会合で私たちは、このまま黙って解雇されるわけにはいかない、というこ とを確認した。そして、次のような「質問と要求」を大学に提出し、文書での 回答を求めた。

 

1)今回のカリキュラムの改正には不合理な部分があり、修正を要 求する。

2)新カリキュラムを実施する場合でも来年度以降も私たちを優先 的に雇用し、ドイツ語以外の科目で担当しうるものがあれば優先的に振り当て ること。もし、それにもかかわらず雇用が打ち切られる者に対しては相当額の 退職手当を支給すること。

 

 この私 たちの「質問と要求」を受けて6月4日に最初の交渉を行い、それに続いて6月18日に文書による回 答が出された。大学側は、交渉ではカリキュラムの改正には応じなかったもの の、ある程度の柔軟な対応を見せ、退職金についても理事会に諮って回答する ということだった。しかし文書による回答は、ほぼゼロ回答に等しいものだっ た。特に回答書の中の「・・・全員にひとまず、お引取りいただくことが必要 かと思っています」という部分は、全員の怒りを呼び起こした。そこで、この 回答書に対する反論と交渉の継続を求めて「質問と要求(2)」を7月2日に大 学側に提出した。

 ところ が大学は、当初こそ交渉の日程の調整をしていると言いながら、一方的に交渉 を打ち切るという学部長の回答を7月の終わりにメールで私たちに送信してきた。私たちはすでに組 合に加入し、組合を通じて団交を申し込むことを視野に入れて対応を検討して いたが、このような事態に至って、これに異議を唱える者は誰もいなかった。 そして8月初旬のオープン・キャンパスに合わせて大学を糾弾するビラを撒く 手はずを整え、ホームページ作成の準備を始めた。これに対して大学側は、ビ ラ撒きの直前になってやっと9月に交渉の場を設ける旨の回答をしてきた。

 9月の中旬に大学から学長、学部長、同補佐2名、及び顧問弁護士 が出席して団交が開かれた。学部長が「前任者の怠慢」と言っていないと主張 したり、弁護士が感情的になり、妥協しようとした大学側を制止しようとした りと、それなりにスリリングな場面もあったが、志田さんと渡辺さんを中心と した交渉の結果、カリキュラムの改変そのものを阻止する事はできなかったも のの、来年度も私たちの中から優先的に雇用すること、専任がいない中で、必 修のドイツ語の授業を非常勤だけで運営してきた実績を評価し、最高でも10万 円という従来の退職慰労金に上乗せして、大学としての誠意を示すという学長 の言葉を引き出すことができた(後に慰労金として1人あたり20万円を3月末に 一律に支給することで合意)。

 今回の カリキュラム改正は実に杜撰なものであり、在校生への大学側の説明会が 1月下旬にずれ込んだり、また旧カリキュラム分の授業について は、隣接した時限で隔週に補習をする(1コマ担当に対して2コマ分の時間を拘 束されることになる)ことが明らかにされたのは12月に入ってからであり、補 習分の給与についても統一的な説明がなされていない。このような杜撰なカリ キュラムの改正によって、来年度は2人が、そして最終的には2〜3人を残して 職を失うことは残念でならない。ただ、わずかな額でも団交によって慰労金を 得ることができたことは評価できると思っている。

 このよ うに未解決の問題を残している上に、最近になって非常勤の待遇の改悪につな がる問題が大学側から持ち出され、新たな対応を迫られている。したがって 「顛末」の「末」の部分についてはまだ報告できないことになるが、これはま た改めて報告する機会もあろうと思う。 (O)

 

 

−−大学ルネサンスRenaissance その15−−

コンビニ式経営法

村山  知恵

 

 

 「ところで、国公立大学の独立行政法人化って言うのは、いわ ばコンビニ式経営法になるってことなんだな。ほら10年前にあの信号の角の酒屋がコンビニになったろう。」

 「そうそう、あの酒屋の親父っていいやつだったよな。いつも おれの好きな酒を知っててさ、おい、だんな、一本とっておきやしたよ、なん て言ってくれてさ。それがコンビニに変わってから顔も出しやがらねえ。」

 「コンビニってやつは自分の店であり、自分の店じゃないから ね。例えばあのファミリーマートの社長は、日本全国のファミリーマートの社 長ではあるが、それぞれのファミリーマートの店主は社員じゃないんだよ。社 長から資金と店舗、商品を与えられた独立法人なんだな。つまり与えられたも のでその店を経営する店主だ。ファミリーマート社の社員は、マーケティング リサーチをして、どんな商品が売れ筋で、どんな客層がくるかを店主にアドバ イスし、商品を配送する。すると店主は、いかに客を集め、いかに売るか営業 努力をするんだ。その努力のかいがあって、売り上げが上々だと、その利益の 何パーセントかは会社に上納される。ところが、あの親父みたいに、商売下手 だと、客は来ない、商品は売れない、ついにつぶれる。つぶれると会社は、あ んたの営業努力が足りなかったから仕方がない、と助けることなく捨ててしま う。」

 「そうだよな、去年の暮れからシャッターを下ろしちまって、 不動産屋の『テナント募集』って紙が貼ってあったよ。かわいそうにあの親父 店売ってどこかにいっちまったのかな。」

 「いい親父さんだったけどなあ。まあいいや、つまり言いたい のは、国公立大学の独立行政法人ってやつは、この経営方法を使っているって 訳だ。社長は文部科学省、社員は文科省の役人、会社は国って訳だ。社長は社 員である役人、つまり難しい言葉で言えば国公立大学問題審議会のメンバー に、資金、つまり国の金と商品、つまり教科をリサーチさせて店主に託すわけ だ。店主は、つまり各国公立大学の学長、理事長、客って言うのが学生だね。 客の大方の好みをリサーチするのが、社員の腕の見せ所。

 今は、景気が悪く経済が落ち込んでいる日本だ。社会に出て就 職に役立つ商品、つまり教科は、景気のいい会社に採用されるような技術や、 資格を持つことのできるものがいい。そういった教科に関しては、景気のいい 企業も優秀な学生を採用できる可能性があるから、資金を提供してくれるかも しれない。そうすれば大学も助かるし、企業も金の卵を得る可能性も出てく る。

 するとお客が好まない教科はなるべく捨てた方が効率的にな る。例えば小難しげな教科、基礎物理とか、哲学とか、文学とか。こんなもの 何の役にもたちゃしねえ、切っちゃえ、てんでなくしてみた。これはえらくす っきりしたぞ、店内の商品はきれいに並べられた。さあこれだけの準備が整っ たところで、社員は各店長に資金と商品を持って、これでこの店の経営を独立 法人でやり給え、と持っていく。さあこれからが各店長の腕の見せ所。

 この商品はただ並べりゃいいってもんじゃない。この商品の使 い方を教える従業員が必要だ。つまり従業員てのが教員ということになる。コ ンビニでもそうだが、こんな場合に正社員を雇うのは経営効率が非常に悪い。 コンビニではすべてパートだが、大学ではほとんどがパートって訳だ。コンビ ニよりはでかいからな。このパートが任期制って訳だ。大学の教員にはある程 度の資格がなくてはならないから、役に立つかどうか任期を区切って雇ってみ るというわけだ。役に立たないなら雇い止めして、別なやつを雇えばいい。

 面倒な商品については派遣社員という手もある。語学なんか教 員の人数が多くて学生数が少なくて、最も経済効率が悪い。まとめて語学セン ターにして、派遣社員を雇えばいい。その方が、大学がどんな教員を選ぶかの 責任はとらなくて済む。面倒だったら、いっそ委託してしまえばいいんだ。例 えばベルリッツとかさ、大学の場所を貸してやるから、そこで適当に授業をや ってくれ。もう、めんどくさい、いっそ学生をベルリッツに行かせて単位にし ちまえばいいんだ。

 準備万端整って、思惑どおりに客足がのびれば、その大学は景 気がよくなり、大学も潤い、国も潤い、企業も潤い、景気が上向きになる。と ころがあの酒屋の親父みたいな気の毒な店長も出てくるわけだ。経営に失敗し て、つぶれたら仕方がない。その大学は廃校だな。気の毒に。」

 「なんだい、さっきから黙って聞いてりゃいい気になって、大 学って会社かい? 教育はどこにいっちまったんだよ。」

 「大学には教育や研究なんてしち面倒なものはいらねえな。客 を喜ばせればいいんだよ。」

 「客だ客だって学生のこというけど、じゃあ、金がない客は大 学に入れないのかい?」

 「あたぼうよ、大学は義務教育じゃないから、貧乏人は入らな くたっていいんだよ。」

 「そりゃないさ、貧乏だって一生懸命勉強したいやつだってい るさ。そういうやつこそ日本の将来にとって大事じゃねえかい。」

 「日本の将来ってのは経済大国だろうが。」

 「じゃなにかい、金持ってれば勉強が嫌いなやつも入れるって わけか?」

 「あたぼうよ、今の世の中、頭の良さよりは、金の多ささ。」

 「だがな、勉強嫌いで金のあるやつは、卒業してから就職がで きないだろ。」

 「そんなことは大学には関係ないよ。いい企業に就職できるの は、ほんの数パーセントの学生で十分だ。後は金さえ払ってくれればいいんだ よ、就職できようができまいが、本人の責任で大学の責任ではないわな。」

 「だからこの頃、大学を出てからコンビニでフリーターする若 いのが多いのか。」

 「あた ぼうよ、コンビニ式経営法だもの。」

 

 

−−新入組合員の声−−

控室30年

志真斗美恵

 

 

 非常勤 講師になって、いつのまにか30年。1年も休まず、その間に、3人の子を産み、育てながら仕事 をしてきた。

 1日2〜3コマ、週4日というのが常で、多いときは10数コ マ、今は8コマで下げ止まりという状態。第二外国語担当だからこそ、ここま でこられたのかもしれない。幾度か専任へのチャンスがあったが、実現はしな かった。二十代で初めて講師になった大学にいまだに通い、そのほかの大学 も、20年以上通い続けている、というのは、ほかの非常勤講師のかたから見れ ば、比較的恵まれた状態かもしれない。それでも来年はどうなるのかと毎年考 え、あの時、あの学校を辞めなければよかった、声をかけてくれたのを断らな ければよかった、と反省する今日この頃。

 もっと も悔やまれるのは、専門の仕事が十分にできていないこと。研究費も、研究室 もなく、海外に行くのも自費。時間的・経済的ゆとりがないまま、自分をあま やかしつつ時が過ぎていった。

 健康だ けを頼りにこれまできた。どんなに勤続しても退職金もなく、なんの保障もな い不安定な状態。今後はいったいどうなるのか。何かが起きたら、最低限の保 障をもとめてたたかうしかないと思ってはいる。本来は、よりよい状態にする ために行動に出なければいけないと思いながら、なにもなしえていない。

 非常勤 講師への国からの補助金が一気に増額されるだろうというニュースは、もちろ ん喜ばしいことで、非常勤講師組合の結成以来の多面的な活動によるところが 大であると感謝している。一方で、これは働く者の総パート化をたくらんでい る人たちの策略のひとつか、と少々斜にかまえた見方が私の頭に浮かんでく る。国立大学は、独立学校法人に、専任はとらずに任期制で。定年退職者がで ても後任者をとらず、非常勤でまかなう。そんな中で、ほんの少しばかりの条 件アップで文句はいわせない、なによりも、経営の安定をはかるのだ、という ことか。1人の専任の手当てで、10人以上−−保険や退職金等々を考えれ ば、それどころでない数の非常勤がまかなえるだろう、それで結果としては、 文部科学省も補助金が小額ですませられる仕組みになっているのではないか。

 いった い、大学の専任教員の比率は今どうなっているのか、女性教員の比率はどのく らいなのか、それらはどうすることもできないのか……と考えがめぐる。

 ともか く、本来、利潤追求の場であろうはずがない教育にまで、経済の論理が押し付 けられ、研究は即効性で判断される状態が押し寄せてきている。

 外に目 をやれば、いよいよ自衛隊がイラクに出て行く。昨夏、ウィーンから帰ると き、PKOでシリアに派遣されていた自衛隊員と同じ飛行機に搭乗し、日常的 に自衛隊が海外で活動していることを思い知らされたばかりなのに、今度は軍 機で自衛隊がイラクへ旅立っていくのを見せられている。

 このよ うなことを考えていると、見通しの暗い話ばかりで、いっこうに元気がでませ んが、組合の皆さんとつながり、すこしでも前にすすんでいこうという気持ち です。友人たちの組合でのがんばりを見聞きするたびに励まされています。ど うぞよろしくお願いします。

 

 

<連載>

東京都立4大学統合と非常勤講師の雇用問題(9)

T・W

 

 

 都立新大学は、地方独立行政法人「首都大学東京」として2004年4月に開学が予定されている。4大学廃止にともない、キャ ンパスなど物的資産継承問題とはべつに、専任教職員、院生、学生の地位継承 (研究・教育条件保障など)の問題が残る。

 非常勤講師の場合は一年ごとの有期雇用のため、雇用問題の視 点からは2つの問題がある。一つは新大学への雇用継続であり、他の一つは 旧4大学の募集停止にともない受講生がゼロになった場合(一定人数以下の場 合も含む)の措置についてである。前者は、基本的には教育内容の構成と教員 の配置などに条件づけられる問題である(3月現在、都大学管理本部側の「一 方的な新大学設立準備手続き」に対する専任教員の反対、抗議が強まり、一定 の混乱がみられ、非常勤講師の担当科目、クラスなどは当面未定である)。後 者については、語学クラスなど開設の際の条件問題としても共通する面があ り、各大学で一般的いえば、その対応はさまざまである。

 都立4大学では、4月新年度授業開始後すぐに問題がでてくることも考 えられる。その場合の措置については明確にされてはいない。都大学管理本部 とのあいだで、この問題をめぐり交渉が必要になる。したがって問題につい て、あらかじめ考えておくことは、むだではない。

 後者の問題を教員の側からみると、専任教員の場合には履修生 がゼロならば担当クラスが減ることで、とくに生活に支障は生じない(かえっ て研究が保障される面もある)。しかし非常勤講師の場合は、担当クラスがな くなり収入減になり生活に直接影響することもある。その分を他大学で振替え ることも年度途中ではきわめて困難であるといえる。また職そのものを喪失す るなど重大な結果となることもある。他大学で担当する非常勤職との関連で不 利となる場合もある(信用問題など)。逆に大学を経営する側からみると、経 営効率にかかわる一般問題として、各大学の財政事情などを考慮しなければな らない問題としての面もある。

 ここでは3回にわたり、非常勤講師の雇用問題の視点から、この問題を考え ることにしたい。

 

 

クリップボード

 

 

1)『控室』原稿を募集します!

 

 組合員か否かを問わず随時受け付けます。掲載段階で匿名は可 能ですが、連絡先はご通知ください。プライバシーは厳守します。電子メール による原稿を歓迎します。短い記事や通信は送信者に断りなく「組合員の声・ 読者の声」などに匿名で掲載することがあります。原稿の送り先は以下の通 り。

   FAX:048-959-5004

 

2)公募情報などの収集・配布

 

 大学教員等の公募情報を電子メールで送信します。受信希望者 は下記まで。ただし当方の都合による遅れ・中断・中止もありえます。公募情 報・情報源情報を上記連絡先までお寄せいただければ幸いです。

 

3)『控室』の配布

 

 本紙をメールボックスに投函できる大学にお勤めの方は、本部 までご連絡ください。執行委員が配布に伺います。

 

4)組合への加入

 

 当組合に加入をご希望の方は、題字下の組合本部に電話で、ま たは委員長宅にファックスで、ご連絡ください。

 

 

編集後記

 

 

 この間の成果は何と言っても私学助 成金の補助単価アップですが、それを確認した陳情については、前回同様この 交渉の中心になって活躍してくださったHMさんに今回も報告をお願いしました。千葉大学では、この成果 をもとに給与の25%カットという法外な措置をはねかえしましたが、来年度の 運営交付金の非常勤講師の給与分がゼロ査定になっている、という「とんでも ない噂」が一部に飛び交っていることは問題です。 (行)

 

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