首都圏大学非常勤講師組合 機関紙

『控室』第43号付録

2002年6月2日発行(一部訂正済み)

 

首都圏大学非常勤講師組合

(東京公務公共一般労働組合 大学・専門学校非常勤講師分会)

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大学非常勤講師問題ついに国会質問へ

 

 大学非常勤講師問題が始めて国政の場でとりあげられました。2002年4月2日(火)午前10:00開会の第145回国会参議院文教科学委員会で、日本共産党の林紀子参議院議員が質問したものです。以下、『会議録』第5号の該当箇所を掲載します。

 

●林紀子君

 日本共産党の林紀子でございます。

 私はまず大学の非常勤講師の問題から質問をしたいと思います。

 今、文部科学省は大学全体で何人の非常勤講師がいるのか。そのうち、非常勤講師の仕事のみをしている人、例えば社会人であるとか、本務があって非常勤講師をしているという方は除いて、非常勤講師の仕事だけをしている人はどれだけいるのか。そして、大学の講義全体のうち非常勤講師が占めている割合はどうなっているか。待遇はどうか。こうしたことを現在把握していらっしゃいますでしょうか。

●政府参考人(工藤智規君)

 非常勤講師の方の人数でございますけれども、これは3年に1遍調査してございますので、直近は平成10年10月1日現在でございますが、国公私立大学を通じましての非常勤講師の総数は13万3869人でございます。全教員に対する割合は47.8%となってございます。このうち、専ら非常勤講師のみを仕事としている方は国公私で4万5067人でございます。全教員に対する割合は16.1%でございます。なお、これは、国公私別で見ますと、どうしても全教員に対する割合は国立よりは公立が若干多く、公立より は私立が多いという状況になってございます。

 それから、お尋ねのございました、じゃ授業の割合、待遇はいかがかということでございますけれども、いずれにしましても、どういう方を非常勤講師にお迎えするか、どういう授業を御担当いただくか、それぞれの大学の御判断でされているものでございますが、授業全体に対して非常勤講師の方が担当していらっしゃる授業というのは、残念ながら国立大学については把握していないのでございますけれども、私立大学で見ますと、これも大学でまちまちでございまして、割と規模の大きい大学で見ますと、全体の24%あるいは34%の割合というデータなどがございます。大学で大変まちまちでございます。

 それから、待遇でございますが、国立大学の場合は、一応、お迎えする非常勤講師の方の経歴等によりまして若干違うわけでございますが、予算の範囲内で手当てをしてございまして、一例を申し上げますと、1時間当たりの単価で申しますと、おおむね4千円から8千円という状況でございます。また、私立大学につきまして見ますと、実態としましては1時間当たり4千円前後という状況と把握してございます。

●林紀子君

 先日、私も同席をいたしまして、文部科学省には非常勤講師の組合の皆さんから要請を聞いていただく機会というのを持ちました。ですから、その苦労の一端、状況の一端はそこでもお分かりになったかと思うんですけれども、私はそこで一緒にお話を聞いていて大変驚いたんですね。

 といいますのは、今その一端、工藤局長の方からお話ありましたけれども、多くの非常勤講師というのは1年契約なんですね。ですから、10年、20年同じ大学に働いていても、地位とか待遇にはほとんどその年限というのは反映されていない。

 給与は月に4、5回、1こま90分の授業を受け持って2万5千円程度だというわけですね。今、1時間4千円程度ということがありましたが、それとちょっと換算がすぐはできないんですけれども、大学の授業というのは、90分でそれを1週間1回行って1こと数える。だから、この2万5千円というのは、1週間の1遍が2万5千円じゃなくて、1月に毎週4、5回大学で授業をしてそれで2万5千円だということなんですね。ですから、これだけでは到底食べていくことはできないわけですから、あちこち大学を掛け持ちして10こま20こま教えている。カルチャーセンターや予備校、塾でアルバイトをしたりしてようやく生活費を稼いでいる。

 大学では産休や育児休暇はもちろん、有給休暇もない。多くの場合は社会保険にも入れない。退職金もない。しかし、研究しないで大学の教師というのは務まらないわけですから、じゃ必要な文献図書を買うのはどうするか。それも自腹を切って買わざるを得ないというんですね。学会や調査に出掛けるときも自費でそれは出掛けなければいけない。大学に行って、じゃ研究をするのにふさわしい環境かというと、講師控室という大きい部屋がどんとあるけれども、個人個人の研究室などというのは到底ないし、それから大学の紀要にも論文発表の機会というのも持てない。こういう状況なんですね。

 今、私立の場合で24%から34%ぐらいの授業を非常勤講師が受け持っているのではないかというお話がありましたけれども、特に首都圏などの私立の大学では半分くらいの授業がこうした非常勤講師の先生によって支えられていると、こういう話なんですね。

 そこで大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、先ほど来、大学の活性化というようなことも随分言われましたけれども、こういう劣悪な状況の先生たちが本当に大きな部分を、授業をしょっているということで、本当に大学の活性化というのはできるんでしょうか。ですから、個々の私立の大学というのは特にその大学がどうするかという判断だというお話ありましたけれども、これは個人個人の問題を超えていると思うんですね。もっと日本全体の大学の在り方の中でこれはどう考えるべきかというのを位置付けないといけないと思うわけです。

 ですから、今、工藤局長から一定の状況というのはお話がありましたけれども、もうちょっときちんと調査をする、本当に待遇なんかはどうなっているのかということも含めてきちんと調査をする、そういうことを是非していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

●国務大臣(遠山敦子君)

 今お話しのように、非常勤講師の雇用の在り方あるいは待遇などにつきましては各々の設置者の責任に基づいて決定されるべきものであるわけでございます。

 非常勤講師がどういう条件の下に働いているかなどの実態につきましては、文部科学省として一般的に調査を行うことは考えていないわけでございますけれども、国立大学におきます非常勤講師について幾つかの点では調査結果を持っているわけでございますけれども、担当する授業の割合など把握していない事柄について今後必要に応じて調査していきたいと考えています。

●林紀子君

 必要に応じて調査をしてくださるということですけれども、今みたいな状況を聞いてくださいましたら、やっぱりそれは今必要なんではないでしょうか。本当にこういう、先生の空洞化と言ってしまっていいのかどうか分かりませんけれども、本当に一生懸命自分たちは大学のそれぞれの先生、助教授、教授なんかにも負けないように学生たちにはきちんと勉強を教えたいんだという、そういう誇りも持ちながら、だけれども、こんなひどい状況でやらざるを得ないんですね。

まず生活も成り立たないようなこんなところでやっているわけですから、これは必要に応じてというお話でしたら、やっぱり今すぐ必要なんじゃないかというふうに思うわけですから、是非調査をして、そしてこういうようなところを野放しにしておいていいのかどうかというのは、調査の結果、それからだと思うんですね。ですから、まず調査がスタートだと思いますので、是非、国立、公立、私学も含めまして調査をしていただきたいということを再度お願いしたいと思います。

*   *   *

 『控室』第42号でお知らせしましたように、首都圏大学非常勤講師組合は、外国人教員の組合や関西の大学非常勤講師2組合と共同で、この2月に政府(文部科学省・厚生労働省)に対し待遇改善の要請を行いました。しかし、健康保健や年金など非常勤講師にとって最も切実な問題点は、上の議事録からもわかりますが、まだこれからの課題です。いま国は、パート労働に関わる諸制度の見直しに着手していますが、両院の厚生労働委員会でも、機を失することなく、私たち大学非常勤講師の待遇改善が論じられることを切に望みたいと思います。

 

(注記・補足)

 

(1)文部省が非常勤講師数について根拠にしているのは『学校教員統計調査報告書』1998年度版である。短大や専門学校なども含めると、数値は大きくなる。同報告の2001年版は集計・処理中である。毎年刊行の『学校基本調査報告書』からも、非常勤講師への依存度が年々上昇していることが分かる。両調査の非常勤講師数は、実数でなく、延べ人数(辞令件数)である。

 

(2)政府参考人が私立大学の授業にしめる非常勤講師担当授業の割合について述べている数字は、近年の早稲田大学の約40%など首都圏の大学の30〜50%といった数値と比べると、明らかに低い例を持ち出している。なお、国立大学については、比較的容易に集計できるはずであるが、それとは別に、予算と単価から、非常勤講師担当授業の割合を概算できるはずである。

 

(3)政府参考人の答弁にある数値から、非常勤講師の給与について、年間給与や月給が換算できる。すなわち、90分(2授業時間)授業を前後期各15回(年間30回)行うのが基準であるから、次式のようになる。

   単価(円/授業時間)×2(授業時間)×15(週)×2(前後期)=年間給与(円)

   年間給与(円/年)÷12(月/年)=月給(円/月)

これに政府参考人の答弁にある数値を代入すると、

単価4千円(0.4万円)の場合

   0.4×2×15×2=24(万円/年);24÷12=2(万円/月)

単価8千円(0.8万円)の場合

   0.8×2×15×2=48(万円/年);48÷12=4(万円/月)

参考までに、単価6千円(0.6万円)で計算すると、年間36万円=月給3万円である。

   0.6×2×15×2=36(万円/年);36÷12=3(万円/月)

 

 

上告棄却の決定は許せません!

筑波大学外国人教師解雇事件

 

 この事件は1997年に起こった前代未聞の事件です。国立大学のドイツ文学の教授が、大学付属病院で白血病の治療を受けていた部下(外国人)の主治医に電話をかけて医療情報を聞きだし、契約の更新拒否をした事件です。

 上司とは当時筑波大学外国語センター長であった洲崎恵三氏(現筑波大学名誉教授)、部下とはバーバラ・スキルムント氏です。

 

水戸地裁判決

 

 洲崎氏を被告として水戸地裁土浦支部に起こした損害賠償請求訴訟の判決は、主治医と洲崎氏による不法行為を認定しました。すなわち、主治医による医療情報の漏洩、洲崎氏による職権を濫用した医師への架電と医療情報の取得が認定されました。しかし、洲崎氏は国家公務員ということで、請求は棄却されました。これは被告を国にして提訴し直しなさいというもので、スキルムント氏はその後、国家賠償請求訴訟を起こし、東京地裁で現在も係争中です。

 

東京地裁判決

 

 スキルムント氏は、その一方で、国を相手に外国人教師としての地位の確認を求めた行政訴訟を東京地裁に起こしました。東京地裁は請求棄却の判決を出しましたが、それは次のようなこれまた前代未聞の判決でした。外国人教師との契約は会計法の「会計年度独立の原則」ゆえに会計年度をまたがることは許されず、したがって契約は満期(3月31日)をもって当然に終わってしまうので1年契約は正当であり、筑波大学の更新拒否には問題はない。そうすると、仮に筑波大学長が男女差別や人種差別などの公序良俗に反する理由から契約の更新を行ったとしても、司法審査の対象とならなくなってしまうことになるが、それはやむをえない―と。これを読んで呆れない人は読者の中にはいないと思います。

 

東京高裁判決

 

 さすがに控訴審の東京高裁は、人種差別云々には触れませんでしたが、外国人教師との1年契約には合理性があるとして、控訴を棄却しました。

 

上告

 

 東京地裁も、東京高裁も、事実審理をするようにとのスキルムント氏の再三の要求にもかかわらず拒否し、このような判決を出しました。これに対してスキルムント氏は、2001年1月に最高裁に憲法違反等を理由に上告しました。

 

上告理由

 

 上告理由は、次のようなものでした。

 国立大学の外国語センター長による医療情報の違法な取得は、個人の尊重を謳う憲法13条、およびプライバシーの保護を定める国際人権規約B規約(自由権規約)17条に違反し、違法に取得した医療情報に基づく筑波大学による解雇または更新拒絶は、法の下の平等を定めた憲法14条および自由権規約26条に違反し、期間付き雇用契約の下にある外国人教師が憲法違反の理由や意図による解雇や更新拒否を受けても司法的救済を得られないというのは、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するので、控訴審判決は直ちに破棄されるべきである―と。

 

署名

 

 支援する会としては、地位確認を求める行政訴訟における東京高裁の不当な判決を覆すために、最高裁への意見書の署名運動に取り組みました。2002年3月までに6200筆の署名を最高裁に提出しました。

 署名者の国籍は日本のほかに、アメリカ、カナダ、スイス、イスラエル、イギリス、ドイツ、中国、オーストリア、アイルランド・・・と多彩です。名は挙げませんが、署名に取り組んでくれる組合多数ありました。

 

上告棄却の決定

 

 筑波大学で結成された筑波大学ユニオンも2002年1月にスキルムントさん支援を決定し、署名運動が盛り上がりを見せ始めた矢先の4月25日、すなわちゴールデンウィークが始まる直前、最高裁第一小法廷は突如として、全員一致で、上告を棄却する決定を出しました。理由は「民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、違憲をいうが、その前提を欠くか、又はその実質は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない」というものでした。

 

希薄な人権感覚

 

 上告後、1年3ヶ月を費やしてもこの程度の判決です。最高裁の人権感覚の希薄さが明らかになっています。

 民事訴訟法に規定されている適法な上告理由とは、憲法違反です。最高裁は、条約などの国際法違反や、間接的な憲法違反の主張を、しばしば憲法違反の主張ではないとして、退けています。

 今回も、この手を使って憲法違反という上告人の主張を判断することなく、門前払いをしたものです。

 憲法98条2項は、日本が締結した条約と確立された国際法規の誠実な遵守を定めており、批准した国際条約は一般に国内法に優先する効力をもつものと考えられています。すなわち条約が保障する権利は、国内の法律に優先して保障され、それに違反するような国内の法律または法律の条項は効力が否定されることになります。

 上告理由の中で挙げられている国際人権規約の基本文書にはA規約(社会権規約)とB規約(自由権規約)があり、日本はともに1979年に批准し、上告理由の中で挙げられている各条文を留保なく批准しています。

 社会権規約の批准後、外国人の社会保障に関する憲法訴訟において、この社会権規約が援用されることが多くなりました。

 日本の裁判所はこれまで、日本国憲法に規定されている社会権や平等権の侵害が憲法訴訟として争われた場合、社会権は「プログラム規定」もしくは国会の裁量に属する問題であり、裁判規範性はないとして、あるいは合理的な差別であるとして、あるいは公共の福祉のためのやむを得ない差別であるとして、憲法違反の主張を退けてきました。

 そのためでしょうか、日本の裁判所は、国際条約である社会権規約を援用した憲法訴訟においても、上に述べたのと同じ手法で憲法違反の主張を退けたり、あるいは社会権規約に関する判断を回避したりで、社会権規約を適用して判決を出したのはこれまでたったの一例しかありません。

 最高裁にいたっては、このたびの上告棄却の決定のように、民事訴訟法の定める上告理由に「条約違反」がないことをもって、条約違反の主張を検討することなく門前払いを続けています。

 こうした手法が条約違反であることは、社会権規約2条により明らかです。すなわち同条は、開発途上国を除くすべての締約国に、立法措置その他のすべての適当な方法により、この条約に定められた人権の実現の義務を課しているからです。同じような規定は自由権規約2条にも見られます。

 日本の裁判所の態度を憂慮した社会権規約委員会は2001年8月、日本に対して、人権規約に定められた差別禁止の原則は絶対的なものであり、「合理的差別」を許容するものではないことを明らかにするとともに、規約に定められた規定を裁判規範として直接適用可能なものと解釈するように、また日本の裁判官、検察官、弁護士を対象とした人権教育を徹底するようにと勧告しています。まったくお恥ずかしいかぎりです

 

闘いは続く

 

 最高裁の上告棄却の決定が出たとはいえ、闘いが終わったわけではありません。主治医による医療情報の漏洩、洲崎氏による職権を濫用した医療情報の違法な取得とその悪用による更新拒否の決定等に対する国家賠償請求訴訟が東京地裁で続いています。

 洲崎氏らによる違法行為の事実認定がなされれば、最高裁の上告棄却の決定の不当性が浮き彫りになります。プライバシーの重大な侵害が認定され、国家賠償が認められても、雇用主は国家であり、雇用契約は1年という有期契約であり、被害者は外国人だから、という理由で、雇用は守られないというのであれば、正義を破壊しているのが誰であるかが明らかになります。

 今後とも、ご支援のほどよろしくお願いいたします。(スキルムントさんを支援する会)

 

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