首都圏大学非常勤講師組合機関紙

『控室』第38号

2001年2月25日発行

(WWW版:一部訂正)

正式名称:都区関連一般労働組合 大学・専門学校非常勤講師分会


 首都圏大学非常勤講師組合機関紙『控室』第38号
                2001年2月25日 発行
【都区関連一般労働組合 大学・専門学校非常勤講師分会】
【委員長】志田昇 Tel&Fax 0426-27-4420
【郵便振替口座】00140-9-157425 大学非常勤講師分会
【本部所在地】JR山手線・大塚駅・東京労働会館 5F
 〒170-0005 豊島区南大塚2丁目33番10号
       東京労働会館(ラパスビル)5階
 Tel 03-5395-5255 / FAX 03-5395-5139
【当組合の情報について】
 1) http://www.os.rim.or.jp/%7Etown/
 2) http://quoniam.social.tsukuba.ac.jp/union.shtml

本号の主な内容
本組合の2001年春闘統一要求(案) 団交・運動ニュース:組合掲示板・組合旗提案/お知らせ トクする情報:確定申告の時期になりました クリップボード 付録:筑波大学外国人教師事件 = 最高裁上告へ ■



首都圏大学非常勤講師組合       

2001年春闘統一要求(案)

 2001年春闘に向けて、組合では、統一要求書を準備しています。 ただいま検討中のものをご紹介します。 この「案」をたたき台として検討を重ね、より説得力のある、多くの方々の理解が得られるような統一要求書にしたうえで、総会で決議したいと思 います。 組合内外の、多くの皆さんのご意見・ご助言を、委員長まで、是非お寄せください。 お待ちしています。 非常勤講師の待遇をよくすることは、日本の教育をより充実したものにすることに直結します。 力をあわせて頑張っていきましょう。(編集部)


 首都圏の私立大学では、非常勤講師の数が専任教員の数を大きく上回り、講義の50%以上を非常勤講師が担当している大学さえ少なくない。 そして、その約半数が本務校をもたない専業の非常勤講師である。 また、1975年から1995年にいたる20年間に、専任教員が29%しか増えていないのに対し、非常勤講師は95%増え、約2倍になっている。 このように、大学の教育研究のなかで大きな役割を果たしており、その比重は年々高くなっているにもかかわらず、非常勤講師の待遇は信じがたいほど劣悪である。

 例えば、賃金は、組合結成後一部の大学ではかなり改善されつつある(明治、法政、神奈川工科大など)が、多くの大学では1コマあたり月25000円(年30万円)前後であり、専任並に5コマ働いても年150万円程度にしかならない。 専任教員の年収は900万から1200万円であるから、賃金は控えめに見ても7分の1程度にすぎない。 さらに、退職金や雇用保険・社会保険を考慮すれば10数倍、研究費、図書費、学会出張費、研究室の費用、電話代なども計算に入れれば、われわれの雇用コストは20分の1にすぎない。 このような差別待遇は、同一労働同一賃金の原則に反するだけでなく、「公序良俗に反する」(丸子警報機事件長野地裁判決)行為といわざるをえない。 また、大学教員は教育と研究が職務内容とされており、非常勤講師も大学で教えるためには、一定の研究業績と能力が求められている。 にもかかわらず、非常勤講師には、研究費も学会参加の出張旅費も支給されていないし、紀要などに研究成果を発表する権利さえない。 研究室もないため授業の準備をしたり学生の質問や相談に応じたりする空間さえ保障されていないのである。

 そのうえ、非常勤講師は1年単位の有期雇用であるため身分が極端に不安定である。 最近では、第二外国語の廃止や縮小のために多数の非常勤講師が仕事を失っている。 また、短期大学の廃止にともない非常勤講師が大量解雇(東洋大学、東洋女子短大、成徳学園など)され、短大の専任教員が四年制の大学に移るために四年制大学の非常勤が玉突き式に解雇される例もある。 夜間部が廃止されたり、昼夜開講制に移行したりする場合にも、まず非常勤講師が犠牲になりがちである。 少子化などのために、定員割れの大学が急増する中で非常勤講師の解雇・コマ数減はますます増える傾向がある。 こうしたリストラに便乗して、恣意的に非常勤講師が解雇される事件も後をたたない。

 首都圏大学非常勤講師組合は、結成後の最近5年間に解雇問題で30数件争い、そのうち26件、31人(その他に、大学臨時職員・嘱託職員を3件支援し、解決)は雇用継続など本人の納得できる解決(残りは、裁判2件など交渉中)を勝ち取ったが、これまでは、20年も30年も勤めていても解雇通告を受ければ泣き寝入りせざるをえなかったのが実態である。

 こうした現状は、大学教育の質を低下させ、学生を失望させ、大学の社会的責任を放棄することにもつながっている。 いまや、大学の教育研究の改善のためには非常勤講師の待遇改善の問題は避けて通れないのではないだろうか。

 最近では、全国各地(京滋、阪神、首都圏)で組合が結成されたことの影響もあって、非常勤講師の待遇のひどさが新聞・週刊誌・雑誌・テレビ・単行本などで広く伝えられ、大学経営者の中からも「日本では非常勤講師の待遇が悪くて、組合までできているが、現実には非常勤講師の方が、専任教員よりも授業が上手く学生に好評だったりする」(石川洋美 芝浦工大理事長)、「非常勤講師の待遇を格段に高め、併せて大学教育サービスの質を充実していこう、これは私の信念のようなもの」(野田一雄 宮城大学学長)といった意見が出はじめているほどである(「カレッジマネジメント」2000年9月号参照)。 われわれは各大学および文部科学省に対して非常勤講師が誇りと余裕をもって研究・教育に携われるよう待遇を改善するよう要求する。

(1)社会的位置づけの明確化と実態調査

(2)雇用の安定化のために

(3)労働条件の改善

(4)研究・教育条件の拡充

(5)専任教員のアルバイト禁止

(6)専任教員と同様に奨学金の返還を免除すること。

(7)非常勤講師の組合に掲示板と組合事務所を提供すること (掲示板は白梅短大、明治、法政、湘南工科大などで実現)。


団交・運動ニュース


 昨年末から新年にかけての団交の結果、N大学の雇い止め撤回の成果があがりました。 ほかにも、継続的な交渉を複数の大学で行っています。一方で、非常勤講師の契約書問題など新たな課題も出てきています。 『控室』次号で、2000年度の成果や、最近の雇用をめぐる諸問題をまとめてお伝えする予定です。(編集部)


組合掲示板・拝見

 右の写真(電子メ−ル版では省略)は、白梅学園短大の非常勤講師控室に設置された組合の掲示板です。

 白梅では、団交を行う前に、断行の交渉項目を掲示するとともに、この掲示板に「交渉で取り上げて欲しいこと」を記入してもらうコーナーを作ります。 毎回2〜3人の方が記入され、団交に反映させています。 多くの非常勤講師の声を反映した組合活動でありたい、と考えてこの掲示板を活用しています。(I.S.)




提案:組合旗に水準器のマークを

 総会までに組合旗を作ろうと言う構想が進んでいますが、執行委員の中から、「マークにフランス革命時の平等のシンボルとして描かれた“水準器”を入れたらどうだろうか。 労働に見合う公平な処遇を求めて闘っている我々の組合にぴったりだから」という意見が出ています。

 右の図(電子メ−ル版では省略)で、平等の寓意像が右手に持っているのが“水準器”です。 建物の建設の際、水平を確保するために用いられました。ご意見のある方は、次回の執行委員会までに、お寄せください。(I.S.)




組合よりうれしいお知らせ

その1
 普及担当SKさん(2000年12月10日メール)により、『大学危機と非常勤講師運動』普及・販売は約550冊、宣伝用ビデオ録画「大学非常勤講師問題」普及配布は136本、多くのカンパにより赤字は何とか回避できそうで、ご支援・ご協力いただいた方々に感謝している、とのお知らせがありました。 なお、追加発注したため『大学危機と非常勤講師運動』は51冊の在庫がありますので、ご注文をお待ちしております、とのことです。
その2
 当組合メンバー2名が、2001年4月からの就職(大学教員)が決まりました。 『控室』の紙面を借りて、日頃ご協力いただいている読者の方々にお知らせするとともに、ご本人の長年の努力が報われたこと、お祝いいたします。 なお、お二人とも、当組合メンバーとして継続する意向です。

必見!トクする情報:確定申告の時期がやってきました

 確定申告について『控室』 第23号、 第24号、 第30号などに短い記事が掲載されています。 直所5−5昭和32年3月1日「印税および原稿料の所得標準率の適用について」 (通達)によれば、普通は収入100円当り30円の必要経費を引いた70円が所得になる のにし、70円の2割の14円をさらに必要経費として控除できるそうです(合計44%: 30円+14円=44円)。

2000年分の確定申告についてのSKさんの経験

 2001年2月8日に確定申告したところ、今年の還付額は16万6千円余りとなりまし た。 今年のK税務署の相談員は、今までで一番、感じが良かったかも知れません。 2000年の私には、3大学の給与所得(源泉徴収票三枚、通年で9コマ分)の他に、わ ずか13800円でしたが、原稿料収入がありました。原稿料収入については、2本書い たうち、1本没になったので収入は1本分だけだったこと、資料収集のための交通費 も含めれば経費が原稿料を上回っていることなどを話すと、相談員は「とにかく、実 際にかかった経費を書き込んでください」と指示。私は、経費として13800円(2〜 3万円と書いても良かったが)と書きました。(実際に必要経費として差し引くこと が出来る上限は、原稿料収入の額までのようです。領収書をキチンととっておけば、 金額次第で、原稿料収入の44%より大きくても、必要経費として落とせるようなこと を 2000年分の確定申告の際に相談員から聞いたような気がします。)すると、相談 員は、前年までと違って特にケチもつけず、「では次に・・・」と指示を継続。この 経費については、交通費、本やコピーの代金などの領収書の類は一枚も持参しません でしたが、結局そのまま認められました。そもそも原稿料収入が少なかったからか な?

MYさんの長年の経験から

 私の場合、過去20年間、毎年必要経費を具体的に申告し、源泉徴収された分をほぼ 100%還付してもらっております。本代、新聞・雑誌代、海外旅行の費用の半分(英 米以外に行った場合は自粛して3分の1)、学会費、パソコン、机の原価償却費、交通 費はもちろん、原稿料が多い年は自宅の電話代、ガス・電気代の一部を必要経費とし て申告して認められました。借家の方は家賃の一部を含めてもよいのではないでしょ うか。20年近く、そのようにしていますが、一度も問題にされたことはありません。 ただし、領収書は保管。これは結構面倒(税務署に提出の必要はありませんし、提出 を求められたこともありませんが、5年間保存するようにとは言われました)。それ と確定申告の際、必ず必要経費の明細書(私製)を添付しています(これは最初にフ ォームを作っておけばとても簡単)。原稿料収入が少ないときは、還付される額もス ズメの涙で労力に見合わない気がしますが、少ない場合は保管する領収書も少なくて 済みます。原稿料が何百万もある場合はともかく、80万以下でしたら、きちんと計算 して申告すれば80%〜100%戻ってきます。特に私達非常勤は、出張費等一切貰わ ず、自前で本を買い、自前で研究会に行き、自宅で原稿を書いている訳ですから、掛 かった分はちゃんと取り戻しましょう。税務署も、%計算するよりも必要経費をきち んと計算して出す方を薦めているとのことです。

AIさんが聞いたところでは

 非常勤先で知り合った税法の先生のお話では、領収書なり記録なりをきちんととっ ておくのが法律的には正しいのだそうです。資料の運搬にタクシーを使った、などと いう場合はもちろん経費で落ちるそうです。ただし、講義で使った本等はすでに、給 与所得の控除で落ちているはずだから、重複して計上できません。一家に複数の研究 者がいるときも、共用の本はどちらの経費かをめぐって、クレームがつく可能があり ます。しかし、そういうことを考え合わせても、それらしいものの領収書の合計金額 が申告した経費の2倍あれば、相当の額(私達には関係ないか?)でも、まず問題に ならないそうです。

 確定申告について有用な経験や見解をお持ちの方は、ぜひ『控室』編集者までお知らせ下さい。

クリップボード

(1)『控室』原稿を募集します!

★組合員か否かを問わず随時受けつけ。掲載段階で匿名可(連絡先は必ずご通知のこ と):プライバシ−厳守;電子メ−ルによる原稿を歓迎。短い記事・通信の類は送信 者に断りなく『控室』読者の声などとして匿名で掲載することがあります。また最近 の組合運動関連出版物等、当組合員の最近の学術出版等の情報もお待ちしています。 原稿送信先(編集担当者宛)は次の通り。
【E-Mail】s-kkch@pa2.so-net.ne.jp
【FAX】0489-59-5004

(2)公募情報などの収集・配布

★大学教員等の公募情報を電子メ−ルで送信中。受信希望者は下記まで。但し、当方 の都合による遅れ・中断・中止あり。公募の情報/情報源情報を下記連絡先にお寄せ いただければ幸いです。
【E-Mail】s-kkch@pa2.so-net.ne.jp
★公募情報も含め当組合に関する現在の状況は、
 http://quoniam.social.tsukuba.ac.jp/union.shtml
 ないしは<組合本部>
 http://www.os.rim.or.jp/%7Etown/
 をご覧ください

(3)組合関連―現勢・雑報―

★当組合の現勢は150名。(2001.1.27現在)組合加入用紙を配ってドンドン仲間を増 やしましょう。経費節約と宣伝範囲拡大のため、手渡しや非常勤講師用メ−ルボック スへの投函などで『控室』を配布できる方は、FAX:042-593-0302まで、送付先(配布 者の住所・氏名など)、配布する大学(学部)・学校名,配布部数をお知らせ下さ い。運動の輪を広げるため可能な方は、所属学会・研究会等々で宣伝や支援要請など 試みて下さい。

(4)当組合員の最近の学術出版等

★発行人:矢延洋泰(yanobu@clubaa.com) 『INDEPENDENT TIME』No. 59(東南アジア地域研究会発行、編集者:田上一郎、特集:21世紀に向けて〜2000年就職活動をふ りかえる)

(5)組合員の声

【1】最近、判明したことで、ちょっと驚いたことがあります。既に若干の私立大学 (学校法人)は、独自に人材派遣会社を起こしているようです。前者の理事長が後者 のトップも兼ねているようで、後者の人材派遣会社は、学校法人に、事務職などを派 遣しているようです。学校法人は、定年で退職した職員を補充せずに、自ら興した人 材派遣会社から契約社員を学校法人に(安い賃金・細切れ任期で)派遣しているよう です。これは詰まるところ、非常勤講師並に事務系職員も非常勤化しよう、というこ とのようです。教育活動に加えて事務的業務も徹底してパート化を追求するという作 戦のようですが、その結果、教育・研究だけでなく、図書館や計算機センターなども 含め、あちこちに穴が開き始めており、各種の業務の遂行状態が悪化して、大学の機 能がいっそう低下しそうな気配が漂っているように感じられます。(2000.11.12、KS)

【2】統一要求書に入れてもらいたいことがあります。それは、新入生のガイダンス 時、あるいは、学生便覧等に、「非常勤講師」という存在をきちんと説明して欲しい ということなのです。講義中、何回も言っているにもかかわらず、「週に1回しか来 ない」と苦情を言ってくる学生が後を立たないのです。実際問題として、幼稚化した 大学生に、週一回の対応では、きちんと教育するのは無理なんですけどね。そういえ ば、知り合いの専任教員がおもしろいことをぼやいていました。彼の所属する一般教 養グループで基礎科目の時間割を組み、工学部の専門の先生に見せると「うちの学科 の数学は、なぜ非常勤が担当なのですか」と文句を言われるそうです。その先生は、 自分は非常勤先ではいい加減に教えているそうで、ああいう先生ばかりでは困るとい うのです。そうではなくても、専門側からの要求を何かと伝えにくく、教育上問題が あるので、いやがるのだとか。なぜいい加減な講義をするのかよく考えてみれば、私 達の気持ちもわかると思うのですが。(N)

(6)『控室』読者の声

【1】独立自尊迎新世紀。今年もよろしくお願い申し上げます。ご無沙汰しています が、お元気でご活躍のことと拝察いたします。・・・こちらはものすごく忙しいで す。特に来年度は、J学が新しく増えるほかに、他学科のサバティカルの先生の代講 を2本、それに県立M大学の非常勤を1本引き受けました。M大学では先生がいなく て、これまで遠地から集中講義で非常勤にきてもらっていたそうで、私のことを聞 き,依頼がありました。これで非常勤の情報が入手できるかもしれません。組合の皆 さんによろしくお伝えください。(元組合員F)

【2】先日は、本(『大学危機と非常勤講師運動』20冊:編注)を手配いただき、あ りがとうございました。斉藤氏を招いての学習会は参加者は残念ながらそれほど多く はありませんでした(このあたりに問題の根本はある)が、参加者にはインパクトも 有り、好評でした。専業非常勤運動と専任教員組合がどのように関っていくのか、い まだに啓蒙の段階なのかもしれませんが(私のところでは)、個人的にも組合執行部 としても絶えず意識していきたいと思います。それではまたお会いできるときに。 (北教大 B校、A)

(7)この部分は、和解条件により削除しました。

(8)第7回コロキウム『21世紀の大学像を求めて』第4回読書会

主催:JSA大学非常勤講師問題会議(首都圏)
日時:2001年2月28日(水)14:30〜16:30
会場:ルノアール(お茶の水駅前店、TEL:03-3291-9069)
交通:JRお茶の水駅西口から徒歩約5分。駅前交番脇の道を西(水道橋方向)に入 る。「池坊お茶の水学院」手前のT字路で(「管工健保会館」と「STARBUCKS COFFEE」の間の道へ)左折、約10メートル歩いて右側)
連絡先:三戸信人、TEL/FAX: 047-389-7660
備考:上掲書の第二部第1章・第2章を取り上げます。参加費は自分のお茶代のみ。

(9)公開シンポジウム『科学研究費と女性研究者』

日時:2001 年3月30日 (金)14:30-17:00
場所:日本学術会議 (地下鉄乃木坂駅下車すぐ) (参加自由、入場無料)
共催:JAICOWS(女性科学者の環境改善に関する懇談会)社会学研連、天文学研連、 教育学研連、家政学研連

    講演者と講演タイトル

  1. 文部省科学研究費補助金の仕組みと問題点  交渉中
  2. 科研費と女性研究者問題  原 ひろ子
  3. 非常勤講師にとっての科研費の問題点     浅倉 むつ子
  4. 姓の表記について    加藤万里子
その後、 討論および要望書の採択(有志によるもの)

【編集後記】

★今年度をもって、鈴木暁編集長が退任します。今後は、研究・教育はもとより、教 育文化ネットワークで、積極的に活動されるとか。2年間のご尽力に感謝の意を表す るとともに、ますますのご活躍をお祈りしたいと思います。

★組合の活動がよく伝わるような、非常勤講師が読んで元気が出るような、そしてト クするような『控室』を作ろう。この願いは実現したでしょうか。皆さんのご意見を お待ちしています。(美)


組合のホ−ムペ−ジ「闘争中の事件」コ−ナ−

当組合では未解決事件のうち、特に悪質な大学・組織をホ−ムペ−ジに載せ、広く世 間に告発しています。現在
(1)東洋大学不当人事(解雇)事件
(2)長岡リリックホ−ル不当解雇事件
(3)帝京大学不当解雇事件
(4)相模女子大学不当解雇事件
(5)筑波大学外国人教員スキルムントさん事件
(6)秀明大学不当解雇事件
 の6件を掲載中。ホ−ムペ−ジアドレス http://www.os.rim.or.jp/~town/univ/univers.html


控室 第38号 付録】


筑波大学外国人教師事件:最高裁へ

   インターネット署名にご協力を!!

   支援署名ホームページ http://users.goo.ne.jp/skirmunt/


 筑波大学の「外国人教師」であったスキルムントさんは、97年7月に突然、外国語 センター長の洲崎恵三氏(現筑波大学名誉教授)に契約の更新拒否を通告されました。 洲崎氏は彼女の白血病の主治医(筑波大学病院)から病状・病歴を聞き出していまし た。彼女は98年3月に地位確認を求めて国を提訴しました。
 一審の東京地裁の判決は、外国人教師契約は1年の契約期間の満了をもって当然に 終了するものであり、解雇制限法理等は適用されないとし、医療情報の漏洩の事実を 審理せずに請求を棄却しました。同判決が圧巻だったのは、人種差別や女性差別を理 由にした更新拒否が司法審査を免れることになってもやむを得ないと言い放ったこと でした。控訴審の東京高裁の判決は、外国人教師との1年契約の合理性を主張し、契 約は3回くり返された程度であり、解雇制限法理等を適用すべき特別の理由は存在し ていないとして、事実審理もせずに請求を棄却しました。
 以下に掲載するのは最高裁に提出した上告理由書です。地裁および高裁の判決は、 国公立大学で1年契約で働いている「外国人教師」が不安定な身分であり、大学や上 司の勝手な都合でいつでも「解雇」可能で、基本的人権さえも保障されていないこと を明るみに出しました。最近、大学の中には、新たに非常勤講師と期間1年の契約書 を取り交わす動きがでています。この控訴審判決を敷衍すれば、非常勤講師の多く も、大学の理不尽な理由によって「解雇」されても、雇用が全く守られないというこ とになります。このような判決は断じて容認できません。

*  *  *  *  *  *
 
 平成12年(行サ)第208号
 
        地位確認等請求上告事件
 
 
上告人  スキルムント・バーバラ
 
被上告人  国
 
 
上告理由書
 
          2001年1月15日
 
 
 最高裁判所 御中
 
  上告人訴訟代理人
 
      弁護士   北 川 鑑 一
 
      弁護士   東 澤   靖
 

1.はじめに

 原判決は、上告人のような外国人教師は、国家公務員法の適用を受けることはない 国家公務員であり、その雇用契約は一応公法上の契約に当たると解されるが、一般の 労働契約と同様、労基法14条、3条の適用を受けるものと解するのが相当である (17,18頁)とする一方で、労基法14条や3条の違反、解雇権濫用法理や更新 拒絶濫用の法理による、本件解雇または更新拒絶の無効を主張する上告人の主張を排 斥した。

 また上告人らは、本件解雇または更新拒絶を行った筑波大学の差別的意図の有無や 更新についての正当な期待権の存在の判断の基礎となる事実を確定するため、上告人 の本人尋問も含む人証の取り調べを求めてきたが、第1審の東京地方裁判所において も、また原裁判所においても、人証の取り調べは一切実施されなかった。

 以上の原判決は、以下の諸点において憲法に違反するものである。

2.解雇または更新拒絶の憲法14条1項違反、憲法13条違反

(1)被上告人の行為

 上告人がこれまで主張してきたように、本件の解雇または更新拒絶を実質的に判断 したのは、当時上告人が所属していた筑波大学外国語センターのセンター長であった 洲崎恵三である。洲崎は、本件の解雇または更新拒絶に先立ち、上告人の了承をとる ことなく上告人の主治医に架電して上告人の病歴・病状というプライバシーに関わる 情報を取得し、上告人の罹患していた「有毛状性白血病」に対し不治のもので余命期 間が2年間であるとの誤解と偏見を持ち、そのような誤解と偏見に基づき上告人の雇 用期間を更新しないとの判断を外国語センターの運営委員会に提案したものである。 これは、「有毛状性白血病」という病名に対する誤解と偏見に基づき上告人に対して 不利益な取り扱いを行う差別行為であった。

(2)被上告人によるプライバシー権の侵害

 対外的に公表されていない自己に関わる情報を正当な理由なく、取得、利用されな い権利は、憲法13条の保障する幸福追求権の一部であるプライバシー権として、憲 法上保護される権利である(肖像権に関する最高裁大法廷昭和44年12月24日判 決)。
 市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下、「自由権規約」という)の17条 は、より端的に、
 1、何人も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法 に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。
 2、すべての者は、1の干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。 と定めて、公権力からのプライバシー権の保護を保障している。そして、医療情報な ど医師の守秘義務のもとに開示が制限されている情報は、まさにプライバシー権の保 護に該当する情報である。

 しかしながら前述のように、上告人の上司である洲崎恵三センター長は、雇用更新 可能性の判断に供するために公の職務の一環として、上告人のプライバシーに属する 医療情報を上告人の同意を得ることなく入手し、その内容を本人に確認することもせ ずに、病状や治癒可能性について偏見と誤解を有したまま、更新拒絶の判断資料とし て用いたものであって、これらの行為が上告人のプライバシー権を侵害する行為であ ることは明らかである。

 なお、被上告人側は、上告人に対する解雇または更新拒絶の理由について、上告人 の業績不足をあげているが、それが口実にすぎず、また、上告人は解雇または更新拒 絶のあった年度中に論文2本という必要業績を提出することが確実で実際にも提出し たが、被上告人によってそのような事情の調査が一切なされないままに解雇または更 新拒絶の判断がなされたことは繰り返し上告人が主張してきたところである。いずれ にしても、被上告人による解雇または更新拒絶の実質的理由が何であったか、という 争点については、後に詳しく述べるように一人の人証も取り調べられることなく、原 判決はそのような実質的な理由を判断することなく、上告人の請求を退けている。

 下級審の裁判例には、私的企業において、本人の同意を得ないHIV検査と雇用主 による情報取得をプライバシー侵害行為であると認め、HIV感染を実質的な理由と する雇用期間途中の解雇を解雇権の濫用であり無効と判断したものがあるが(千葉地 方裁判所平成12年6月12日判決労働判例785号10頁)、この判断の背景には プライバシー侵害や差別禁止など私人間にも間接的に適用される憲法の諸条項が存在 するものと考えられる(なお、同判決の更新拒絶の有効性に関する判断は本件とは事 案を異にするものである。)それゆえ、国立大学によるプライバシー侵害行為と差別 的な取り扱いが存在する本件においては、端的に憲法13条ならびに自由権規約17 条の違反が認められる。

(3)被上告人による差別的取り扱い

 憲法14条1項は、「社会的身分」をはじめとする一切の差別を禁止しているとこ ろ、「社会的身分」は、一般に広く人が社会において占める継続的な地位をさすもの とされている。それゆえ、一定の病気に罹患しているという継続的な地位も、同項の いう「社会的身分」に含まれるものであり、とりわけ、白血病などのように治癒可能 性に関する印象や、あるいはHIVやハンセン氏病などのような感染性に関する印象 が社会的に流布している病名においては、病名に対する偏見や差別を防止すべき必要 性は極めて高いものである。

 また、自由権規約26条も、
 すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保 護を受ける権利を有する。このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚 の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財 産、出生又は他の地位等いかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護 をすべての者に保障する。
と規定し、いかなる理由による差別も禁止しているところである。ここでいう「他の 地位等」に病名による差別が含まれることは、国連文書などで繰り返し確認されてき たが、最近においても、政府代表で構成される国連人権委員会決議1999/49「HIV及び AIDSの文脈における人権の保護」(The Protection of Human Rights in the Context of Human Immunodeficiency Virus (HIV) and Acquired Immune Deficiency Syndrome (AIDS),C.H.R. res. 1999/49, U.N. Doc. E/CN.4/RES/1999/49 (1999). )において、
 実際のものであろうとそう思われているものであろうと、HIVまたはAIDSの地位に 基づく差別は、現存する国際人権基準によって禁止され、そして、国際人権文書の非 差別条項における「又は他の地位等」は、HIV/AIDSを含む健康状態にわたるものと解 釈されるべきことを繰り返し、
Reiterating that discrimination on the basis of HIV or AIDS status, actual or presumed, is prohibited by existing international human rights standards, and that the term "or other status" in non-discrimination provisions in international human rights texts should be interpreted to cover health status, including HIV/AIDS, として確認されているところである。
 それゆえ、筑波大学が上告人に対し、上告人の病名や病状に関する誤解に基づき更 新を拒絶することは、憲法14条1項及び自由権規約26条に違反する行為であるこ とは明らかである。

 被上告人側は、上告人に対する解雇または更新拒絶の理由について、上告人の業績 不足をあげているが、それが口実にすぎず、また、上告人は解雇または更新拒絶のあ った年度中に論文2本という必要業績を提出することが確実で実際にも提出したが、 被上告人によってそのような事情の調査が一切なされないままに解雇または更新拒絶 の判断がなされたことは繰り返し上告人が主張してきたところである。

 そして被上告人による解雇または更新拒絶の実質的理由が何であったか、という争 点については、後に詳しく述べるように一人の人証も取り調べられることなく、原判 決はそのような実質的な理由を判断することなく、上告人の請求を退けている。原判 決は、明言していないが、その判断は実質的には第1審判決が述べるように、

  「雇止めに当たって筑波大学長に男女差別や人種差別などおよそ公序良俗に反す ることが明らかな意図や理由があっても、期限付き契約であるということを理由にそ の意図や理由は全く司法審査を免れてしまうという点があることは否定できない」 (第1審判決52頁)
 との判断に基づくものである。しかしながら、そのような差別的意図や理由に基づ く不利益取り扱いを行うことを憲法14条1項及び自由権規約26条は禁止している のであり、そうした差別に対して司法審査が及ばないとすることは裁判所が憲法や自 由権規約に保障された権利の救済機関であることを放棄するものであろう。(なお人 種差別に関しては、日本が批准する人種差別撤廃条約のもとで、締約国である日本 は、裁判所を含めての差別撤廃義務と、裁判所による効果的な保護と救済とを確約し ているのであるからー2条1項及び6条ー、裁判所が上記のような判断を行うこと自 体、明白な条約違反行為である。)

(4)原判決の憲法違反

 以上の次第で、被上告人による憲法13条及び憲法14条1項違反の行為の判断を 無視または回避してなされた原判決は、破棄されるべきである。

3.外国人教師雇用契約の解釈における憲法14条1項違反

 上告人は、国立大学に雇用される外国人教師は、日本人の教員と異なり期間付雇用 契約という契約形態しか認められていないこと、そして、期間付雇用契約に対しては 原判決がまさにそうであるように解雇または更新拒絶の実質的理由についての司法審 査が原則として行われないこととなり、前述したように「雇止めに当たって筑波大学 長に男女差別や人種差別などおよそ公序良俗に反することが明らかな意図や理由があ っても、期限付き契約であるということを理由にその意図や理由は全く司法審査を免 れてしまうという点があることは否定できない」(第1審判決52頁)こととなるこ と、このことによって、外国人教師の場合、憲法違反を含む不当な意図や理由による 解雇または更新拒絶に対する保護を受けられないことは、労基法3条に違反すると主 張してきた。

 そしていうまでもなく、労働条件について国籍を理由とする差別的取り扱いを禁止 する労基法3条は、憲法14条1項の平等原則と差別の禁止の規範を私人間を含む労 使関係の場に拡張するものである。それゆえ、上記のような労基法3条違反の事実 は、それが国立大学によってなされる場合、直ちに憲法14条1項の平等原則違反と なる。

 なお、上告人は、原判決が誤って整理するように(20頁)、外国人教師にのみ期 間付雇用契約という契約形態をとること自体を直ちに平等原則違反であると主張して いるわけではない。期間付雇用契約に対して裁判所が解雇または更新拒絶の実質的理 由を審理・判断しないという解釈を行う場合には、外国人教師のみが日本人教員と異 なり解雇または更新拒絶における不当な意図・理由の司法審査を免れる結果となるこ とが、平等原則に違反すると主張しているものである。

 それゆえ、原判決が、外国人教師について特殊性や一定の期間ごとの雇用の必要性 判断を述べて、外国人教師の期間付雇用契約を合理的と判断するだけでは(20,2 1頁)、上告人の主張に何ら対応するものとはなっていない。原判決が上告人の主張 を排斥するために判断すべきなのは、外国人教師が期間付雇用契約を余儀なくされ、 かつ裁判所がそれに対して解雇または更新拒絶の実質的理由についての司法審査を行 わないことによって、憲法に違反するような意図や理由によって解雇または更新拒絶 がなされても司法的な救済を受けられないということが、どのように合理化されるの かという点であった。そして、原判決は、この点については、あえて判断を行わない まま期間付雇用契約の合理性のみを述べて上告人の主張を排斥しているものである。

 そして、外国人教師に対してのみ、憲法に違反するような意図や理由による解雇ま たは更新拒絶に対する司法的救済が与えられないことを合理化する理由はおよそ存在 せず、憲法14条1項違反であることは明らかである。このことを看過する原判決 は、破棄されるべきである。

4.原審の事実の未認定及び人証採用拒否の憲法32条違反

 原判決は、本件契約には解雇権濫用法理は類推適用されず、また、更新拒絶は期待 権の侵害や権利の濫用に当たらないとのきわめて短い判断を行っているが、その判断 の前提となるべき上告人と筑波大学との間の雇用契約にいたる経緯や言動、雇用契約 の実態、そして上告人及び他の外国人教師に過去に行われてきた更新の経緯などにつ いて、一切の事実認定を行っていない。また、原判決が「原判決書62頁8行目から 同63頁末行までに記載するところと同旨である」と第1審判決を引用する部分にお いても、そのような実質的な認定は一切なされていない。期間付雇用契約に対する解 雇権濫用法理の類推適用あるいは更新拒絶権の濫用の法理については、すでに最高裁 判所第1小法廷昭和49年7月22日判決が存在するが、同判決においては、従事す る仕事の種類や内容、継続雇用の状況、年次有給休暇の規定、長期継続雇用を期待さ せるような言動の有無と被用者の期待、新契約の手続など原審の詳細な認定を踏まえ て、労働契約に対する当事者の意思や解雇権濫用法理の類推適用の可否についての判 断を行っている。逆に、そのような事実関係についての判断を受けることなく、解雇 権濫用法理の類推適用や期待権侵害・権利の濫用を拒否されることは、もはや法解釈 の問題にとどまらず、裁判において必要とされる事実認定を受けることのないまま救 済を拒否される点で、実質的には裁判を受ける権利を奪われているものである。

 そして、右のような詳細な事実関係について上告人は、第1審からの主張にもかか わらず、証人の取り調べはおろか、原告本人の尋問によって証拠化する機会も与えら れず、裁判所による判断を受けられないままでいるのである。

 以上の次第で、原判決の判断は、憲法に関わる争点を看過し、また憲法に違反する 法解釈のもとになされているものであり、直ちに破棄されるべきである。


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