首都圏大学非常勤講師組合機関紙

『控室』第32号 / 付録

 2000年3月12日 発行

(WWW版:一部訂正)

正式名称:都区関連一般労働組合 大学・専門学校非常勤講師分会


 首都圏大学非常勤講師組合機関紙『控室』第32号
                2000年3月12日 発行
【都区関連一般労働組合 大学・専門学校非常勤講師分会】
【委員長】志田昇 Tel&Fax 0426-27-4420
【郵便振替口座】00140-9-157425 大学非常勤講師分会
【本部所在地】JR山手線・大塚駅・東京労働会館 5F
 〒170-0005 豊島区南大塚2丁目33番10号
       東京労働会館(ラパスビル)5階
 Tel 03-5395-5255 / FAX 03-5395-5139
【当組合の情報について】
 1) http://www.os.rim.or.jp/%7Etown/
 2) http://quoniam.social.tsukuba.ac.jp/union.shtml
本号の主な内容
非常勤講師が病気になったらキャンパス・セクシュアル・ハラスメント −最終回−(3面) ◆ 不当解雇と闘って(5面) ◆ 編集後記(5面) ◆ クリップ・ボ−ド (6面) ◆第5回総会のお知らせ(8面) 付録: 「医療情報入手は職権乱用」 洲崎恵三筑波大学名誉教授の不法行為を認定 / 筑波大学外国人講師訴訟判決下る。


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非常勤講師が病気になったら

スペイン語講師  冨士 祥子

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 病気とは縁がないと思っていた私が去年の6月、 80パ−セントの確率でガンの可 能性があると診断されました。それは夏休み前の授業をあと3、4回残すばかりの時 でした。頭の中が真白になるというのはこういうことかと理解した瞬間でした。当 時、3校、5キャンパスで週14クラスを教えていたので、まずこれらをどうするか ということで頭がいっぱいになったのです。それからは悪夢のような数日でした。し かし、その時点で私はまだ、後期の授業には復帰できると信じていました。それで、 まずは前期分の授業をやりくりすることから始めたのです。病気に対する不安と、大 学当局と学生に対して申し訳ないという気持ちに押し潰されそうになるのをこらえ て、各校の専任の先生方に相談するのが適切だと考え、彼らの指示を仰ぐことにしま した。結局、勧められたとおりにキャンセルしたクラスがほとんどでしたが、1、2 度は専任の先生が私の用意した課題配布等で対応してくださった場合もあり、いろい ろな理由から私が強引に代講の先生を送らせていただいたり、また、他の先生方(非 常勤の先生方で、めんどうを承知で協力してくださった)のクラスに私の学生を引き 受けていただいたケ−スもありました。それでも、ほとんどの中間試験をなんとか作 り上げてお願いしてから、入院、そして手術にのぞみました。

 この時点で最も対応の早かったのはR大学でした。 手術を目前にした私に診断書を 送れといってきました。その時は、これは私の4回の欠勤を事後説明するためのもの かと思いました。が、結果は、給料を1ヶ月分支払わないと通告されました。その時 はじめて、この大学では非常勤の場合、病気であれ事故であれ、1ヶ月以上欠勤すれ ば給与は支払われない、という規定があることを知りました。では、何のための診断 書だったのか、と未だに釈然としません。こういう措置が、精神的にも経済的にも一 番不安定な時期に、しかも非常勤講師にかぎってなされることに怒りを感じます。 が、そのことで、教務も専任の先生方にも疑問を感じる様子はありません。ちなみ に、他の2校の出講案内書を読みましたがこういう規定は見当たりませんでした。

 さて、7月のはじめに手術を受け、 その後半年にわたって抗がん剤治療を受けなけ ればならないと告げられ、後期の授業をあきらめることを余儀なくされました。ここ から、さらに3校への対処に悩むことになりました。やはり、6月の時と同じように 専任の先生方にお知らせし、ご相談しました。R大学とH大学は「退職願い」を提出 するようにと言ってきました。これが従来の規則なのでしょうが、なぜ「休職願い」 ではないのだろうと、順調に行けば今年の新学期から仕事に復帰できるとドクタ−に 言われた私には不思議でした。形式とはいえ、どうも納得がいきません。それでも、 H大学に関しては、各キャンパスの教務課の方や専任の先生方が大変好意的に対処し てくださり、本当に助かりました。幸いなことに後期の代講の方も快く引き受けてく ださり、しかも、ある教授は自ら代講してくださり、その月のお給料が出るように尽 力してくださったほどです。ところが、A大学では、専任教授が外国の方だというこ ともあり、教務課とのコミュニケ−ションがうまくいかなかったとみえ、かなりの混 乱がありました。これは内部に人的問題があり、私が直接自分で教務課に伝えられな かったからでもあります。何か事が起こった場合、内部の人間関係や、仲介する人の 資質によっても私たちの立場は大きく左右されるのです。しかし、この行き違いによ る「どさくさ劇」のあげく、A大学に関しては「退職願い」を出さずに済みました。 ただし、一時退院していた私が最も気分の悪いときの「混乱」で、かなり閉口しまし た。迷惑をこうむっている教務の方々にすれば、こちらの状態に同情する余裕などな かったのかも知れませんが。

 非常勤講師である私には、休職しているこの半年間収入は勿論ありません。 非常勤 というポストには何の保証もないということを改めて実感させられました。国民健康 保険の高額医療費の返還給付分と、親がたまたま掛けていてくれた生命保険に助けら れていますが、もしこれで私が家族を養っている身だったら・・・などと考えると背 筋が寒くなります。一人住まいで楽天的な私であっても、病気が病気だけに再発の不 安を常に抱えて生活しなければなりません。その上、経済的な問題を考えると絶望的 にならざるをえません。

 さて、現在の私はといえば、最後の治療を終えて、 後は定期的な検査をしながら社 会復帰を始めようとしているところです。幸い、今年は前期4コマ、後期は7コマの 授業をいただいています。これは、今の私にとって理想的な展開です。健康を一番に 考えてこれ以上の仕事はお断りした所もあります。こういうことは実に稀で、私のよ うなケ−スは失業する可能性の方が高いと聞きました。でも、こういった仕事が保証 されていたというわけでは決してありません。なんといっても、スペイン語という第 二語学に対する需要がまだ高いことがその一番の理由ではないかと思います。病み上 がりの私を雇用するのはかなりの冒険とも言えるのに、信用してくださる専任の先生 方がいることは事実ですし、そのことに関しては深く感謝しています。が、大学側が 私の教師としての努力や功績を評価してくれた結果とは思えませんし、私のような不 運な講師の復帰を支援してくれているなどということはとうていあり得ません。どち らにせよ、幸運だったとしか言いようがないのです。このように不安定であいまいな 雇用状況の中で、私たち非常勤講師は確固とした保証を得るべきだと思います。一年 間の辞令はその保証を含むべきではないでしょうか。大学側は、非常勤講師に対する 待遇と専任教師に対するそれがあまりにかけ離れているこの不公正な仕組みを見直す べきではないでしょうか。不況が続く中、大学では専任教師の給料はもとより、諸々 の手当ても着実に上がっています。その反面、R大学や、「出来高払い」の某大学の ように弱い立場の者から「搾取」しているとしか思われない大学が未だ存在している のです。

 もうひとつ私にはふに落ちないことがあります。 「退職願い」が受理されて「嘱を 解く」というもうひとつの辞令が届き、「なんて、ごていねいな!」と思わず苦笑い してしまいました。ところが、それだけではなく、引き続き雇用されるために、新し い履歴書と業績表を出すよう言われました。(さすがに写真は要求されませんでした が!)が、なぜ、私たちはこれほどの形式的な手続きを要求されなければならないの でしょうか。私たちがその代償として得るものを考えると、矛盾と不平等を感じざる をえません。

 今回の療養生活を通して、私を常にはげまし、 心から支えてくれたのは他の非常勤 の先生たちでした。学生たちも心配して、手紙を送ってくれたりお見舞いに来てくれ たりしました。春休みに入って彼らは私に会いたいと言ってきます。大変傷ついた一 方、多くの人の好意にどれほど勇気づけられたことでしょう。私が希望を捨てずに明 るく過ごせたのも彼らのおかげでした。特に、私と同じ立場にあって、同じ悩みを持 つ非常勤仲間のおもいやりにはことばでは表せないほど感謝しています。将来、彼ら が私と同じ経験をすることのないよう祈ると同時に、病気になった非常勤講師に対す る条件がすこしでも良くなってほしいと願っています。私たちは今のところ、自らの 置かれた状況をしっかり認識して、危機に備えておくことしかできません。互いに情 報を交換しながら、それでも少しづつ現状を変えていく努力はできます。そのために 共に支え合う事が大事だと思います。今回の私の経験がいくらかでも皆様のお役に立 てたら、と願っております。


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キャンパス・セクシュアル・ハラスメント−最終回−

−キャンパス・セクシュアル・ハラスメントを

               なくすために−

浅野 富美枝

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大学にはセクハラ防止義務がある

 1999年6月23日、男女共同参画社会基本法(The Basic Law on Gender Equality、以下「基本法」と略記する)が公布・施行された。女性差別禁止の法律の 制定を規定した女性差別撤廃条約が採択されてからちょうど20年後、同条約に日本 が批准してから14年後のことであった。

 その「基本法」第3条は、法がめざす基本理念の一つとして<男女の人権の尊重> を掲げている。単に<人権>ではなく<男女の人権>とした理由は二つある。一つ は、「基本法」がめざす社会の実現にはとりわけ性に起因する人権間題が重要である ことを強調したからであり、そしてもう一つは、かつては人権の及ばない領域であっ た性や生殖あるいは家庭といったプライベートな領域での新しい人権の重要性を強調 したからである。セクシュアル・ハラスメントはこの最新の人権にかかわる問題であ る。

 「基本法」はまた、法がめざす社会を創出する責務を負う主体として、国、地方公 共団体、国民の三者を明記している。総理府男女共同参画室が発行した「基本法」解 説パンフによると、ここで言う国民とは、自然人だけではなく、企業や学校、諸団体 などの法人をも意味している。要するに、国公立私立を問わず大学も<男女の人権> を尊重し、セクハラをなくす義務があることを「基本法」は定めているわけだ。

キャンパス・セクハラ防止のための取り組み

 大学におけるキャンパス・セクハラに対する取り組みは、1999年4月1日に施 行された改正男女雇用機会均等法にともなう労働省のガイドライン、人事院規則、文 部省の規程(「文部省におけるセクシュアルハラスメントの防止規程」)により、各 大学に義務づけられた。その結果、昨年夏の時点で全国の約3割の大学でセクハラ防 止ガイドラインが策定・策定中であった(田中かず子「キャンパス・セクシュアル・ ハラスメント、ガイドラインを検証する」『女性労働研究』37号、2000年2 月)。

 労働現場で発生するセクハラは、被害者の個人としての尊厳を傷つけ、能力発揮を 妨げるとともに、事業主側にとっても職場秩序や業務の遂行が妨げられ、社会的にも マイナスイメージとなり、あらゆる意味で不利益となる行為である。そこで1999 年4月に施行された改正男女雇用機会均等法では、防止こそもっとも重要な対策とし て、事業主にセクハラを防止する雇用管理上の配慮義務があることを明示し、(1) 事業主の方針の明確化およびその周知・啓発、(2)相談・苦情への対応、(3)セ クハラが生じた場合の事後の迅速かつ適切な対応の3つの措置を実現するように促し ている。

 キャンパス・セクシュアル・ハラスメントでも同様で、それは学習・教育・研究・ 労働権といった基本的人権を侵害すると同時に、学習・教育・研究・労働環境を悪化 させ、かつ大学の社会的信頼とイメージを傷つけ、あらゆる意味で大学の不利益とな る行為であり、大学はこれを防止する義務を負っている。キャンパス・セクシュアル ・ハラスメントをなくすには<被害者の救済><責任の追求><再発防止=予防措置 >の原則に基づき、まずは(1)実態把握、次に(2)大学側のセクハラ防止方針の 明確化(ガイドライン等の策定)とその周知徹底、(3)パンフや講演、研修などに よる、関連法や規程の周知徹底と防止のための啓発、(4)苦情相談態勢の整備、 (5)セクハラが生じた場合の事後の迅速かつ適切な対応の体制の確立などが必要で ある(詳細を知りたい方は、キャンパス・セクシュアル・ハラスメント全国ネットワ ーク編「ガイドラインの手引き」1999年参照)。

被害者への対応 セカンド・セクハラの防止のために

 筆者はセクハラをめぐる相談を受ける機会があり、そのなかには男性からの相談も 少なくない。最近たてつづけに3件類似したケースを耳にしたので、最後に紹介して おきたい。3人の男性はいずれも、セクハラの被害者となった女性から被害について の相談を受けたのだが、セクハラにたいする無理解と相談の際の対応の不十分さか ら、その後深刻なトラブルに巻き込まれた。

 被害者は、心に傷を負っているにもかかわらず勇気をだして助けを求め、相談者を 信頼して相談する。理解してくれると思ってやっとの思いで話したのに、「彼がそん なことするわけがない、誤解ではないか」とか「挑発的な格好してたのではないか」 などと言われると相談の過程でさらに傷つき、場合によると「相談をしているなかで のセカンド・セクハラ」の状況をうみだす。そこで、相談を受けた場合には被害者の 立場に立って、まずはじっくりと話をきいてやってほしい。もちろん当事者の一方だ けの話では十分な情報を得ることはむずかしく、相談の段階で断定的な判断は本来で きないはずである。しかし、話を十分聞き、傷ついた心を癒すことはある程度でき る。そのうえで、被害者がとるべき道をいくつか提示することが望ましい。

 大阪大学の学生向けセクハラ防止リーフレットには、相談を受けたときのセカンド ・セクハラを防止するための対応の仕方を次のように紹介している。

 「まず、相手の話を最後まで聞いた後、「自分はあなたの味方だ」と被害者を安心 させ、勇気づけてください。「それはあなたの気のせいじゃないの?」「そんな話信 じられない」などと軽率なことは決して言わないでください。被害者は傷つき、悩み 抜いた未、勇気を振り絞ってあなたに打ち明けたのです。それでは相手をますます追 い込むことになります。そして、相談窓口に同行したり、また必要な時には証人にな りましょう。そのさいには被害者のプライバシーを守ることを決して忘れないように してください。」

 立場の弱い大学非常勤講師は、セクハラを口実とした雇い留めを受けやすい。セク ハラがらみの無用なトラブルに巻き込まれないためにも、また自分の立場を守るため にも、まずはセクハラについてしっかりと勉強していただきたい。そして同時に、セ クハラ発生の根底にある大学の閉鎖性と権力構造、差別構造を解消し、その意味で大 学のラディカルな民主化を追求してほしい。

(編集者註:今回をもちまして「キャンパス・セクハラ」の連載を終了します。)

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不当解雇と闘って

後藤 和子

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 丁度1年前の3月6日、29年間非常勤講師として勤務していた短大から解雇通知を 受け取った。後に相談した弁護士が、「これで解雇通知の積もりでしょうかね。よも や、あれは解雇通知ではなかったと言い出すのではないでしょうね。」と発言した、 長年の勤務に対する謝意と今後の発展を祈念するという内容のものであった。うろ覚 えの労働法で、この時期の突然の解雇は有り得ないと思い、六法全書を取り出して法 に抵触している事を確認し、更に労働法の書籍を求め、労働契約更新の拒否(雇止 め)にも抵触している事を調べ、学長宛に講義目的と内容を記し、解雇については不 当と思われるので、異義申立をしたいとの文書を送った。数日後、教務部長と学科長 が訪ねて来て、私の講義と学生の間にギャップがあるので、1年間、間が空く事にな るが来期から新設の専攻科で講義を担当するという事で了解して欲しいとの説明があ った。取り敢えず来期の事は確保したものの、1年間のブランクに対する補償はない 訳で、横暴許し難く、以前新聞で目にしていた、旭川のギャラガーさんの記事を思い 出し、インターネットで関連の記事を取り寄せ、彼女に担当の弁護士の紹介を依頼す る手紙を書いた。彼女からはすぐにメールが、御主人からは電話と首都圏大学非常勤 講師組合の資料が添付されたメールが入り、法的手段以外にも可能性がある事を知っ た。メールの発信元に相談のメールを入れたところ、志田委員長を御紹介頂き、組合 を通じての交渉をお約束頂いた。

 専門分野の学外での活動で遅れを取る度、学科長の嫌がらせが続き、卑劣な人物で ある事は充分承知していたので、3月の口頭の約束を文書化しようと、教務部長宛に 来期の講義の準備を口実に担当科目、講義目標、持ちコマ数等を尋ねる文書を送った が梨の礫、電話を入れても答えを先送りして埒があかず、委員長からは交渉の時期と の連絡を頂いて居り、仕方なく学科長に電話を入れたところ、そんな約束をした憶え はないという返事、すぐに学長宛に組合による交渉を知らせる文書を出して交渉文書 をお送り頂いた。1ヶ月後に出た回答文書は、法の認識欠如、虚言を取り繕う矛盾が 散見するお粗末なものであった。その後2回の文書をお送り頂き、私個人からも学長 と新しい窓口となった事務局長に文書を送り、11月末、以前の持ちコマ数と、1ヶ月 分の補償を確約する文書を受け取った。厄介な紛争に御助力を頂いた志田委員長に改 めてお礼を申し上げたい。

 来期の担当科目のSYLLABUSも提出し終えた現在、女性しか担当出来ぬ教科以外は全 て男性がポジションを占めながら性差別はないと言いつのり、他学から青田刈りとの 批判を受けながら、学生を掻き集め、学力低下が問題になっている大学が、どのよう な出方を示すか、しっかりと見据えようと思っている。


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◆編集後記◆

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■「週刊朝日2月11日号」の記事「大学非常勤講師のリストラ地獄」に対する読者か らの次のような感想が2月25日号に掲載されました。「大学でもリストラ地獄なんて あったんですね。非常勤講師というと、言葉の響きから自由で優雅な知識人というイ メ−ジがあります。それが生活保護を申請するほどの惨状だとは。考えてみれば不況 プラス少子化で、一般企業以上にリストラの嵐が吹き荒れてもおかしくない。ただ、 専任教員にまでリストラ解雇が及ばないのだから、まだ恵まれています。高校レベル の学力も身についていない学生のために非常勤講師を活用するのだとしたら、おかし な話です。なぜなら、大学は真に学びたい人が行くべきだからです。そういう点で は、大学も大々的にリストラしてしまったほうが子供たちのためにいいような気がし ます。非常勤講師のみなさん、厳しい現実に負けずに活路を開いてください。」
■前号でお知らせしたように、待望の第二著作『大学危機と非常勤講師運動』が発売 されました。当組合には購読申し込みが多数届いています。この機会に『大学教師は パ−トでいいのか』を合わせて申し込まれる方もいます。『控室』編集部では、この 二著作並びに組合宣伝ビデオの感想を募集します。ご感想の宛先は、下記クリップ・ ボ−ド(1)の『控室』原稿宛先と同じ【E-Mail】mkclara@pastel.ocn.ne.jp  です。どしどしお寄せ下さい。
■1月下旬のある日、ある法律事務所主催のシンポジウムに組合本部書記として参加 しました。そこでの発言を聞いて、ある大学の不当解雇撤回を求めた団体交渉のこと を思い出しました。団体交渉の席上、大学側事務長は「解雇の『雇』とは何か。解雇 の『雇』とは雇用の『雇』のことであり、非常勤講師とは雇用契約を結んでいるわけ ではない。非常勤講師とは委嘱関係にあるのだから、『嘱を解く』と言っているので ある。」などと主張しました。確かに非常勤講師には雇用保険の適用もなく、労働省 の職業訓練給付制度を利用することもできません。国会では、雇用情勢の安定を求め て、欧州各国にあるような「解雇規制法案」の提出・審議が求められていますが、法 の盲点に足をすくわれないようにするために、組合でも法律対策を行う必要があるの ではないか、と実感しました。

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クリップ・ボ−ド

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(1)『控室』原稿を募集します!

★組合員か否かを問わず随時受けつけ。掲載段階で匿名可(連絡先は必ずご通知のこ と):プライバシ−厳守;電子メ−ルによる原稿を歓迎。短い記事・通信の類は送信 者に断りなく『控室』読者の声などとして匿名で掲載することがあります。原稿送信 先(編集担当者宛)は次の通り。
【E-Mail】mkclara@pastel.ocn.ne.jp
【FAX】042-593-0302

(2)公募情報などの収集・配布

★大学教員等の公募情報を電子メ−ルで送信中。受信希望者は下記まで。但し、当方 の都合による遅れ・中断・中止あり。公募の情報/情報源情報を下記連絡先にお寄せ いただければ幸いです。
【E-Mail】s-kkch@pa2.so-net.ne.jp
★ 公募情報も含め当組合に関する現在のURL:
quoniam.social.tsukuba.ac.jp/union.shtml
 ないしは<組合本部>
 http://www.os.rim.or.jp/~town/

(3)組合関連−現勢・雑報−

★当組合の現勢は149名。組合加入用紙を配ってドンドン仲間を増やしましょう。経 費節約と宣伝範囲拡大のため、手渡しや非常勤講師用メ−ルボックスへの投函などで 『控室』を配布できる方は、FAX:0426-27-4420 まで、送付先(配布者の住所・氏 名など)、配布する大学(学部)・学校名,配布部数をお知らせ下さい。運動の輪を 広げるため可能な方は、所属学会・研究会等々で宣伝や支援要請など試みて下さい。
★「就職希望調査票」未提出者は担当者まで!
★『大学教師はパ−トでいいのか 非常勤講師は訴える』(定価1200円、組合特価 1000円)普及に1冊でもご協力いただける方はまで!

(4)『控室』読者の声

【1】度々「控室」を読ませていだたき皆様のご活躍、ご奮闘に頭の下がる思いでお りました。そして陰ながら感謝しておりました。・・・
 非常勤講師の直面してきた問題はどれも身近で、やりきれない思いで読ませていた だいておりますが、東洋大学の鈴木先生の件は特に他人事とは思えません。語学の教 授に関してはいつも、非常勤講師が、専任の先生方の無関心で、いいかげんなやりか たの「尻拭い」をさせられている感があります。その上どのように熱心に教えても、 どのように学生に支持されようとも、なんの評価もされず、ただただコマを埋めてい れば良いのだ、と知る時の虚しさから解放されることは今までありませんでした。・ ・・
 ・・・私の場合は幸い、給料制ですので、いまだに「出来高払い」制(第29号) があるとは驚きました。湘南工科大学の件は信じがたいほど屈辱的な例ではありませ んか。文部省は何をしているのだろう、と考えてしまいます。この不景気の中で、専 任教師の給料、数々の手当てなどが上がっている分、弱い立場の者から「搾取」して いるとしか思えません。来年度からの非常勤講師の待遇が改善されることを心から願 っております。
 何もできない自分が情けないのですが、せめてちよっぴりカンパさせていたださま す。鈴木先生の提訴にいくらかお役に立つといいのですが。わずかでお恥ずかしいで すが、気持ちだけ・・・いつか大型カンパができるようになると信じております。お 許しください。
 皆様のご健康とご多幸をおいのりしております。感謝をこめて・・・(F)

(5)『控室』電子メール版の読者の声

【1】都大教の・・・Tです。いろいろ情報をありがとうございます。都大教では首 都圏大学非常勤講師組合への支援を決めていますので、出来るだけの支援をしていき たいと思っています。ただ、金銭の絡む事項については幹事会の承認が必要となるた め、必ずしも充分なことはできませんのでご了承下さい。具体的にどのようなことを すればいいかをいづれおたずねしたいと思います。東京労働会館へは時々用事があっ て行っています。また、個人的には冊子の購入、争議の支援等全面的に支援します。 冊子の購入は今度労働会館へ行ったとき都区一般へ伺い申し込みます。坪井先生(編 集者註:徳島文理大学の不当労働行為で地労委で審査が行われています)の支援につ いては会への入会をさせていただきたいと思います。とりあえず、メ−ルのお礼と若 干のご連絡まで。(T)

(6)『大学危機と非常勤講師運動』購入申込者よりのメッセ−ジ

【1】メーリングリストで拝見させていただきました。『大学教師はパートでいいの か−非常勤講師は訴える』は持っておりますので、新しいものだけ購入させてくださ い。journalist(F)
【2】メーリングリストで拝見しました。このような組合活動があるとは,まったく 存じ上げませんでした。私も都内の大学で非常勤の語学教師を務めており、たいへん 関心があります。ぜひ以下の2冊を送ってください。(H)
【3】『控室』ありがとうございます。全文読みました。私も出来ることはしようと 思います。とりあえず、今度の新刊の普及ということで、活動しようと思います。 (S)
【4】頑張っていきましょう。(T大学非常勤講師)
【5】ギャラガー裁判については、さる2月1日、旭川地裁で不当判決が下りまし た。大学生き残り策として、「人事の流動化」すなわち解雇は認められるという経営 側(下手な経営)のみに立った不当なものでした。『ギャラガータイムス』など資料 は、斎藤さんあてにお送りしましたので、目を通していただけると幸いです。今度は 高裁で闘うことになりました。いずれ署名運動などおこないますので、今後ともよろ しくお願いいたします。(ギャラガー先生を教壇にもどす会・事務局長)
【6】『控室』お送りいただきありがとうございます。(合計5冊)お願いします。 それから是非ビデオ「フォーラム非常勤講師問題を考える」を下さい。よろしくお願 いします。(K)
【7】早く送って欲しいとご無理をお願いし申し訳ありませんでした。考えてみれ ば、・・・からご送金しても良かったんですのに!  すみません。夕方つきました。K氏、私、私の妹(H)より各2千円のカンパを加 えさせていただきます。少しでもお役に立てたら幸いです。本、ビデオ、ありがとう ございました。取り急ぎ、お礼まで。(F)
【8】拝復/その後どうしているかなあと思っていましたが、相変わらずお元気に活 躍しているご様子、安心しました。献本、有り難うございました。小生、現役も退 き、余り関心も湧かなくなりましたが、生活大変でせう。その中で大いに張り切って やっている様子、敬服いたします。最近、老人病の一つ、白内障を患い、書いたり読 んだりするのに少々苦労するようになりました。書店に入る楽しみもなくなりまし た。でも元気ですからご安心を。呉々もお元気で。早々(K)

(7)最近の組合運動関連出版物等

★文献など何かご存知の方は編集担当者までお知らせ下さい。

(8)当組合員の最近の学術出版等

★掲載希望の組合員の方は『控室』編集担当者までお知らせ下さい。

(9)当組合のホ−ムペ−ジ「闘争中の事件」コ−ナ−

 当組合では未解決事件のうち、特に悪質な大学・学校をホ−ムペ−ジに載せ、広く 世間に訴えています。現在

  1. 東洋大学不当人事(解雇)事件
  2. 長岡リリックホ−ル不当解雇事件
  3. 帝京大学不当解雇事件
  4. 相模女子大学不当解雇事件
  5. 筑波大学外国人教員スキルムントさん事件
  6. 秀明大学不当解雇事件
の6件を掲載中。ホ−ムペ−ジアドレスは
http://www.os.rim.or.jp/~town/univ/univers.html

(10)首都圏大学非常勤講師組合 第5回総会のお知らせ

日時:3月26日(日)午後1時〜5時半頃まで
場所:東京労働会館地下1階会議室
議題:1)平成11年度の活動報告  2)平成12年度の活動方針案
   3)会計報告と会計監査結果  4)執行委員人事

 組合員以外の方も参加できます。また、総会後恒例の懇親会を開きますので、お気 軽に参加して、議論・交流を深めましょう。なお、会場の地図が必要な方は本部まで ご請求下さい。



首都圏大学非常勤講師組合機関紙

『控室』第32号付録

 2000年3月12日 発行

(WWW版:一部訂正)

正式名称:都区関連一般労働組合 大学・専門学校非常勤講師分会


 首都圏大学非常勤講師組合機関紙『控室』第32号付録
                2000年3月12日 発行
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【委員長】志田昇 Tel&Fax 0426-27-4420
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【本部所在地】JR山手線・大塚駅・東京労働会館 5F
 〒170-0005 豊島区南大塚2丁目33番10号
       東京労働会館(ラパスビル)5階
 Tel 03-5395-5255 / FAX 03-5395-5139
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医療情報入手は職権乱用

洲崎恵三筑波大学名誉教授の

不法行為を認定

筑波大学外国人講師訴訟判決下る

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筑波大学外国人教師であったスキルムント氏が、1998年1月に、当時上司で外国語 センター長であった洲崎恵三氏(現獨協大学非常勤講師、筑波大学名誉教授)に対し て、医療情報を不法に入手して「解雇」したのはプライヴァシーの侵害等であるとし て損害賠償を求めて水戸地裁土浦支部に起こした民事訴訟の判決が、2000年2月 10日、同裁判所であった。

国家賠償法の壁

被告洲崎恵三氏は訴訟において、医師への架電のみを認めたが、特別な医療情報は 入手していないし、ましてやスキルムント氏の面前で、「医師は2年だと言ってい る」との余命告知はしたことはなく、この事件はすべてデッチあげ、捏造であると主 張していた。証言台においても、宣誓の上、同じような供述を堂々と行い、尋問にあ たった原告側弁護士を大声で「誣告だ」と罵倒していた。

しかし、野村高弘裁判官は判決において、被告洲崎恵三氏が地位を利用して、スキ ルムント氏の白血病の主治医(筑波大学病院講師)から医療情報を入手したと認定 し、そしてこれはプライヴァシーの侵害であり、不法行為が成立すると判示した。事 実上、これは、洲崎氏が刑法上の犯罪である偽証罪をも犯したことを明らかにするも のであった。しかし同裁判官は、国家賠償法を根拠に、公務員である被告洲崎恵三氏 は、職務上行った違法行為によって加えた損害に、個人としては民事上の責任を負わ ないとして、スキルムント氏の請求を棄却した。これは、洲崎氏の違法行為を原因と して、国家を相手に損害賠償を請求すれば認められることを意味する。

医師への架電目的は医療情報の入手

被告は、答弁書や準備書面で、医師への架電の目的は、雇用更新の判断材料とする ためではないと主張していた。原告が雇用更新された場合に、再び休職しては困るの で、穴埋めのための非常勤講師とその枠の事前の確保が必要となるか否かを判断する ためのものであった、という。

これに対して裁判所は、被告の主張を退け、契約更新の判断材料の取得が架電の目 的であった、と認定した。この点においても、被告が虚偽の陳述と偽証のかぎりを尽 くしたことが明らかになった。

医療情報の中身

入手した医療情報の中身について、被告は当初、「原告の病状は非常に安定してい るが、病状の変化が起きるかも知れないし、起きないかも知れない、という程度のも のであり、これは新たな知見を加える特別な情報ではない」と主張していた。その 後、主治医の証言にあわせて、入手したのは「2年はだいじょうぶ、しかし、人間の 健康のことは神様しか知らない、というものだった」と主張を変えた。

これは、入手した情報は2年は大丈夫というものであったから、2年契約の更新の判 断に使えるものではなく、したがって、原告の雇用契約の更新拒否の理由は、健康問 題にではなく、別の理由、すなわち、研究・教育業績の不足にあったとする主張に都 合がいいと洲崎氏が気付いたからであった。

これに対して裁判官は、被告洲崎恵三氏が、職権を濫用して筑波大学病院の医師か ら、「原告の病状は安定しており、2年間はだいじょうぶと思うが、保証はできな い」「原告はヘルペスに罹患しており、毛状性白血病は以前からあった病気である」 などの医療情報を入手したと認定した。さらに、裁判官は、主治医が、その際、原告 の病気に対して必ずしも楽観的見通しをもっていたわけではなく、原告には治療が必 要であることなどを洲崎恵三氏に告げていたことも認定した。

少し複雑だか、解説するとこうである。医師は不用意にも洲崎氏に、この白血病は 発見される以前からあったものであり、その証拠としてスキルムント氏には以前から 口唇ヘルペスがあったことを伝えた。これを聞いた洲崎氏は、スキルムント氏の白血 病は「再発」であり、白血病を隠して筑波大学に就職したと怒り、「解雇」の理由の 一つとしたわけである。ヘルペスが白血病の一種であり、今度の白血病は「再発」だ と誤解したというのは、全く笑い話にもならない。ヘルペス・ウィルスにはヨーロッ パ人の過半数が感染しており、風邪や疲労など、体力の低下した時、発疹が出てく る。

医師はさらに洲崎氏の「2年は大丈夫か」という問い合わせに「2年は大丈夫だが、 保証はできない」と答え、いずれ治療が必要になる旨の回答をしてしまった。おそら く、いつ頃、入院させるか、その予定、期間等についても回答したと思われる。これ を聞いた洲崎氏は、翌年4月からの2年の契約期間の健康を医師が保証していないもの と理解し、「解雇」を決定したのである。

医師も責任逃れのため、偽証した疑いが濃いが、この点は省略する。なお、スキル ムント氏は外国で投薬治療を行い現在完治している。筑波大学病院の医療水準が世界 から大きく遅れ、同氏に適切な医療を施すことができなかったこと、しかも勝手に教 職員の医療情報を聞き出したり、漏らしたりこと、このように筑波大学のいわば「ひ とり相撲」の犠牲者がスキルムント氏であった。

裁判には常識は通用せず

洲崎氏がスキルムント氏に対して更新拒否を通告し、医師から得た情報として余命 は2年だとの告知をしたのは97年7月であった。問題になっていた次回の契約期間は 98年4月からの2年間であった。

洲崎氏が、医師から、2年は大丈夫と思うが保証はできない、(入院)治療も必 要、との医療情報を得たなら、それを使用して更新拒否の決定をしたことは、誰にで もすぐに分かろう。医者が保証したのは97年7月からの2年間であり、98年4月からの 2年間ではないからである。その間に、入院・治療がなされれば当然にも授業に穴が あいてしまうことになる。

しかし、裁判官には、これが分からないようだ。分からないふりをしているのであ る。なぜなら、医療情報の違法な入手と更新拒否との因果関係を認めてしまうと、ス キルムント氏が、国家を相手に損害賠償請求訴訟を起こした場合、国家は同氏に2年 間分の給与を払わなければならなくなってしまうからである。これを阻止するため に、裁判官は、「因果関係を認める足る証拠はない」などと判示したのであった。

非常識(その1)

97年7月10日、洲崎氏は、スキルムント氏に、「余命2年」の告知をした。もちろ ん、洲崎氏は、そんなことは言っていないと偽証した。裁判官は、洲崎氏がそのよう な「不穏当な発言をした」と認定した。ところがである。このやりとりは、スキルム ント氏の夫と洲崎氏との激しいやりとりの中でのことであり、「人格権を侵害したと 評価することは疑問である」と判断して、この発言の違法性を認めなかった。

裁判官は、判決の中で、洲崎氏が職権を濫用して医療情報を入手したことに対する スキルムント氏の「精神的損害」を認定したというのに、このひどい発言がスキルム ント氏に与えた「精神的損害」を理解できなかった。スキルムント氏が苦しんだの は、医療情報の漏洩という事実以上に、洲崎氏のこの発言であり、このトラウマは今 でも続いている。同氏は当時、白血病に罹患していることは知っていたが、自分の余 命が2年だということは告知されていなかった。定期的に血液検査を受け、免疫力の 低下を指摘されていたが、病気のことはなるべく忘れようとし、仕事の遅れを取り戻 そうと時には研究室に泊まり込んで論文の執筆等をしていた矢先の解雇通告と「余命 告知」であった。弁護団は、この点をこれから起こす国家賠償請求訴訟で争う予定で ある。

非常識(その2)

「解雇」通告に先立つ97年6月19日、ドイツ語教員会議の席、スキルムント氏は退 席させられ、この席で、同氏が白血病に罹患していることが公表された。証言に立っ た上田浩二、井上修一両教授は、自分達は言っていない、しかし、皆すでに知ってい たのだから、会議の席で病名が出たかも知れないなどと、出席していた助教授や講師 に責任を転嫁する供述をした。洲崎氏も、この席で、医者に電話を架けたこと、医者 はスキルムント氏が何年生きるか分からないと言っている、などと発言していた。

裁判官は、この問題に対して、この会議の席で病名の公表が同僚教授らによって行 われたという認定を下した。すなわち、井上修一教授等が偽証したことを事実上認め た。しかし同裁判官は、これはプライヴァシーの侵害にあたらないと判断した。理由 は、この会議は、ドイツ語教員内部の会議であり、秘密が漏れる心配がないこと、さ らに多くの教員がすでに知っていた事実であるからというものであった。洲崎氏も、 さらに行政訴訟における筑波大学も、スキルムント氏が前年に休んだ際の代講を依頼 する時、白血病に罹病していることを教員に知らせる必要があったと主張している。

しかし、これほど馬鹿げた主張はない。この論法でいけば、エイズであろうと、性 病であろうと、どんな病気が原因であろうと、代講を依頼する場合には、本人の病名 を告げることは許されることになってしまう。代講を依頼する際に、必ずしも病名を 明らかにすることは必要ではない。白血病は秘密が守られるべき病気である。病名が 知らされなければ代講を拒否するなどという同僚などいようはずがない。弁護団は、 この点についてもこれから起こす国家賠償請求訴訟で争う予定である。

洲崎氏のコメント

この判決に対して、洲崎氏は、筑波大学広報課を通じて次のようなコメントを出し た。「妥当な判決である。」自分が職権濫用をしての医療情報の入手という違法行為 や余命2年という「不穏当な発言」をしたことを裁判所によって認定されてしまった にもかかわらず、このコメントである。自分が何をしでかしたのかという自覚が全く ないのである。

筑波大学

筑波大学(=国)は行政訴訟の答弁書や準備書面で、スキルムント氏が主張するよ うな人権侵害はなかったと主張してきた。昨年12月には、スキルムント氏が98年11月 に提出していた陳述書に反論する準備書面を初めて提出した。その内容は、洲崎氏が 水戸地裁において主張したものとほとんど同じであった。裁判所という第三者機関 に、筑波大学病院から医療情報が漏洩したこと、それは外国語センター長である洲崎 氏の職権濫用によって起こったものであること、彼が「不穏当な発言」をしたこと 等、筑波大学の人権侵害行為が認定されたというのに、いまだに筑波大学はスキルム ント氏に謝罪していない。

そもそも、当初からスキルムント氏の訴えに耳を貸し、公正な調査委員会を設置し て事件の処理にあたっていたならば、筑波大学はこんな恥をかかずにすんだはずであ る。スキルムント氏は提訴する前に、赤羽武(あかはたけし)教育担当副学長に、洲 崎氏の人権侵害行為を訴えたが、同副学長は、これは私的な話合いだとして訴えを無 視した。その後、北原学長に、洲崎氏の懲戒処分の申し立てを行ったが、これも無視 された。それどころか、筑波大学は訴訟係属中に、洲崎氏に、名誉教授の称号を与え ていた。

最近では、神奈川県警や新潟県警などが事件のもみけしや虚偽の発表を行ったこと が問題になり、世論の批判を浴びて漸く関係者の処分がなされることになったが、筑 波大学の体質もこれに似たりよったりである。

3月23日の東京高裁の公判において、国(=筑波大学)がどんな主張をするか誠に「楽 しみ」である。

今後の方針

スキルムント弁護団がこの訴訟において狙ったのは、先ずは、洲崎氏による人権侵 害行為の事実認定を勝ち取ることであり、したがってこの判決によって一応の目的は 達成された。弁護団は、この事実認定を、教員としての地位確認を求めて国を相手に 起こしている行政訴訟(現在、東京高裁に係属中)に持ち込み、ここで、医療情報の 入手と「解雇」との因果関係を立証することに全力を尽くす予定である。

洲崎氏の人権侵害行為に対する国家賠償請求訴訟は、いずれ起こす予定である。

(スキルムントさんを支援する会)

抗議先:茨城県つくば市天王台 1-1-1    筑波大学長:北原保雄

支援カンパ振込先:郵便振り込み 00150-1-79286(スキルムントさんを支援する会)


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