『控室』第29号

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機関紙『控室』第29号(一部訂正) 1999年11月21日 発行

首都圏大学非常勤講師組合(都区関連一般労働組合 大学・専門学校非常勤講師分会)

−委員長:志田昇−Fax: 0426-27-4420

−郵便振替口座−00140-9-157425/大学非常勤講師分会

<本部所在地>JR山手線・大塚駅・東京労働会館(ラパスビル)5F

170-0005豊島区南大塚2丁目33番10号 東京労働会館5階[地図]

Tel:03-5395-5255/FAX:03-5395-5139

<当組合について>

(1)http://quoniam.social.tsukuba.ac.jp/union.shtml

(2)http://www.os.rim.or.jp/%7Etown/

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−−−本号の主な内容−−−

 

* 湘南工科大:1年遅れで非常勤講師に未払い賃金の支払いを約束(1面)

* 奨励研究(B)申請書類頒布開始(3面

* <連載>キャンパス・セクシュアル・ハラスメント−その2−全国ネットワーク第5回全国集会開催(4面

* 編集後記(6面

* クリップ・ボード(6面

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<湘南工科大>

 

1年遅れで非常勤講師に未払い賃金の支払いを約束

 

−東京都地方労働委員会の斡旋団交が妥結−

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 首都圏大学非常勤講師組合は、湘南工科大学の非常勤講師の待遇を改善させるために大学側と団体交渉(団交)を積み重ねています。昨年(平成10年)10月15日に第2回の自主団交(「控室」第21号参照)が終了した後、組合側は直ちに大学に対して3回目の交渉を申し入れました。ところが、大学側は日程についてなかなか回答せず、12月9日になって、「年内は忙しくて無理、1月も入試等で忙しくて無理、遅くとも2月の終わりまでには開催する」などと回答してきました。団交は暇な時にやればいいというものではありません。そこで、組合側は、東京都地方労働委員会(都労委)に団交促進の斡旋を依頼しました。平成11年1月7日(木)に、東京・新宿の東京都庁内の都労委で、都労委斡旋による最初の団交が実現しました。その後、7月14日(水)まで合計8回にわたり話合いを続けてきました。その結果、大学側と労使協定(第1表)がまとまったので報告いたします。

 

月給制への復帰を要求!

 

 まず、組合側は、(1)非常勤講師に対する給与の支払い方法を現在の出来高払い制(実際に行なった講義回数×単価で給与を決める制度;講義回数は月によって異なるので給与も月によって凸凹がある)から月給制に戻してください、と要請しました。出来高払い制が不合理である理由として、組合側は主として次の二つの理由をあげました。(i)非常勤講師の自己都合による休講は1度もなくても、年間の講義回数は国民の祝日や大学行事のために30回に達していない(第2表を参照)(年30講義というのは『大学設置基準』で定められた意味のある回数です。また、月給制をとる私立大学でも年間30講義あるとみなして(実際はないが)賃金を決めています)、国民の祝日や大学行事のために休講になった分の給与は支払わないという措置は非常勤講師が自己都合で休講した場合と同じ措置である、専任教員は固定給なので祝日や行事で何度休講になっても給与が減ることはないのに、非常勤講師だけ給与を減らされるというのは非常勤講師に対する差別である。(ii)非常勤講師は、ある科目を1年間かかって学生に教授するという仕事を請け負っているのであり、年間30回の講義があってもなくても一定の賃金を得るべきである。

 

出来高払い制に固執する大学当局

 

 こうした組合側の要請に対して、大学側は、異常に出来高払い制に固執し、「月給制には戻さない。そのかわり、平成11年度は年間30回の講義回数を保証する。」と回答しました。確かに11年度は、どの曜日でも講義は28回、試験は前期、後期それぞれ1回づつ、合計年30回の出講回数が確保されています。このシステムについて、組合側は次の点を大学側に質しました。(i)平成12年度以降もこのようなシステムでいくのか、(ii)試験期間を含めれば確かに年間30回の講義回数が用意されているが、試験期間に試験をやることを想定されていない科目、たとえば、「実験」、「コンピュータ演習」、「体育実技」などのような科目は、依然として年間30回の講義回数が保証されていないではないか。こうした質問に対して、大学側は次のように回答しました。(i)については、「平成12年度以降のことはまだ何も決まっていない」、(ii)については、「試験期間に試験をやることを想定されていない科目でも、試験期間中に出講し、試験に代わるレポート等を学生に課してそれを採点、評価すれば、1回分の賃金を支払う」と答えました(第1表の協定書第3項参照)。「実験」や「コンピュータ演習」は2コマ続きで半期で完了する科目ですが、半期で14回の授業がありますから28コマ分の賃金、それに加えて「試験期間中に出講し、レポート等を学生に課してそれを採点、評価」すれば1コマ分の賃金、合計29コマ分の賃金が支払われるというわけです。

 

出来高払い制とるなら「大学設置基準」通り年間30講義やれ!

 

 さらに組合側は、(2)過去8年間続いた出来高払い制の不合理な点に言及し、次のように大学側の責任を追及しました。(i)昨年(平成10年)9月18日(金)、19日(土)は、大学の建物工事のため休講になっている。これは明らかに大学の都合である。大学の都合で休講となった場合は賃金を支払うと『ホ講師の皆様へ』という手引きの中に書いトあるのに未だに払っていない。この未払い賃金を直ちに支払うように求めました。また、(ii)<1>『大学設置基準』第21条(1単位の科目に対して何時間の授業をしなければいけないかが明記されている)を忠実に読んでみると、4単位の授業科目は年間30回の講義を確保しなければいけないことになっている。しかも、<2>大学側は、平成3年度に現在の出来高払い制に移行する際、年間30講義あることを念頭に置いて前年度の賃金を上回るように出来高払い制での賃金を決めた、と言っている。さらに、<3>『非常勤講師の皆様へ』という手引きの中でも「年間の講義数は、30講義とし・・・」と明記してある。以上の<1>〜<3>より、それならどの曜日でも確実に年間30回の講義を設定するのが大学としての義務である。曜日によっては年間30回の講義を設定できなかった(第2表参照)のは大学側の責任である。年間30回の講義を設定していたとしたら非常勤講師が当然得ていたであろう賃金と実際に支払われた賃金との差額を未払い賃金とみなして、これも支払うように求めました。

 

建物工事による休講分だけ今から賃金支払う(1年遅れ)

 

−大学側、非常勤講師への支払いを減らそうとして取り引き−

 

 こうした組合側の要請に対して、大学側は次のように回答しました。(i)については、「昨年9月18日(金)、19日(土)の工事については、金曜日、土曜日に授業を持っていた全非常勤講師に今からでも給与を支払う用意がある。ただし、過去の未払い賃金はこれだけで、(ii)の要求は引っ込めてもらいたい。これを引っ込めないのなら9月18日、19日の分の賃金も支払うことはできない」などと取り引きを持ち出してきました。(ii)の<1>については、『大学設置基準』第21条には全然ふれず、「『年間30講義ありき』という考え方は間違いだ、『年間30週ありき』が正しく、30週の中には祝日や大学行事で授業がつぶれることもあり、30回の講義が設定できない場合もあるのは当たり前だ」などと述べました。<2>については、「年間30回の講義を念頭において出来高払い制での給与額を決めたが、平成3年度は年間27.6回出講すれば前年度の賃金を上回るからいいではないか」などと述べました。<3>については、「『非常勤講師の皆様へ』という手引きは総論である。各論としての学年暦と個人名の入った委嘱状を見れば、実際に年間30講義ないこと位、始めから非常勤講師各人がわかるはずだ」などと述べました。

 

祝日や大学行事で休講となったのは非常勤講師の責任か!?

 

−納得したわけではないが妥結の道を選択−

 

 <1>については、『大学設置基準』第21条には年間授業数がはっきり明記されているのですから、ここは第21条に則って考えるべきです。<2>についても、年間30講義を想定して給与を決めたのなら27.6回でもいいだろうということにはなりません。<3>についても、「年間30講義とする」と言っておいて年間30講義にしないのは大学側の落度です。そもそも出来高払い制をとるなら、『大学設置基準』通り年間30講義を設定し、非常勤講師の自己都合で休みになった時以外は確実に賃金を支払うのが当たり前です。30講義に満たない分の給与は払わないというのでは、祝日や大学行事で授業ができなかったのは非常勤講師の自己都合で休講になったと言っているようなものです。もしそうなら祝日や大学行事のある日に授業を割り振った大学側の責任の方が重いと言うべきでしょう。大学側の言い分は全く不合理ですが、斡旋団交も長期にわたり、組合側にも斡旋委員にも疲れが出てきましたので、もう終了しなければならなくなりました。そこで当組合は、第1表のような協定書を交わす決心をしました。第1項(昨年9月18、19日の分の給与を今から支払う)を受け入れるかわりに第2項(過去8年間の出来高払い制での未払い賃金をこれ以上問わない)を受け入れろ、という大学側の要求は、第1項は当たり前であって第2項は交換条件にはなりえないとする組合側の考えと対立しますが、力関係から判断して受け入れざるを得ませんでした。6か月にわたる斡旋団交のすべてに参加してくれた志田委員長、また支援してくださった当組合の仲間に感謝します。 (KT)

 

1表:協定書

 

1. 大学は、平成10年9月18日、19日の休講は大学の都合によるものとし、各日に授業予定があった非常勤講師に対する賃金を平成11年8月20日に支払う。

2. 組合は、平成3年から10年までの8年間における非常勤講師に対する未払い賃金は、存在しないことを認める。

3. 大学は、平成11年度において、試験期間中に試験を行なうことが想定されていない科目(実験など)について、試験期間中に出勤してのレポート等の採点による代替を1回分の授業とみなし、賃金を支払う。

4. 大学は、非常勤講師の待遇改善に努める。

 

2表:補講と試験を除いた平成10年度の実際の講義回数

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日

前期    14      13      12      14      13      13

後期    13      13      12      14      14      12

       27      26      24      28      27      25

 

休講の回数と理由

月曜日:3:ゴールデンウィーク、大学祭、勤労感謝の日

火曜日:2:こどもの日、文化の日

水曜日:4:創立記念日、みどりの日、秋分の日、大学祭

木曜日:0:

金曜日:2:体育祭、建物工事

土曜日:4:体育祭、建物工事、体育の日、大学祭準備

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奨励研究(B)申請用紙の頒布が始まっています!

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 今年も奨励研究(B)申請用紙頒布が始まっています。申請を希望する方は切手430円分を添えて下記頒布会まで申請用紙を請求して下さい。

 

* 申請書の提出期間は平成12年1月26〜28日(厳守)です。

* また、日本学術振興会のホ−ムペ−ジ http://www.jsps.go.jp/ をも参照して下さい。

101-0061 千代田区三崎町2-7-6 浅見ビル1F

科学研究費補助金計画調書用紙頒布会(電話03-3263-9092〜3)

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連載<キャンパス・セクシュアル・ハラスメント −その2−>

 

キャンパス・セクシュアル・ハラスメント全国ネットワーク

 

5回全国集会開催

 

浅野 富美枝

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 去る1999年7月17日(土)13:30から標記集会が東大・本郷キャンパスにおいて開催された。参加者は221名で、当組合からは報告者他3名が参加した。集会は田中かず子氏(ICU)の総合司会で下記内容で進められた。

 

[第1部]

ガイドラインの作成状況と全国ネットの活動報告:渡辺和子氏(京都産業大)

ガイドラインの検証:牟田和恵(甲南女子大)

明治学院大学のケース:合場敬子(明治学院大)

 

[第2部]

東大の動き:上野千鶴子(東大)

院生の状況:辻智子(お茶大院)

組合の取り組み:小柳穂澄(早大職組)

非常勤講師組合から:浅野富美枝(首都圏大学非常勤講師組合)

 

 以下、私の報告の要旨を紹介し、他は後に適宜紹介することにする。なお、当日時間の関係で報告を省略した部分も、本稿では追加した。

*      *      *

 非常勤講師と呼ばれる教員は全国に約10万人いる。非常勤講師は国立よりは私立、4年制大学よりは短大、理数系の学部よりは人文系の学部に多いが、機械的に平均すると、大学にいる教員の約半数が非常勤講師と言える。そして全国で開講されている授業の約3割がこの非常勤講師によって担われている。このように非常勤講師を抜きにして大学教育は成り立たないと言えるほど、非常勤講師は高等教育のなかで大きな役割を担っている。にもかかわらず、大学改革、カリキュラム改革をはじめ、大学の意思決定システムに非常勤講師は参画することができないばかりか、多くの場合意思決定に際して非常勤講師の存在が考慮されることさえない。また、直接当人に関係すること以外は、決定が非常勤講師に周知徹底されることもほとんどない。いま全国の大学で作られているキャンパス・セクシュアル・ハラスメント(以下セクハラと略す)防止のためのガイドラインはどうだろうか?非常勤講師はセクハラの被害者にもなれば加害者にもなりうる。非常勤講師を抜きにしてセクハラはなくならない。当組合は結成してまだ3年、雇用問題や待遇改善を中心に闘っており、ジェンダー問題についてはまだこれからという段階で、セクハラにかんする調査もまだしてない。しかし、雇い止めをめぐる問題や組合員から寄せられた声のなかには、セクハラにかかわる問題もある。以下、そうしたケースから気がついたことを話したい。

 

非常勤講師は、学生、職員とならぶ第三のキャンパス・セクハラ被害者群

 

 まず第一に、非常勤講師は学生、職員とならぶ第三のキャンパス・セクハラ被害者群を形成しているということを申し上げたい。非常勤講師は通常1年契約で、しかも多くの場合、専任教員の個人的な紹介という形で雇われる。こうした不明朗で前近代的な雇用システムは、専任教員と非常勤講師のあいだに上下関係、権力的な関係をうみだす。非常勤講師は、非常勤の口を紹介してもらったり契約を更新してもらうために、専任教員に従属的な態度をとらざるをえない。こうした関係は容易にセクハラをうみだす。女性組合員から、友人の話として、専任の教員から専任の口あるいは非常勤の口を紹介するという口実で呼び出され、性的な関係を迫られたという話をいくつか聞いている。非常勤講師に対するセクハラは、その大学で働き続けるためには専任の機嫌をそこねないようにしなければならないし、またやんわりと拒否したとしても、体よく契約を打ち切られればそれまでで、職員や学生に対するセクハラ以上に表沙汰になりにくい状況にある。各大学でアンケート調査をする場合には、ぜひとも非常勤講師も対象にしていただきたい。同時に、学内の3大弱者の一人である非常勤講師に対するセクハラ防止を考慮したガイドラインの作成と、作成過程への非常勤講師のなんらかの形での参画が必要なのではないか。それとならんで、非常勤に対するセクハラをなくすには、非常勤を雇い入れる公正なシステムを作ることがなによりも必要だと思う。以上から、次の4点を提案したい。

 

         a.非常勤講師を含めたアンケート調査

         b.非常勤講師を考慮したガイドラインの作成

         c.非常勤講師の参画によるガイドラインの作成

         d.雇用システムの改善

 

非常勤講師を無視してキャンパス・セクハラはなくならない

 

 次に、非常勤講師は専任に次ぐセクハラの加害者群を形成しており、非常勤講師を無視していてはセクハラはなくせない、ということを申し上げたい。非常勤講師は、専任教員との関係では従属的な弱い立場にあるが、学生との関係では、成績を付けたり単位をだしたりする権力的な強い立場にある。最近では、清泉女子大(1999年5月22日づけ朝日新聞夕刊)や法政大学(1999年7月2日づけ法政大学新聞)で、男性非常勤講師が学生に対してセクハラをはたらき、解雇処分にあったという報道があったし、組合が扱った雇い止め事件でもセクハラを理由としたものが数件あった。学生に対して権力的な立場に立つ点では非常勤講師も専任の教師と同じである。キャンパスからセクハラをなくすためには、セクハラ防止啓発の研修や新任教員へのガイダンス、ガイドラインその他の文書の配布など、非常勤講師にも周知徹底することなどが必要である。このこととの関連で注目すべきことは、なんらかの形でセクハラに関わった場合、非常勤講師はただちに解雇につながるということである。清泉女子大では加害者の非常勤講師だけでなく、被害者の学生の味方をした女性非常勤講師も解雇された。また、組合が扱ったケースでは事実無根のセクハラを口実とした雇い止め事件もあった。解雇というのは加害者に責任を取らせ、セクハラをなくしていくための方策として大変重要な措置ではあるが、加害者が非常勤講師のばあいには、いったいいつから日本の大学はこんなにセクハラに敏感になったのかと思うほど、たやすく雇い止め、つまり解雇される。これが専任教員だったらどうだろうか? 非常勤講師に対する安易な解雇は、専任教師によるセクハラ容認と裏腹の関係にあり、セクハラ防止に対する真摯な態度とはとうてい言えない。解雇されても前科のある教員が別の大学に雇われて、そこでまたセクハラを起こすことも十分考えられる。被害者救済とならんで、有効な再発防止となるような加害者に対する事後措置が必要ではないか。

 

         a.セクハラ防止措置の周知徹底、研修への参加

         b.事件に対する十分な調査

         c.被害者ならびに加害者への十分な事後措置

         d.再発防止のための十分な措置

 

セクハラ体質がうむ女性非常勤講師

 

 最後に、院生時代に受けたセクハラの被害の結果、専任になれずにいる女性も、今日の女性非常勤講師のなかにはいるということをお話ししたい。先日、遠く関西の女性と電話で話をした。20年前、院生のときに指導教官にセクハラを受けた。はじめはがまんしていたが、あるときついに明確な拒絶を言葉と態度で示した。「わたしには決まった人がいるから、そのような言動には応じられない」と。その後なにもなかったが、就職する段階になると、その指導教官は私にだけは推薦状を書いてくれなかった。当時その分野では指導教官の推薦状は必要不可欠の書類であって、推薦状なしには就職できなかった。その研究室は就職率100%で有名だったので、推薦状さえ貰えれば就職できたと思うのだが、今日にいたるまで一度も書いてくれたことがない。20年たった今も非常勤講師のままであるのは、このことと無関係ではない。しかもその教官は非常勤講師の口の斡旋さえしてくれなかった。女性非常勤講師の集いを行なうと、そこででてくるのは決まって院生時代に受けたセクハラの話である。このように女性非常勤講師にとってのセクハラ問題には二種類ある。一つは非常勤であるがゆえに被るセクハラと、院生時代にうけたセクハラの結果としての非常勤という二つである。関西のケースほどひどくはないが、似たようなケースはいくつも聞いたことがある。セクハラは性差別の一形態であり、性差別を放置しておいてセクハラはなくならない。セクハラにはセクハラをうみだすグレーゾーンがあると言われている。女性を差別する体質や性別役割分業が横行する職場では、このグレーゾーンがいっぱいある。「妊娠したら雇い止めにされた」「男性だって就職難なのに、夫に養われている女性が専任になりたいなどというのはぜいたくだ」「女性は就職しなくてもいいから、自由に研究テーマが選べていい」「女性の院生でよかった、就職の世話をしなくてすむ」「同じテーマの男性と結婚すれば、その男性から非常勤の口でも紹介してもらえるよ」。逆に「男性の院生には、なんとしても就職口をみつけてやらなければかわいそうだ」などなど、性差別の例はいくらでもあげることができる。これらはセクハラのグレーゾーン=ジェンダー・ハラスメントである。この結果、高等教育機関の底辺に女性研究者が偏在することになる。現在、専任教員の女性比率は約1割だが、非常勤講師の女性比率は2割、大学院生の女性比率がほぼ2割であるから、非常勤講師と大学院生はほぼ同じくらい女性がいるということになる。ちなみにわたしたちの組合の女性比率は約4割である。非常勤講師に女性が多いということ、そして組合員になる女性が多いということは、日本の高等教育のなかのジェンダー問題を典型的に表現している。キャンパスからセクハラをなくすには、こうした女性差別をなくしていく包括的な取り組みを強めていくことが重要である。

 

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                           ◆編集後記◆

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■予告通り今号より編集長が変わりました。今後ともよろしくお願いします。

■今年も奨励研究(B)の申請書類の頒布が始まりました。来年度は今年度以上に組合員の採択者が増えることが望まれます。それにしても「大学などで行われないような教育的・社会的意義を有する研究」とは一体どのような研究なのか。そもそも申請書類は何をどう書いてよいやら。昨年申請書類を請求してはた、と困ってしまいました。このようなことが他の人にはないように、今年度めでたく課題が採択された方は、具体的な書き方を教えていただけるとありがたいのですが。

 

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                           クリップ・ボ−ド

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(1)『控室』原稿を募集します!

★組合員か否かを問わず随時受けつけ。掲載段階で匿名可(連絡先は必ずご通知のこと):プライバシ−厳守;電子メ−ルによる原稿を歓迎。短い記事・通信の類は送信者に断りなく『控室』読者の声などとして匿名で掲載することがあります。原稿送信先(編集担当者宛)は次の通り。

E-Mail】mkclara@pastel.ocn.ne.jp

FAX】042-593-0302

 

(2)公募情報などの収集・配布

★大学教員等の公募情報を電子メ−ルで送信中。受信希望者は下記まで。但し、当方の都合による遅れ・中断・中止ありB公募の情報/情報源情報を上記連絡先にお寄せいただければ幸いです。

E-Mail】s-kkch@pa2.so-net.ne.jp

★公募情報も含め当組合に関する現在のURL:

quoniam.social.tsukuba.ac.jp/yamane/union.shtml

ないしは<組合本部> http://www.os.rim.or.jp/~town/

 

(3)組合関連現勢・雑報

★当組合の現勢は140名。組合加入用紙を配ってドンドン仲間を増やしましょう。経費節約と宣伝範囲拡大のため、手渡しや非常勤講師用メ−ルボックスへの投函などで『控室』を配布できる方は、斉藤FAX0428-20-7041まで、送付先(配布者の住所・氏名など)、配布する大学(学部)・学校名,配布部数をお知らせ下さい。運動の輪を広げるため可能な方は,所属学会・研究会等々で宣伝や支援要請など試みて下さい。

★「就職希望調査票」未提出者は担当者まで!

★『大学教師はパ−トでいいのか 非常勤講師は訴える』(定価1200円)普及に1冊でもご協力いただける方はまで!

 

(4)組合員の声

【1】首になった話/『控室』編集者様/前にお知らせしたように、私は10月25日に校長から来た手紙(これには校長の職印がなくて、ただのワープロ・プリント)で、来年3月までで雇い止めとありました。今日、他の年寄り非常勤講師と初めてあって話したのですが、68才以上の人は全部今回首のようです。専任教員がみんなに一遍に止められたら困ると言ったところ、校長は、あんたらは心配無用と言ったとか。ただ、24日付の朝日新聞求人欄にXX校の各科で非常勤講師募集の広告がでていまして、経営側は、これで人が集まると考えたのでしょう。教育を考えること、この程度の奴らなのです。校長も元教員・元研究者でなく、理化研かどこかの事務屋だったそうですから。自分らに通告する前に、新聞社に求人を出したと被馘首組は怒っていました。この学校は、事務員に○○が多いらしいので、色々やり口があくどいようです。公募の形を取って、○○の線で非常勤講師を押さえる可能性があります。彼らが就職口を斡旋するという話は良く聞きますから。しかし、一応、求人広告を見ると、62歳以下となっているから、現職の国立大教員はまず来ないし、停年組とすれば、国立大とすれば東大定年者、そして、企業関係者をターゲットにしていると思います。大学卒経験10年以上ともあるから、院生ではまず対象になりません。専門学校だからこれでいいのでしょうね。それでも、朝日新聞の情報は『控室』にも転載してやる方がいいのではないかと思いました。

 

(5)『控室』読者の声

【1】非常勤講師組合御中/早稲田大学のMです。ご無沙汰しています。『控室』第28号の「組合員の声」のところに、民間の研究費のお話が出ていましたが、早稲田のHPである程度まとめて紹介しています。学外にも公開していると思いますので、ご覧ください。では、また。

http://www.wasede.ac.jp/gakugai

http://www.waseda.ac.jp/siensitu/josei

 

(6)最近の組合運動関連出版物等

■井本三夫「大学問題と女性研究者」、第10回女性研究者問題全国シンポジウム実行委員会編集・発行『第10回女性研究者問題全国シンポジウム報告集』1999年10月20日発行(500円・送料別)25-31頁所収(問い合わせ先:日本科学者会議女性研究者問題委員会FAX03-3813-2363)

■緊急出版 JSAブックレット(10月10日発行) 国立大学がなくなるって、本当?! --独立行政法人化Q&A-- 日本科学者会議編 水曜社刊/本体価格700円注文先は出版社以外に、日本科学者会議東京支部事務局 文京区湯島1-9-15茶州ビル9階TEL/FAX 03-3811-8281(送料は発注者負担)

★文献など何かご存知の方は編集担当者までお知らせ下さい。

 

(7)当組合員の最近の学術出版物等

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エンゲルス著、秋間実・渋谷一夫訳

                『【新メガ版】自然の弁証法』

                        新日本出版社A5判上製2分冊・本体9000円

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 唯物論的で弁証法的な自然観の確立に堅固な墓礎を与え、今日の理論的自然科学の発展にも貴重な示唆をもたらしている論考の新訳。10年間に書きためた長短197本の草稿を、時代背景とエンゲルス自身の認識の発展がわかるように初めて執筆順に編集。別巻として、新メガ編者による「成立と伝承」および1000項目を超える詳細な注解と文献・人名・事項索引を付す。

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★掲載希望の組合員の方は『控室』編集担当者までお知らせ下さい。

 

(8)本部集会・大会

 都区一般本部の第14回定期大会が10月24日に開催されました。7月25日の組織集会、10月9日のパ−トネット集会と、3度の集会・大会に参加してみて、他支部・分会からの相次ぐ力強い報告に勇気づけられました。当組合からは3度とも志田委員長が報告しましたが、まだまだ非常勤講師の実態は知られておらず、その待遇の悪さに会場からはどよめきやため息も。もっともっと世間に知らせる必要がありそうです。定期大会で各支部・分会からの報告後の総括で、本部小林書記長が今年のスロ−ガンは「闘ってこそ仲間が増える!」と提案。採択を目指した議案ではありませんでしたが、私自身、大変共感を覚えたスロ−ガンです。(S)

 

(9)当組合のホ−ムペ−ジ「係争中の事件」コ−ナ−

 当組合では未解決事件のうち、特に悪質な大学・学校をホ−ムペ−ジに載せ、広く世間に訴えています。現在

(1)東洋大学不当人事(解雇)事件

(2)***都合により削除***

(3)長岡リリックホ−ル不当解雇事件

(4)帝京大学不当解雇事件

(5)相模女子大学不当解雇事件

(6)筑波大学外国人教員スキルムントさん事件

(7)秀明大学不当解雇事件

の7件を掲載中。

 

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年末大型カンパのお願い

                −目標200万円に暖かいご支援を!−

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★ 鈴木さんに対する、東洋大学の事実誤認に基づくコマ数減と不当労働行為を、東京都地方労働委員会への提訴に持ち込むための財政的支援をお願いします。

 

 『控室』25号、28号に記載したとおり、東洋大学で組合員の鈴木暁さんが「教科書を使わない」などの事実無根の理由でコマ数を減らされたのに対し、当組合は団交で撤回を求めてきました。しかし東洋大学は団交を拒否する一方、来年度の鈴木さんの持ちコマをゼロにしようとしていることが、この間判明しました。これは、係争中の組合員である鈴木さんに対する不当労働行為であり、絶対に許すことは出来ません。当組合は鈴木さんのこの事態を、非常勤講師に対する全く一方的な首切りやコマ数減の問題として、重点的に闘うことを執行委員会で決定しました。

 

★地労委への提訴には、「弁護士費用」がかかります。

 

 当組合は直ちに、この不当労働行為を東京都地方労働委員会の提訴に持ち込みますが、提訴はこれまでの斡旋と違って弁護士の協力が必要で弁護士費用がかかります。その費用がいくらになるかは現時点で明らかではありませんが、当面、200万円を目標にカンパを募ることにします。

 

★多くの大学で団交がもたれるようになり、交通費を初めとする執行委員会の活動費が膨れ上がっています。

 

 また、ご承知のように、当組合は今年度初めて、首都圏の大規模私大をはじめとする多くの大学で春闘を闘いました。東京、神奈川、千葉、埼玉、新潟にまたがって持たれた団交は数十回に及んでいます。そのため交通費の出費がかさみ、組合財政はきわめて逼迫しています。このままでは、年内あと2回の『控室』の発行と郵送すら危ぶまれる状態です。

 これまでも当組合財政は、数百にのぼる非常勤講師と専任教員の方々の暖かいご支援に大きく依拠してきました。それは何よりも非常勤講師給があまりに劣悪で、高額の組合費を集めることが出来ないからです。現状では、鈴木さんの問題を提訴に持ち込む財政的な余裕はありません。

 

★非常勤講師の不当な首切り、組合への不当労働行為の典型としての鈴木さんの問題に、組合として全力で取り組む財政的基盤をつくるために、皆さんがこの年末大型カンパにご協力くださいますよう心から訴えます。

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『控室』第29号付録

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<転載>出典:しんぶん「赤旗」1999年9月24日付、くらし・家庭欄

                  身分保障なく生活も大変   大学非常勤講師は訴える

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 大学の教師ノは専任と非常勤という二種類があって、その待遇には天と地ほどの差があります。非常勤講師は、いわばパートの大学教師。同じ資格を持ち、同じように研究や授業をおこなっているにもかかわらず、大学側から使い捨ての扱いを受けることもしばしばです。学生にとって、大学の教師は人生の大事な時期に出会うかけがえのない存在。「豊かな大学教育をつくっていくためには、非常勤講師問題は避けて通れない」と訴える非常勤講師にききました。

 

賃金、専任の6分の1

一時金や退職金 社会保険もナイナイづくし

 

 志田昇さん(49)は、東京都立短期大学など2つの大学で社会科学系の非常勤講師を務めています。首都圏大学非常勤講師組合の委員長としても活動。「首都圏の、ある私立大学の人件費から、専任と非常勤の賃金格差をみてみましょう」と、資料を示します。

 ここでは教員の約半数が非常勤で、授業全体の四割程度を担っています。ところが、総人件費34億円のうち、専任には21億円が費やされる一方、非常勤には8,400万円。

 「非常勤の賃金は時給制で、授業1コマ(90分)あたり月額25,000円が相場。これは専任の約6分の1という低さです。その上、社会保険なし、一時金なし、産休・育林なし、研究費なし、退職金なしですから、非常勤は専任のおよそ20分の1のコストで雇えるんです。現在、首都圏の私立大学では、非常勤の担当する授業は全体の約半数。非常勤は大学の経営上の都合だけで利用され増え続けてきたといえます」

 

"1年契約"が10年も20年も

 

 非常勤講師は、不安定な雇用形態にも苦しめられています。専任は、ほぼ終身雇用ですが、非常勤は1年契約。「1年ごとの契約を更新し続けて、非常勤講師のまま10年も20年も同じ大学で教えている人もいます。いつ雇い止め(契約が更新されず、事実上解雇されること)になるかもしれず、来年の生活の見通しさえたたない場合も少なくありません」(志田さん)

 3つの大学でフランス語を教える非常勤講師の鈴木暁さん(37)は、6年間勤めた東洋大学から、今年の1月になって突然、1999年度の授業のコマ数を5から2へ減らすことを通告されました。

 「年間約100万円の収入減です。1月では、もう他の大学を探すこともできません。大学側はコマ数減の理由に『教科書を使わない。答え合わせをしない。添削をしない』というまったくのウソを並べてきました」

 

最高学府での非民主的実態

 

 鈴木さんは、首都圏大学非常勤講師組合の組合員として団体交渉を続けています。学生に教えることがなによりの喜びという鈴木さん。その授業については「教科書以外にもプリントを多く使用しているのが良い」という同僚の証言もあり、大学側の不当性が明らかになっています。

 これは個人の問題ではないと、鈴木さんは強調します。「民主主義と平等を教えているはずの最高学府で、こんな差別と人権侵害がおこなわれていることに憤りを感じます。学生の1人が『曲がった権力に屈しないでがんばってください』と応援してくれました。大学側が補償するまでたたかっていきます」

 宮崎康子さん(54)は、慶応大学など3つの大学でフランス語を教えて20年以上になります。

 「30代のころは15コマ教えていました。現在は9コマに減らしています。体力がついていかないんです。年をとるにしたがって収入が減っていく・・・。体をこわしたら『ハイさようなら』。退職金もありません。私は独りですし、老後のことを考えると本当におそろしいものがあります」

 

閉鎖的世界に風穴を開けて

 

 宮崎さんは翻訳の仕事を増やして、将来を考えています。

 「学生が授業以上のつながりを求めてきても、研究室も与えられず、いくつもの大学を飛び回っている非常勤には、それにこたえるゆとりもありません」

 非常勤講師は、専任のコネによって職が得られることや、いずれ専任になれるのではという望みから、抗議の声を上げるのも難しい立場。宮崎さんは、同僚に非常勤講師組合への加入を呼びかけています。

 「私たちはあまりにも長い間、黙っていすぎたんです。組合に1人でも多くの非常勤講師が集うことが必要です。私たちの実態をどんどん外に知らせて、閉鎖的な大学という世界に風穴を開けられればと思っています」

 

―――『控室』編集者から―――

 

 後日、しんぶん「赤旗」の担当記者の方より「先日の記事は『大学の先生が、あんな無権利状態に置かれているなんてびっくりした。ひどすぎる』といった反響もいくつか寄せられ、少しでも実態を訴えられたのでは、と思っています」という連絡をいただきました。(S)

 

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<転載>出典:日本共産党中央委員会編集・発行『グラフこんにちは』1999年11月7日号18-19頁

岡山のくらしき作陽大学

                  立ち上がったピアノの非常勤講師20人

         ひどい労働条件の改善へ音楽ユニオンに加入、地労委に訴えも

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 大学で教える「講師」というと、専門知識を駆使して一見華やかに見えますが、その実態は、労働条件は家庭教師の学生アルバイトなみ。こんな現状を改善しようと、ピアノの講師20人が立ち上がりました。

 労働組合に団結し、不当労働行為を地方労働委員会に訴えてがんばっているのは、岡山県倉敷(くらしき)市にある「くらしき作陽大学」の先生たちです。「事実上の解雇通告を送り付けたうえ、話し合いにも応じようとしない。劣悪な労働条件への不安と、不誠実な大学側の態度への怒りが先生方を結束させたんだと思います」。同大学で15年以上ピアノの非常勤講師を勤める長山いづみさん(45)=大阪府摂津市=はいいます。

 ことの発端は、1996年2月、突然、「非常勤講師教員構成は・・・近圏にお住まいの先生にお願いする事に」なった、という「通告」がピアノ非常勤講師31人全員に郵送されてきたこと。大阪在住の長山さんはじめ遠くは博多や東京から通っていた非常勤講師にとっては、解雇通告にひとしいものでした。

 先生たちは、音楽関係者でつくる個人加盟の労働組合・日本音楽家ユニオンに加入し、当初、同ユニオンの存在すら認めようとしない大学側にたいして、「通告」の撤回と待遇改善を求めて粘り強く文渉。その結果、翌年11月に「正当な理由なく契約の更新を拒否しない」などで合意。覚書も交換しました。

 それからまもなく、「不利益扱いはしない」との覚書に反して、勤続15年以上の講師2人が、授業数を大幅カットされました。先生たちはこの4月、不当労働行為の救済を岡山地労委に申し立てました。

 長山さんは、「私たちの賃金は1分50円(交渉の結果、昨年から60円に)の出来高制で、劣悪といわれる非常勤講師の平均的な賃金のほぼ半分しかありません。それに、教育の場にとって正常な人間関係は不可欠。学内に誠実に話し合える状況をつくりたい」といいます。

 首都圏の非常勤講師でつくる首都圏大学非常勤講師組合の志田昇委員長(49)は、非常勤講師の実態について、(1)1年契約で何10年勤務しても待遇に反映しない(2)通常90分の授業を月4、5回こなして平均25,000円程度。専任教師の6分の1以下の低賃金(3)産休、育児休暇、有給休暇、ボーナス、社会保障、退職金なし(4)研究や教育上の必要経費は自分もち−−などを指摘します。

 「劣悪な条件で黙々と働く非常勤講師は、大学側に好都合でしょう。実際、この20年間で非常勤講師は2倍に増えています。それでは質の高い大学教育を保障することはできません。1つの大学で20人もの非常勤講師が労働組合に団結した例は他にありません」と注目します。

 勤続19年の小島信子さん(48)=津山市=は、15年間教鞭(きょうべん)をとった系列高校の授業を一方的に外されて収入が半減。生活のために愛用のピアノを手放し、各種保険も解約しました。「生徒と仲良くやってきたので、授業を外された時は本当に驚きました。音楽教育は人間同士の心のふれあいが大事。私たちには音楽に携わる者として理念と自負があります。声をあげてよかった」。

 

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<転載>出典:連合通信・隔日版(1999年7月22日)No.6879

                  非常勤講師の労組が急成長

         3年半で4人が140人に 大学の雇い止めなども解決

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 大学の非常勤講師でつくる都区関連一般労組・大学非常勤講師分会が、組合員を飛躍的に増やしている。4人の組合員でスタ−トし、不当解雇撤回や雇い止めの解決など次つぎと成果をあげるなかで、結成から3年半あまりで約140人に成長した。今年の春闘では賃上げや待遇改善を求める統一要求書もつくり、いずれは「非常勤講師の賃金相場をつくっていきたい」と意欲に燃えている。

 都区一般は、東京都関連ではたらく臨時職員などの個人加盟組合。大学非常勤講師分会は、都立に限らず、首都圏を中心に国公私立の大学非常勤講師が主に個人で加盟している。

 組合員のほとんどは、本務校を持たない。1年の雇用契約をくり返し、賃金は担当する講義の数に応じて決まる。ボ−ナスもないところがほとんどだ。研究室を持つ専任教員と違い、研究費も自分持ち。多くの非常勤講師は塾の講師などアルバイトをしながら生活を支えている。

 1週間に6コマの講義を担当している場合、専任教員なら年収900万円になるが、非常勤講師は150万円程度。こうした「あまりにひどい格差」をなんとかしたいと、現分会長の志田昇さんら4人は1996年1月末に分会を結成した。

 これまでに解決した解雇事件は17件。雇用継続ができなくても補償金を勝ち取るなど確実に成果をあげている。こうした評判を知って、加入者は増える一方だ。志田委員長は「非常勤講師は立場が弱いので組合に入るのはまずいのでは、と思いがちだが、逆に組合に入ることで雇用が守られている」と話す。また「守ってくれる組合だということを示せば加入してくる」とも強調する。

 この間のたたかいで、16年ぶりに賃上げを実現させたり、専任教員を上回る賃上げを勝ち取るなど成果を上げている。法政大学は今春闘で、最低ランクについて1コマ1,200円アップさせた。講師料は1コマで月25,000円前後が相場だが、2万円に満たない大学もある。分会は1コマ3万円以上をめざし、今春闘では初めて「春闘統一要求」をつくり約10大学で提出した。志田委員長は「来年は春闘交渉する大学をもって増やし、いずれは賃金の相場づくりをしていきスい」と意欲満々だ。

 

組合員1,000人をめざす

 

 非常勤講師は身分が不安定なため、組合員も職場をたびたび移るが、仲間を増やすにはそれが好都合だという。分会の組合員は、約百大学に広がっている。

 「有期雇用の労働者でも組合をつくれるということを示したい」と志田委員長。秋には文部省に対し、パ−ト労働法に基づく大学への指導や、非常勤講師の実態調査などを申し入れる予定だ。当面の目標は組合員を1,000人に増やすことである。

 

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<転載>出典:阪神圏大学非常勤講師労働組合 ニュ−ス第2号

                  正規教員のみなさんに訴えます

                                    伊田広行(大阪経済大学専任教員)

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 私は専任教員ですが、この問題を考えていきたいと思っています。非常勤教員問題も含めて教育改革について議論していきたいと考え、以下の提起をしたいと思います。非常勤教員は、能力が低いと見下していませんか。どれくらい低賃金か知っていますか。例)週16コマで、年収約480万円です!週10コマで、年収約300万円です!週5コマで、年収約150万円です!一方、正規教員は、週5、6コマ程度で年収900万1000万円!(もちろん大雑把な平均)「教授会、入試業務、各種委員、その他」がありますが、それが750万円の値打ちでしょうか?

 仕事の評価は、「知識・技能」「責任」「精神的肉体的負荷」「労働環境」の4側面かあら評価できます。正規教員は、「責任」「精神的負荷」項目である程度、非常勤教員よりも、重い仕事をしているとみることができますが、それを考慮しても、150万円:1000万円の格差はあまりにも大きすぎます。私たちは、専任教員自身の中にある「専任と非常勤教員のダブルスタンダ−ド」の意識にいつまでも鈍感で合ってはならないと思います。非常勤教員は、教員数で言うと、大学教員の約半数を占め、コマ数でみても約3分の1を担っています。非常勤教員への高い依存率は、経済的にはメリットがありますが、教員の人権(労働環境)、学生にとっての教育環境の点からみて問題です。

 本務校のある専任教員が他の学部や他大学で非常勤をする場合と、「本務校のない非常勤講師」とは区別しなければなりません。「本務校のない非常勤講師」は、全国に約2万人もいます。長期的な展望を持って、教育と研究に責任をもつ良質な教員をつくるべきです。

 非常勤教員にも、誇りと余裕を持って、研究・教育に携われる条件の整備が必要です。

 「民主主義や公平や人権や差別廃止や環境」というなら、自分たちの職場の足元から、公平で民主的な職場にしていく必要があるのではないでしょうか。学生にどうして偉そうに、民主主義など訴えられましょうか。

 平等化の要求はいっぱいありますが、例えば

 

===賃金アップ(格差縮小)===

 賃金体系を公表すること。非常勤教員の賃金をせめて週5コマ担当で年収300万円程度にすること(これが過大な、空想的な、無理な要求でしょうか)。財源はあります。もし財源がないというなら、正規教員と非常勤教員の賃金総額の配分比率を変えるべきです。つまり、正規教員は、非常勤の賃金アップ分の資金原資の拡大を要求するか、自分たちの賃金配分比率の低下を受け入れるべきです。

 

===雇用の安定===

 一方的解雇、一方的コマ数削減の制限。次年度の連絡は11月末までに行うこと。

 

===正規教員数を増やすこと===

 新規採用の歳、応募機会を保証すること。

 従来から非常勤として教育実績を重ねてきたことを評価すること

 

===女性教員の積極的採用を意識すること===

 (希望者には旧姓使用を認めること)

 

===労働・研究条件改善===

 研究費、出張費、退職金、ボ−ナス等の支給。「紀要」等への投稿保証(正規教員と同条件にする)。研究場所、メ−ルボックス、図書館利用の保証。交通費の完全支給/健康診断への参加/私学共済への参加。身分証明書の発行/奨学金の返還を免除すること。

 

===大学教育改革や、教育プログラム決定の議論に非常勤教員を参加させること===

 

===正規教員の方に、個人的に、非常勤教員待遇改善の運動に協力していただく===

 組合員化、賛助会員、カンパ、知的・理論的サポ−ト

 

===専任教職員組合で、非常勤教員問題を論議し、改善運動を非常勤組合とともにすすめる===

 

===非常勤教員の実態調査(人数、コマ、賃金、研究条件、生活実態など)をする===

 

 90年代に入って、全国で非常勤教員の組合は結成されつづけています。

 

95年 京滋非常勤講師組合/96年 首都圏非常勤講師労働組合/99年阪神圏非常勤講師労働組合

 

 非常勤教員の問題の解決は、まず第一に専任教員の責任です。

 あなたも、ぜひ、自分にできることを考えてみてください。

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