控室 No 4


第4号(1996年9月16日発行)
首都圏大学非常勤講師組合(都区関連一般労働組合 大学非常勤講師分会)

−委員長:斉藤吉広− Fax: 0425-79-4575
−郵便振替口座− 00140-9-157425 大学非常勤講師分会

「学習交流会」で一歩前進

厳しい状況に抗して−組合員3名増−

 さる9月4日、新宿の全国高校家庭クラブ会館で「学習交流会」がもたれました。総会以後、はじめての外部向けの催しでした。
 本組合が結成されてはや半年が経過し、またマスコミなどからの注目があったにもかかわらず、ここのところ組合員の数は頭打ちの状態。この現状を打破するきっかけとなれば、ということもあり企画されました。組織拡大が容易でないのは、大学における教育・研究職と組合活動といった結びつきがすんなりと理解されにくい特殊事情、あるいは不安定雇用という弱い立場などが理由になっているものと考えられます。しかしだからといって、多数の非常勤講師の人々の現状への不満や、それを打開したいという要求が弱いという訳ではありません。そこで、日頃発散する場もなく封じ込められ鬱積させられている不満を大いにぶつけ合い、語り合う場を設けることも私たち組合の使命であると考え、開催しました。
 夏体みもあり、しっかり準備できませんでしたが、28人の方々が参加されました。また参加者の中から3名の方が新たに組合に加入され、まずは充実した一日となりました。

第一部:前澤講演「非常勤という働き方と自我の確立」

 前半は、設立総会の時も顔を出され有益な助言をして下さった都労政事務所勤務の前澤檀さんの講演でした。題目は「非常勤という働き方と自我の確立」。前澤さんは「自我の確立」ということで、私たち非常勤講師が是非一個の人間としての誇りを持って要求を掲げ、権利を主張して欲しいといいたかったようです。実際、この後の談話のなかでも「人間として」あるいは「人間以下」ということばが飛び交い、私たちの待遇や境遇がいかに非人間的なものであるかが多くの人の口から語られました。前澤さんの講演は、労働運動のABCということでしたが、そのABCさえしっかりと学んでいなかった私たちにとっては極めて有益な内容となりました。その講演のすべてを紹介することはできませんが、いくつかのポイントと思われたところだけ以下に要約します。

経済界の雇用戦略
 最初に強調されたことは、私たちの非常勤という雇用形態は労働時間を売る「労働契約」を基本としていること、さらには就業規則あるいは労働協約などの法規則の下に成り立つものであること、つまり使用者と雇用者との勝手な約束事ではないということです。そうした雇用はしかし、1980年代からはじまった労働力流動化政策の下で大きな変化の波に洗われています。とりわけ日経連が構想し、また現実のものともなりつつある新雇用システムは、雇用グループを「長期雇用の管理職部門」、「有期雇用(5年契約)の専門職部門」、そして「パートタイマーからなる一般職部門」の三部門に分け、従来にもまして臨時、パート、嘱託、非常勤、派遣などの不安定雇用労働者の比重を増大させているのです。私たちが現在問題としている立教大学などでの「嘱託講師」制度の構想も、けっして一大学の単なる思いつきではなく、日本の雇用システムの全体の変動のなかでの出来事である訳です。
 私たちの組合も、いわばそうした流れに挑戦して生まれてきたものであるのですが、前澤さんは、この労働組合の組織と活動が憲法と労働関係法の保障の下にあることを強調されました。であれば、いわゆる労働三権などを権利として行使していくことが重要になります。すでにいくつかの大学との交渉も行われましたが、これを権利の行使として前向きに堂々と行っていくことが要求される訳ですし、そのための組合でもある訳です。

ぐるになる−団結の力−
 しかし私たち大学の講師は、とかく誇り高き一匹狼であったりして集団的な行動が苦手です。とはいえ、例えば管理職組合の出現などに見られるように、労働力流動化に対応した新しい形態の労働組織や運動が生まれてきています。
 前澤さんは繰り返し、徒党を組むこと、つまり「ぐるになる」=「グループを作る」ことが大切であるといわれました。このことは、第二部の交流会において実際に不当な雇い止めにあって闘っているいくつかのグループの方々の発言によって確証されました。 この「ぐるになる」ことの原則は、労働者個人の自覚と意欲にもとづく個人加盟方式にあります。この点では、本非常勤講師組合はまさに組合運動の正道を歩んでいる訳ですが、日本に固有なものであった企業別組合が雇用システムの変化に対応できないでいる現状では、こうした原則に労働組合が立つことが、ますます必要になってきているといえます。
 最後に前澤さんは、私たちの運動が「行革」路線、「安上がり教育」路線のなかにおかれた教育現場を改革していくものになるためにも、専任の人々と非常勤の人々との共同が大事であるということを、<人気の「セ」(専任)と実力の「パ」(パート)の団結を!>と表現して講演を締めくくられました。

第二部:「交流会」で闘う仲間と連帯し学びあう!

 第二部の交流会では、最初に現に不当解雇とたたかっているいくつかの組織の代表からの報告をいただきました。
 まず「イズミ・ミュージカルアカデミー」。作曲家いずみたく氏の創設した音楽学校ですが、いずみ氏が故人となってから外部から呼ばれた経営陣が、創設以来のメンバーであった三人の講師に対し突然の解雇通告。しかも退職金もなく、なんと20年勤続に対し20万円という「慰労金」が示されただけの不当解雇通告があり、これにたいし日本音楽家ユニオンの支援を受けて解雇反対のたたかいが継続中であることの報告がなされました。
 次に、岡山県の「作陽音楽大学」の方(横浜市在住)。ここでは、ピアノ科の非常勤講師27名に対し、来年からは近圏の人だけにお願いする、ということで、契約止めの通告がだされました。これに怒った講師たちが音楽家ユニオンに加入し文書白紙撤回と待遇改善をめざして闘いのさなかであることが、この大学の待遇のひどさ(週8コマで年収86万円)を交えて報告されました。
 そして「駒沢女子短期大学」。ここでは、保育科の非常勤講師6人に対し、やはり今年限りで再契約はないとの通告がなされ、昨年10月に組合を結成して闘っているとの報告がありました。私たちの組合が関東地区で最初の非常勤講師組合と思っていたのですが、さにあらず、先進的に闘っている方々がいたのです。
 また「旭川大学」では、ギャラガー氏が契約期間満了ということで、さしたる理由もなしに解雇され、「ギャラガー先生を教壇にもどす会」が組織され、闘いを継続していることの報告が、本組合の分会長からありました。(→別紙資料参照)

「人権無視」「泣き寝入り」は限界!−韓国では数千人の非常勤講師組合−

 どのケースを見ても、非常勤講師の不安定な身分とだけ言い切れない問題、むしろ公然たる人権無視が最高学府などでまかり通っているということを示しており、唖然として開いた口がふさがらないというのが実感でした。交流会で発言された人々の口に上る信じられないような話の数々は、ここに書き切れませんが、今後少しずつこの『控室』で紹介していきたいと思います。
 はっきりしていることは、ここでの事例が氷山の一角であることです。似たような例は全国津々浦々にあるものと思われます。多くの人は泣き寝入りを強いられているため表にでないだけのことでしょう。実際私たちのささやかな活動のなかでも、これだけの報告があがってくるのですから。韓国では、民主化の波に乗って数千人規模の非常勤講師組合ができ活発に活動中(分会長の報告、→別紙英文資料参照)ということですから、本組合の今後の活動がいかに大切であるかを改めて思い知らされました。      (T. I.)


 以下に9月4日の学習交流会に寄せられた三つの連帯の文書、「学校法人駒沢学園組合の紹介」(代表が参加し発言)、音楽ユニオン関東地本の「非常勤講師に関する事件概要について」(代表が参加し発言)、ギャラガー先生を教壇に戻す会(北海道旭川)からの「連帯アピール」を紹介します。

学校法人駒沢学園組合の紹介

塚原 晴美

 私達「全労協全国一般東京労働組合駒沢学園分会」は、駒沢女子短期大学保育科において音楽の授業を担当している非常勤講師で結成された組合です。
 組合結成に至りましたのは、昨年度平成7年9月に保育学科主任(音楽担当)より、カリキュラム改訂により、現非常勤6人全員を平成7年限りとし、8年度以降は全く別の新しい4名の非常勤を採用するという旨の申し出を受けた為でした。6年度中に、8年度には人員整理が行なわれそうな空気がありましたが、春休みに入ると同教授は一人一人の自宅に電話をかけ個人的経済事情を聞き、その結果「誰を退職とするのも忍び難いので全員平等に辞めて頂く。」という理不尽な結論を出されたのです。長年(10年から25年)にわたり、常に専任の先生方との協カ体制のもとで講座を担当してまいりました私共にとっては思いもかけぬ突然の事であり、納得のいく説明をうかがうこともできず、さりとて非常勤という弱い立場の私達にはどうして良いかもわかりませんでした。東京労働委員会に相談致しましたところ、八王子労政事務所を通じて上記の労働組合を紹介され分会結成に至った次第です。
 組合に拒否反応を示す体質の学園は私達の組合結成に慌て、「学園としては、いまだ何も決定していない。また、短大改革のためのカリキュラム検討委員会の答申もいまだ出ていない白紙の状態である。」と回答し、今年度は全員残り授業をしております。只残念なことに昨年夏から病気療養中の講師が今年2月に亡くなり現在5名になってしまいました。
 この十ケ月間に7回の団体交渉と8回にわたる東京都の労働委員会の三者斡旋を重ね、現在確認書を結ぷ直前までに至っています。
 団交では、昨年度はカリキュラム・授業内容を問題の中心として交渉してきました。 9年度以降必修はl年生だけで2年生は選択とし、我々非常勤はその選択科目をのみ担当するというもので、2人は自主退職とし、3名のみ残るよう人員整理を求められました。又昨年12月には私達を辞めさせる為としか思えないような内容の「平成9年度開講選択科目担当に関する提案」なるものが示されました。その間、病気療養中の講師の給料が確保されたり、明らかなミスにより賃金が低かったものに対し、個人での申し入れでは何とも返答がなかったものが、組合結成と共にあっさり是正され、かつ差額が支払われた等、細かい点では私達の要求が通りました。又私達を辞めさせる為としか思えないカリキュラム改訂案については全面的に学園側が撤回する事になりましたが、2年間必修だったものがl年次のみとなり、結果私達のコマ数は半減することになりました。
 今年度に入り、「非常勤講師に関する雇用契約書」なるものを締結するよう求められ(今まではありませんでした)、その裏面には非常勤講師規程が掲載されていました。規程の内容はこれまで3月31日までだった雇用期間を25日とするとか、選択科目については受講者が学則による開講人数に達しない時は、4月5月分の給与のみで雇い止めとする等、私達に不安を持たせるものが数多くあり、最近は学則・契約書を中心に交渉を続けてきましたが、前期終了を前に、平成9年度以降5人中2人解雇、3人のみ雇用という確認書に調印することになりました。
 この間、全教員約三百名に4回、報告の手紙を自宅に郵送し、理解を求めつつ活勤してきました。一部の方々からは支援のお手紙やカンパを頂いております。
 今後選択科目に於ける雇用不安を取り除くと共に、私達も必修科目を持てるよう交渉しながら、組合員を増やし、駒沢学園に組合が根付く努力をしていきたいと思っています。

非常勤講師に関する事件概要について

l996年9月4日
音楽ユニオン関東地本発

 音楽大学は、一般の大学より「非常勤講師」が多い。大学によっては、8割近くが「非常勤講師」で、音大等は非常勤講師でもっている、といっても過言でない状況です。それだけに、労働条件等さまざまな問題が渦巻いています。

l、徳島文理大学の突然の解雇事件(勝利)
 音楽ユニオンと地域マスコミ労働組合などの共闘と、徳島地裁に「地位保全」の訴訟を訴え、「和解」を勝ち取った。

2、茨城県立取手松陽高等学校「音楽課」の雇いどめ事件(交渉中)
 「あたらしい文化の創造と発展に貢献する豊かなパーソナリティを育てます」とする普通科、音楽課、美術課をもつ県立高校の講師2名(都合により氏名を削除 2001.07.07)「学校経営判断との理由」でl年で雇いどめの事件。

3、イズミミュージカルアカデミー、講師3名の契約解除(解雇)事件(交渉中)
 作曲家いずみたく氏(’92/5死去)が日本のミュージカルの発展のためにつくったもの。河崎美智子、内御堂真弓、忠の仁の3名は長年アカデミーの講師として貢献をしてきたが、20余年の2名功労にたいし20万円、l名は5万の「慰労金」で契約解除(解雇)、不当解雇として「白紙撤回」求め係争中。

4、岡山県の作陽音楽大学でも非常勤講師問題が発生(相談中)
 音楽ユニオンの全国本部と関西地本で対応をすすめている。

【音楽ユニオンの団体概要】
 日本音楽家ユニオンは、1970年から始まった青楽家の個人加盟の組合が1983年に全国統一をして発足、かれこれ26年余りとなる。
 NHK、民放、レコード業界の他、オーケストラ等の労働条件等の改善に大きな成果をあげてきている。演秦家の著作隣接権の拡充とその分配等も行っている。また、生音楽の振興の事業と仕事おこしの労働大臣許可の供給事業の他、共済制度と自主公演助成も行っている。国内のナショナルセンターには所属せず、独自に国際音楽家連盟=30ケ国40 団体(アメリカ、イギリス、フランス等)の副議長組合として国際条約の制定等に役割を果している。
 クラシック、ジャズ、ポピュラー、作曲家、編曲家、昔楽講師、音楽関係者など約6, 000名で構成している。全国7地方本部。代表運営委員=崎元譲、事務局艮=松本伸二。

「ギャラガー先生を教壇にもどす会」から
連帯のアピール

1996年8月28日
事務局長 旭川大学教授 浅田 政広

 非常勤講師がいかに酷い無権利状態におかれているか、機関誌「控室」等に書いてあるとおりだと思います。知人のことですが、新年度になっても連絡がないので、大学に問い合わせてみると、先生の講義は今年度ないことになりました、との返事だったそうです。もし善意に見ることができるのならば、単に連絡を忘れただけかも知れません。しかし、恐らくそうではなく、非常動(ひと)を人間(ひと)とも思わぬ普段の考えが、こういう対応となって現れたのではないでしょうか。人権無視が平気でおこなわれているのです。勿論、その知人は憤りました。しかし、今は「いや、酷い目にあった」と我々に語り、その鬱憤を払ってすませていられるのも、彼が本務枚をもつ非常動であり、経済的ダメージが軽微なものだったからでしょう。これが本務校をもたない非常動の場合だったら、問題はもっともっと深刻だったはずです。
 本務校をもたない非常勤をしている近しい知人もいます。彼は3つの大学で非常勤をしながら、市役所関係の仕事もこなしています。53歳、独身です。この夏から年老いた両親を引き取って一緒に暮らしています。非常勤に対する扱いについて、彼は人一倍、心底から憤っています。しかし、非常勤のあまりにも弱い立場を重々知っているために、行動に移せず、涙を飲んでいるのだと思います。
 しかし皆さんは、ついに我慢しきれず立ち上がりました。その勇気と崇高な心意気に心から敬意を表します。そして,人権無視に対して闘う同じ人間として、熱い連帯のエールをおくります。(→別紙資料参照)


11月10日   フォーラム

大学非常勤講師問題を考える

 教育、文化の中にも拡がる不安定雇用の深刻な実態。いま、非常勤講師という名の「教師」は大学教育の実質を支えている。まるで、紙切れのように軽い存在。高等教育の未来は、こんなことで良いのだろうか。
 全国の大学、そして外国人教師や芸能スクール講師も参加します。広く、各界からのご参加を歓迎します。

日 時:11月10日(日)午後1時〜4時
会 場:東京労働会館(JR大塚駅徒歩5分)
参加費:1000円(会場代、資料代)
プログラム:
 第1部 ミュージカルアトラクション
 第2部 記念講演とシンポジウム
  ★講演 香川大学助教授 松尾邦之氏
  ★シンポジウム 大学、労働行政、労働組合の各界からパネリスト出席。
 第3部  交流の広場
  ★非常勤講師の皆さん、韓国の大学非常勤講師組合の代表(交渉中)や外国人講師の方々も参加予定です。
  ★不当にも雇用を打ち切られ職場復帰に向けて頑張っている方々が、全国各地から参加され訴えと報告をします。
◆終了後、食事をしながら交流しましょう!
 会場の地図など詳細は後日ご案内します。

主催:フォーラム実行委員会
協賛:日本音楽家ユニオン
   都区関連一般労働組合
後援:東京地評


クリップ・ボード

(1)「日本科学者会議東京支部」関係

 1996年5月2日、日本科学者会議東京支部に「ご協力・ご支援のお願い」を送付した。結論として、非常勤講師問題が好意的に取り上げられることになった。具体的には、今後、支部に直接、依頼事項などを送って相談すればよい、ということである。現在、「首都圏大学非常勤講師組合から訴えます!」と題する当組合の紹介を兼ねた支援要請のアピールを準備中である。
 1996年8月24〜25日、日本科学者会議・関東地区の廃棄物関係の企画に参加した際、日本科学者会議の中に、東京支部レベルないし全国レベルで、「非常勤講師問題研究会」のようなグループを作るのが良いのではないか、というアドヴァイスを受けた。この種のものが実現すれば、一定の協力関係が、恒常的かつ組織的に形成される訳だから、大変有用だと思われる。(by S. K.)

(2)非常勤講師関係の最近の出版物

(a) 玄善允「非常勤講師から見た大学の危機」『技術と人間』1996年6月号34-45頁;「大学内の「ブタ小屋」」『技術と人間』1996年7月号48-55頁。
(b) 斉藤吉広「非常勤講師の生活と意見」『IDE 現代の高等教育』1996年10月号(非常勤講師問題特集号)、民主教育協会(所収予定)。
(c) 志田昇「それでも天職に殉じる非常勤講師」『それでも教授が一番エライ』1996年 10月発行予定、ジャパンタイムズ社(所収予定)。

◆編集後記◆

 編集の苦労話を書くかわりに、1996年6月12日、「日本育英会長」宛の「奨学金返還猶予願い」に、非常勤講師に対する返還免除の検討を要請する次の文書を添付したことに触れたい。6月末に返還猶予は認められたが、添付した文書への返事はない。政府は現在、財政難などを理由に返還免除の制度を廃止する方向であるので、もし検討されても、状況はきびしいと思われる。(by S. K.)

*   *   *

日本育英会長殿      1996年6月12日
ご検討のお願い
 最近になって新聞などで報道されているように、大学の非常勤講師は、大学教育の相当部分を支えていますが、報酬・待遇は極めて劣悪です。単に担当授業に関する報酬が極めて低額なだけでなく、資料など授業準備に要する経費も自前を余儀なくされる場合が多くみられます。本務校を持たない非常勤講師の間には、下手に報酬アップ等を求めれば次年度の契約を失いかねないので我慢せざるを得ないとか、あるいは、カリキュラム再編が進行中なので来年度の契約をもらうためには騒ぐわけにはいかない、といった雰囲気が漂っています。当然ながら、何年間か非常勤講師として実績を積めば、専任として大学にポストを得ることができるわけでもありません。
 私の場合、博士号を取得した後、主に非常勤講師として生計を立ててきておりますので、上記のような劣悪な状況におります。ややどぎつい言い方ですが、大学など高等教育機関における教育研究者の「極貧層」の一人であると、最近では思っております。
 そこで、私のように、主に非常勤講師で生計を立てている者に対して、大学教育の相当部分を支えているが報酬・待遇は極めて劣悪であるがゆえに、返還の免除や猶予などの措置をお取りいただきたく、早急にご検討くださるよう強くお願いいたします。
            以上


ブックレット
『非常勤講師の実態』(仮題)
発行の呼びかけ

ドーンと世間に訴えよう!

 雇用契約は一年毎で継続の保証なし。社会保険・年金の類なし。一時金・研究費なし。ないないづくしで、あるのは研究・生活上の不安と劣悪な労働条件だけ。なにしろ、一コマの賃金相場は月2万5千円で、6コマこなしても年収は150万円。同じ程度働く専任講師の6分の1以下・・・。
 これが非常勤講師の実態です。そして、大学教育のほぼ半分がこうした非常勤講師によって支えられているというのが今日の日本の大学の実態です。大学の内部事情に通じている人は、この事実を<大学のジョーシキ>として受けとり、これまで一度も問題にしてきませんでした。他方、学生やその親を含め圧倒的多数のフツーの人々は、この事実をまったく知らず、「大学の先生は高収入」という<ジョーシキ>を疑おうともしません。
 この落差の意味するところに非常勤講師問題の本質が隠されています。そして同時にここに、今日の日本の大学教育、研究者・大学教育者養成システムがかかえている深刻な問題が隠されています。わたしたちは、人間としての尊厳を侵された現状の改革を求めると同時に、これらの問題の解明にもつとめる必要があります。
 そこでわたしたちは、非常勤講師問題の本質の解明をめざした本と、非常勤講師の実態を広く社会に知らせるための普及書(ブックレット)の2冊を出版する計画をたてました。まずは来春発行をめざして、非常勤講師の実態を多くの人に知ってもらうためにブックレットを作成しようと考えています。
 ブックレットに掲載する座談会で発言してくださる方、本づくりに協力してくださる方、その他なんでも協力しでくださる方などいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。

★連絡・問い合わせ先★

〒205 羽村市小作台 3−20−5
小作プラザ105 斉藤吉広方
首都圏大学非常勤講師組合
(TEL/FAX 0425−79−4575)

★注記事項★
(1)座談会発言者は、専門分野、年代などを考慮のうえ、希望者のなかから決めさせていただきます。申し込み締め切りは、1996年9月30日です。
(2)手記などの投稿は随時受けつけ、組合機関誌『控室』に掲載させていただきます。なお、寄せられた原稿の中からブックレットに採録させていただく場合もあります。
(3)いずれの場合も組合員・非組合員問わず、匿名可、プライバシー厳守いたします。


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